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※32.悪夢の終わり、そして
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「ん、ん。ふぅ……」
静かな部屋の中に、ギオラの吐息が響いていた。セロの下腹部に顔を埋め、勃ち上がった陰茎を一心不乱で舐る。
ギオラが頭部を揺らすたび、陰茎は硬さを増していく。
どくん、とセロの陰茎が脈打ち、熱い精液がどくどくと口内に吐き出された。ギオラが込み上げる吐き気を必死に抑えていれば、セロの手のひらがギオラの黒髪を撫でた。
「よく出来ました。やっと口だけで僕を満足させられるようになったね。ここまで時間はかかったけど、僕の精液を味わえて幸せだろ? 明日はもっと上手に舌を使えるように頑張ろう」
不愉快な猫なで声を聞きながら、ギオラはセロの精液を飲み込んだ。苦い、気持ち悪い。何度ものどを上下させるギオラを見て、セロは満足そうに目を細めた。
「頑張ったギオラにはご褒美をあげなきゃな。服を脱いで、ベッドに上がって待っててよ。キリの良いところまで仕事を終えたら、今度は下の穴に熱いのをたっぷりと注ぎ込んでやるからさぁ」
にんまりといやらしい笑みを浮かべながら、セロは指先で万年筆を回した。
ギオラがセロの元から脱出を図ったのは、今日から4日前。以降、セロの執着は一層強くなった。片時もギオラから目を離さず、昼夜問わずギオラの身体を弄ばんとする。
ここ数日のお気に入りは、事務仕事の最中にギオラに陰茎を咥えさせること。ギオラにすれば地獄のような時間だが、逆らう気は起きなかった。手足を拘束されお仕置きを受けたあの夜に、反抗心は根こそぎ奪われてしまった。
セロの今世の名をシュバルツ・オイヒストンという。地位は司祭。聖ミルギスタ王国の聖地である、聖エイムダル教会の統率者だ。
各教会の司祭には宗教儀礼の一環として、年間一定期間の聖地巡礼が求められる。国内各所に設けられた聖地や聖域を参詣し、身体に溜まる穢れを洗い落とすのだ。それは聖エイムダル教会の司祭とて例外ではなく、セロが魔王城を訪れたのは、この聖地巡礼の最中のことであったらしい。
そして今、ギオラは聖エイムダル教会の司祭館の地下室に囚われている。身も心も清らかであることが求められる司祭が、肉欲と支配欲を満たすために誘拐行為を働くなどと。
神の御許とも呼ばれる聖エイムダル教会の地下に、まさか魔王が囚われていようなどと。何たる皮肉だろう。
書類の片づけを終えたセロは、足取り軽くベッドへと歩み寄った。ベッドの真ん中にはギオラが寝そべっている。セロに命じられた通り衣服を脱ぎ、毛布に全身を包んでいる。
セロはギオラから毛布を剥ぎ取ると、その腰回りを悠々とまたいだ。キスマークの浮いた肌を満足気に眺め下ろし、内太ももを無遠慮に撫で回す。唐突な行為開始の合図だ。
鎖骨を舐められても、乳首をこね回されても、尻肉を揉みしだかれても、ギオラは文句ひとつ言わない。目を閉じ、手足の力を抜き、早急な愛撫を受け入れる。
刹那、落雷にも似た轟音が響き渡った。
ギオラとセロが同時にその音のした方を見れば、部屋のたった一つの扉は瓦礫のように崩れていた。その瓦礫山を踏み越えて室内へと立ち入る者は、右手に長剣をかかげた青年。碧い瞳には激情がごうごうと燃え盛る。
その人物の顔を認めた瞬間、2人は同時につぶやいた。
「イシュメル」
「おっと、こりゃ不味いな」
抜き身の長剣をぶら下げたイシュメルは、大股で部屋の中に進み入る。そしてベッドのかたわらに立つと、重なり合うギオラとセロを無言のまま見下ろした。
一糸まとわぬ姿のギオラ、白肌に浮いた吸い跡、手足首に残る枷の跡、ギオラに覆い被さるセロ。
憎悪、憤怒、殺意。様々な感情の入り混じる剣が振り上げられた。悪を滅ぼし、世を正せとの宿命を背負いし剣が。
「じゃあねギオラ。また来世で会おう。僕は何度生まれ変わってもお前のこと」
先の言葉を言うことはなく、セロの頭部は胴体から分断された。傷口からは鮮血がほとばしり、ギオラの胸元に腹に、雨水のように降り注ぐ。
頭を失くしたセロの身体がかしげ、人形のように崩れ落ちる様を、ギオラは顔を背けることなく見つめていた。
「遅くなってすまない」
震える声がギオラを包んだ。イシュメルに抱きしめられていることに気が付いた。
ギオラは目を閉じ、待ち望んだ人のぬくもりを感じた。
***
イシュメルはギオラの手を引き、地上へと続く階段を上った。左手には、血汚れを落としさやに収めたヴィザルの剣が握られている。
かつて勇敢な騎士の愛刀であったその剣は、魔王を討つために作られたその剣は、終に魔王の首を落とすことはなかった。聖者の首を落とし、魔王を守るために使われたのだ。そのあまりにも歪な真実を、人々はどう受け止めるのだろう。
イシュメルとギオラが大聖堂へと立ち入ったとき、そこには6人の人が並び立っていた。アリシアを筆頭にザカリ、リュイ、3人の兵士。剣の柄に手のひらをかけ、明らかな敵意を身にまとっている。
アリシアは言う。
「捕えなさい。愚かな騎士と魔王を」
――と。
静かな部屋の中に、ギオラの吐息が響いていた。セロの下腹部に顔を埋め、勃ち上がった陰茎を一心不乱で舐る。
ギオラが頭部を揺らすたび、陰茎は硬さを増していく。
どくん、とセロの陰茎が脈打ち、熱い精液がどくどくと口内に吐き出された。ギオラが込み上げる吐き気を必死に抑えていれば、セロの手のひらがギオラの黒髪を撫でた。
「よく出来ました。やっと口だけで僕を満足させられるようになったね。ここまで時間はかかったけど、僕の精液を味わえて幸せだろ? 明日はもっと上手に舌を使えるように頑張ろう」
不愉快な猫なで声を聞きながら、ギオラはセロの精液を飲み込んだ。苦い、気持ち悪い。何度ものどを上下させるギオラを見て、セロは満足そうに目を細めた。
「頑張ったギオラにはご褒美をあげなきゃな。服を脱いで、ベッドに上がって待っててよ。キリの良いところまで仕事を終えたら、今度は下の穴に熱いのをたっぷりと注ぎ込んでやるからさぁ」
にんまりといやらしい笑みを浮かべながら、セロは指先で万年筆を回した。
ギオラがセロの元から脱出を図ったのは、今日から4日前。以降、セロの執着は一層強くなった。片時もギオラから目を離さず、昼夜問わずギオラの身体を弄ばんとする。
ここ数日のお気に入りは、事務仕事の最中にギオラに陰茎を咥えさせること。ギオラにすれば地獄のような時間だが、逆らう気は起きなかった。手足を拘束されお仕置きを受けたあの夜に、反抗心は根こそぎ奪われてしまった。
セロの今世の名をシュバルツ・オイヒストンという。地位は司祭。聖ミルギスタ王国の聖地である、聖エイムダル教会の統率者だ。
各教会の司祭には宗教儀礼の一環として、年間一定期間の聖地巡礼が求められる。国内各所に設けられた聖地や聖域を参詣し、身体に溜まる穢れを洗い落とすのだ。それは聖エイムダル教会の司祭とて例外ではなく、セロが魔王城を訪れたのは、この聖地巡礼の最中のことであったらしい。
そして今、ギオラは聖エイムダル教会の司祭館の地下室に囚われている。身も心も清らかであることが求められる司祭が、肉欲と支配欲を満たすために誘拐行為を働くなどと。
神の御許とも呼ばれる聖エイムダル教会の地下に、まさか魔王が囚われていようなどと。何たる皮肉だろう。
書類の片づけを終えたセロは、足取り軽くベッドへと歩み寄った。ベッドの真ん中にはギオラが寝そべっている。セロに命じられた通り衣服を脱ぎ、毛布に全身を包んでいる。
セロはギオラから毛布を剥ぎ取ると、その腰回りを悠々とまたいだ。キスマークの浮いた肌を満足気に眺め下ろし、内太ももを無遠慮に撫で回す。唐突な行為開始の合図だ。
鎖骨を舐められても、乳首をこね回されても、尻肉を揉みしだかれても、ギオラは文句ひとつ言わない。目を閉じ、手足の力を抜き、早急な愛撫を受け入れる。
刹那、落雷にも似た轟音が響き渡った。
ギオラとセロが同時にその音のした方を見れば、部屋のたった一つの扉は瓦礫のように崩れていた。その瓦礫山を踏み越えて室内へと立ち入る者は、右手に長剣をかかげた青年。碧い瞳には激情がごうごうと燃え盛る。
その人物の顔を認めた瞬間、2人は同時につぶやいた。
「イシュメル」
「おっと、こりゃ不味いな」
抜き身の長剣をぶら下げたイシュメルは、大股で部屋の中に進み入る。そしてベッドのかたわらに立つと、重なり合うギオラとセロを無言のまま見下ろした。
一糸まとわぬ姿のギオラ、白肌に浮いた吸い跡、手足首に残る枷の跡、ギオラに覆い被さるセロ。
憎悪、憤怒、殺意。様々な感情の入り混じる剣が振り上げられた。悪を滅ぼし、世を正せとの宿命を背負いし剣が。
「じゃあねギオラ。また来世で会おう。僕は何度生まれ変わってもお前のこと」
先の言葉を言うことはなく、セロの頭部は胴体から分断された。傷口からは鮮血がほとばしり、ギオラの胸元に腹に、雨水のように降り注ぐ。
頭を失くしたセロの身体がかしげ、人形のように崩れ落ちる様を、ギオラは顔を背けることなく見つめていた。
「遅くなってすまない」
震える声がギオラを包んだ。イシュメルに抱きしめられていることに気が付いた。
ギオラは目を閉じ、待ち望んだ人のぬくもりを感じた。
***
イシュメルはギオラの手を引き、地上へと続く階段を上った。左手には、血汚れを落としさやに収めたヴィザルの剣が握られている。
かつて勇敢な騎士の愛刀であったその剣は、魔王を討つために作られたその剣は、終に魔王の首を落とすことはなかった。聖者の首を落とし、魔王を守るために使われたのだ。そのあまりにも歪な真実を、人々はどう受け止めるのだろう。
イシュメルとギオラが大聖堂へと立ち入ったとき、そこには6人の人が並び立っていた。アリシアを筆頭にザカリ、リュイ、3人の兵士。剣の柄に手のひらをかけ、明らかな敵意を身にまとっている。
アリシアは言う。
「捕えなさい。愚かな騎士と魔王を」
――と。
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