上 下
30 / 40

※30.お仕置き

しおりを挟む
 深い眠りから覚めた。嫌な目覚め方だ。1000年前のあの日を思い出させる。セロの勧めで溺れるほどの酒を飲み、目が覚めれば両手首を鎖で繋がれていたあの日。悪意としか思えない執着心に敗北したあの日。
 まさかあの日に戻ったわけではあるまいに。そんなことを考えるギオラの目に、悪夢としか言えない光景が飛び込んできた。
 
「うあぁ……ああ」
「お、やっと起きた。気分はどう?」
 
 少し離れたところからセロの声がした。ソファに浅く腰掛けたセロは、テーブルの上に救急箱を開き傷の手当の真っ最中だ。ガーゼで溢れ出す鮮血をぬぐい、慣れた手つきで止血を行っていく。
 一方のギオラはベッドに寝かされていた。衣服は全て剥ぎ取られ、下着一つ身に着けていない。そして最悪なことに、4本の手足全てが鎖でベッドの脚に繋がれている。
 
 セロ、鎖を外せ。そう叫ぶために身動ぎをしたギオラは、臀部に違和感を覚えた。一度気付いてしまえば、それは吐き気すら催す不快感に変わる。後孔に何かが挿さり込んでいる。太く硬い、人に陰茎に酷似した物体が。
 
「セロ、中に何か……っ」
「そうそう。人を酒瓶で殴る悪い子には、お仕置きしなきゃと思ってさ。僕のオモチャを突っ込んどいたよ。結構イイだろそれ。傷の手当てが終わったら、ソレでたくさん中を掻き回してやるからな」
 
 物騒な宣言の後、セロは鼻歌交じりに手当を再開した。ベッドとソファの間には距離が開いているため、セロの傷がどのような状況状態であるのかは分からない。けれども自力での手当てが可能だということは、出血量のわりに傷は深くなかったのだ。
 後のことなど考えずしっかりとどめを刺すべきであったと後悔しても、もうどうすることもできない。
 
 間もなくして、傷の手当てを終えたセロがギオラの元へとやって来た。
 
「お待たせ、悪戯っ子ちゃん。二度と悪いことができないように、しーっかりと躾けてやるからな。せいぜい可愛い声で鳴いて、僕の機嫌をとるこった」
 
 ベッドへとよじ登る最中、セロは血跡の残る頬をゆがめて笑った。
 
 それから先、ギオラは血の通わない玩具に体内を犯され続けた。10日に渡り快楽を教え込まれた身体はささいな刺激にも敏感だ。セロの手が太ももに触れるたび、衣服のすそが亀頭を撫でるたび、玩具の先端が奥に届くたびに、理性は涙に溶けて消えていく。頭では嫌だと思うのに、もっと欲しいと腰が揺れる。
 
「何かさぁ、お仕置きじゃなくてご褒美になってんね。もっと本気で嫌がると思ったのに、こんなにヨさそうに腰を揺らしてさ。後ろがヨさそうな分、前は辛そうだけど」
 
 セロの指先がギオラの陰茎を弾いた。後孔への刺激により膨張し、だらだらと涎を垂らす場所。
 ふぁ、とギオラは甘い声を上げた。
 
「セロ、辛い」
「うんうん、辛いだろうね。お仕置きを初めてからまだ一度も触ってやってないもんな」
「イかせてくれ」
「駄目だ。そう簡単にイかせてやったら、本当にご褒美になっちゃうだろ? 僕の気が晴れるまで我慢するんだね。自分でまいた種なんだからさぁ」
「そんな、ァ、ぁあ」
 
 そうしてまた執拗に後孔を犯される。耳朶を舐られても、口内に唾液を流し込まれても、太ももを撫でられても、乳首をつままれても、一番快楽を待ち望む場所には触れてもらえない。手足を繋がれていては自分で慰めることもできず、発情した獣のように淫らな声を上げる。
 はち切れそうな陰茎を見て、セロは言った。
 
「ギオラ、イきたい?」
「イ、きたい」
「僕に何か言うことない?」
「殴って悪かった」
「他には?」
「……他」
「『セロ、愛してる。二度と逃げたりしない』。きちんと言えたらイかせてやるよ」
 
 ギオラは唇を噛む。あまりに強く噛みすぎて血の味がする。そんな心にもないことを言って堪るか、と思う。けれども体内をぐちゃぐちゃと搔き乱さされば、わずかに残る理性は泡のように弾けて消える。
 イきたい。
 射精したい。
 早く楽になりたい。
 
「……『セロ、愛してる。二度と逃げたりしない』」
「……よくできました」
 
 セロは満足そうに微笑むと、ギオラの後孔から玩具を引き抜いた。そして今度はその穴に自身のモノを押し入れる。すっかり蕩けて柔らかくなった淫らな穴は、セロのモノを美味そうに飲み込んでいく。
 
「あ、あ、あ」
「何だよ。可愛い声出して。やっぱりオモチャより僕のモノの方が気持ち良いんだ。愛し合っているんだから当たり前だよな。たくさん奥、突いてやるからさ。気持ちイイときは『気持ちイイ』って言うんだ。イクときもきちんと教えて?」
 
 そう言うと、セロはギオラの後孔を好き勝手に犯し始めた。入り口部分を執拗にこすってみたり、そうかと思いきやいきなり最奥を突き上げてみたり。血の通わない玩具とは違う、熱い肉の塊に理性も思考もプライドも溶かされる。
 
「あ、あぅ……セロ、『気持ちイイ』」
「そうだね、凄くヨさそうだ。もうイきそう?」
「イ……きそ……」
「僕のこと、愛してる?」
「……『愛してる』……あァ、はぁっ」
 
 ギオラの腰は大きく跳ねて、膨張した陰茎からは白濁液がほとばしった。長い間待ち望んだ解放の瞬間。視界がチカチカと瞬いて、もう気持ち良いこと以外何もわからない。
 
「お、盛大にイったね。じゃあ今度は僕が気持ちよくなる番だ。ギオラの中にたーっぷりと注ぎ込んでやるからな。嬉しくて堪らないだろ。ギオラは僕のこと、世界で一番愛してるんだからさぁ」
 
 ゆさゆさと腰を揺すられながら、ギオラはふと頭に浮かんだ名前を呼んだ。
 祈るように、すがるように。
 ――イシュメル
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

R18/君が婚約破棄するというので、絶対離さないと分からせるまで愛するのをやめない

ナイトウ
BL
傾向:溺愛執着一途婚約者攻め×おバカざまぁサレ役ポジ王子受け 夜這い、言葉責め、前立腺責め、結腸責め、強引 政略結婚とかまっぴらなのでダミーの浮気相手作って婚約破棄宣言したら秒で却下されるわ夜襲われるわ。

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

悪辣と花煙り――悪役令嬢の従者が大嫌いな騎士様に喰われる話――

BL
「ずっと前から、おまえが好きなんだ」 と、俺を容赦なく犯している男は、互いに互いを嫌い合っている(筈の)騎士様で――――。 「悪役令嬢」に仕えている性悪で悪辣な従者が、「没落エンド」とやらを回避しようと、裏で暗躍していたら、大嫌いな騎士様に見つかってしまった。双方の利益のために手を組んだものの、嫌いなことに変わりはないので、うっかり煽ってやったら、何故かがっつり喰われてしまった話。 ※ムーンライトノベルズでも公開しています(https://novel18.syosetu.com/n4448gl/)

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】

魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。 15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。 その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。 そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。 だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。 そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。 「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。 前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。 だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!? 「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」 初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!? 銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。

オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う

hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。 それはビッチングによるものだった。 幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。 国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。 ※不定期更新になります。

処理中です...