復讐はショコラよりも甘い

璃々丸

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地獄への道は美しく舗装されている

二十七.

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 ファウスティーノとエットレが驚いていない所を見るに、オルランドとガブリエーレが付き合っているのは親兄弟公認なんだ、とグィードは内心驚いた。
 まあ、オルランドの性格を考えるとあっちこっちに喋り歩いていそうな気はするが。
 ガブリエーレは確かに見目が麗しいから、もし恋人になることが出来れば、自慢したくて堪らないかもしれない。
 実際、彼は男とも女とも浮名を流している事は有名である。
「バルディーニ侯爵令息には図書館ではなっていますが・・・・・・」
 グィードとはになっているからか、その言葉に何となく含みがある様な気がしたのは、それを知っているグィードの考え方が穿ち過ぎているだけだろうか。
「図書館?ああ、あの中央区の」
 とエットレが捕捉する。
「はい、其処で侯爵令息にはこれを読むと良いと、色々な兵法書等を教えて頂いたりしてました」
「・・・・・・ほう、そうだったのか・・・・・・バルディーニ令息、彼の言葉に相違ありませんか?」
 エットレがグィードに向き直る。
「ええ、私もたまに図書館に行くのですが、その時に何度か若輩ながらアドバイスさせてもらいました」
 そうすると、ファウスティーノとエットレが納得した様に頷いた。男とも女とも浮名を流すガブリエーレだが、職務に対しては真面目であるのは、上司のエットレはよく知っている。
「その事をあまりべらべら喋ったつもりは無いのですが、もしかしたらうっかり喋っていたかもしれません」
 あまり貴族と個人的な付き合いがあるように吹聴するのは良く無い事だ。
 ガブリエーレとて、そんな事が分からない様な男ではない。その辺、公私はきちんと分けられる男だった。
 が、オルランドは残念ながらそうではなかった。彼自身、騎士であり貴族の端くれであるにも関わらず、自身とガブリエーレとの関係を吹聴して歩き、ガブリエーレの肩身を狭くしたのだ。
 別れたいと思われて当然だった。多分、グィードとの事が無くとも時間の問題だったのかもしれない。
 前の時間軸の時がどうだったのかが分からないから、何とも言えないが。
「ううむ、もしかせずとも原因はそれかもしれんな」
 ファウスティーノが唸りながら、難しい顔をする。うっかり漏らした言葉を、嫉妬のあまり誇大解釈して爆発させたのかもしれない。
「どちらにせよ、アレの話を聞いてみないといけない事には変わりありませんよ、父上」
「うむ、そうだな。それではバルディーニ令息殿、我々はオルランドともう一度話し合わないといけないので、これにて失礼する」
「はい、では私も帰ります」
 それからエットレが、ガブリエーレにも明日話し合いの時間を設ける事を告げ、ふたりは救護室を出て行った。
「・・・・・・さて、では私も帰ります」
「あ、では私が途中まで送り致しましょう」
 と言うガブリエーレの提案に、グィードは首を横に振った。
「いえ、申し訳無いが少しひとりで歩きたいので・・・・・・」
 グィードはそう言って辞退すると、ガブリエーレを置いて救護室を出た。
「・・・・・・」
 頬の腫れと肩の痛みはもう引いている。一応、痛み止めは貰ったがもう必要ないだろう。
 徐々に人ではなくなりつつある彼の身体は、この程度の打撲であれば数分もあれば治る様になっていた。
 とは言え、もう暫くは怪我人の振りをしていなくてはならない。
「怪我人のフリをするの、って面倒ですね」
 誰に言うともなくそう呟いた。
「まあ、仕方があるまい。暫くは安静にするのだな」
 優しくそう言ったのは、何時の間にか隣を歩いていたルシフェールだった。
 薄暗がりの廊下を歩く彼の方は淡い燐光を放ちながら、優美に歩く姿は美しかった。淡い金髪から放たれる燐光がふわりふわりと漂いながら暫くするとすう、と溶けるように消えて行く。
 服装は、人に見つかっても大丈夫なように貴族らしいジャケット等を身に着けていたが、しかし存在自体が異常であり奇跡である為、どちらにせよ、異常に目立つ事この上ないが。
 とは言え、誰も居ない廊下はきっと人払いの呪が掛けられているだろうからと、グィードは暫くはルシフェールとの散歩を楽しむ事にした。 
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