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もう一度
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「一つだけ、聞きたい事がある」
震える声を何とか押し出して、俺はクニハルに問いかけた。
「初めて会った時、お前は人の可能性は無限大だと言った。絶対に出来ないと思っている事でも、その気になれば案外簡単に出来てしまう事だってあると」
「あぁ……確かに言ったね。それが何か?」
「その言葉は嘘か?」
クニハルと目が合った。怒っているとも、楽しんでいるとも、何とも言えない無感情な笑みを浮かべて、クニハルが言った。
「……何故そう思うんだい?」
「もしそれが本当なのなら、どうして俺はあの二人を殺さなきゃいけないんだ?別に殺さずとも、俺がこれから幸せになる可能性だってあるんじゃないのか?」
「ははっ、成る程……」
しばらくして、そうだよ、と言う声が聞こえた。
「ごめんよ。人の可能性は無限大、そんなのは嘘さ」
「……」
「努力は必ず報われる?人は誰でも幸せになれる?本当にそうなら、この世界から夢という言葉は無くなってしまうよ。ロックスターやメジャーリーガー、大金待ちで溢れ返る世界なんて見たくないだろ?」
「そうだな」
「要はそういう事さ。この世界に、不可能は存在する。あの二人を生かしておいて、君が幸せになるのは無理だ。断言する」
それを聞いて、俺は心の中が晴れていくのを感じた。
そうか、やっぱりそうだったんだ。もう、夢物語は終わりにしよう。心が固まった。
「アイツらを殺す事は僕のやりたい事であって、君のやりたい事だ。迷うことは無いよ」
クニハルの言葉が、今まで以上に鮮明に聞こえる。
「分かったよ、お前の言う通りだ。もう迷うのはやめだ」
握りしめた拳銃を。
「聞けて良かった。ありがとよ」
「……?」
「二人を殺す。それが俺のやりたい事なのだとしたら」
ゆっくりと持ち上げた。そして。
「俺はもう一度、自分に嘘をつくとするよ」
銃口を、クニハルに向けた。
「悪いな。あの二人が生きている限り、俺が幸せになれないのは分かった。でも、所詮それだけの事だ」
「……銃を構える相手が違うんじゃないのか?」
「いいや、違わないね。不可能は確かに存在するって自分で言ってただろ?俺には彼女を撃てないって事さ」
「それでも、僕なら撃てると?」
「お前は俺だ。自分を撃つ事に対して抵抗は感じないよ」
拳銃を向けられたクニハルは、特に驚きもせず、ただ真っ直ぐに俺を見ていた。いつ撃たれてもおかしくないこの状況で、俺の目に映る男は顔色一つ変えなかった。
「…….いいのか?僕と君は一心同体なんだ。僕が死ねば、君も死ぬ事になるんだぞ?」
「それでいい。どうしても、俺は他人から奪った幸せが本当の幸福になるとは思えない。そこまでしないと幸せになれないのなら、なれなくていい」
「また、自分に嘘をつくんだね」
「もうこれで最後だからな」
そうだ、これは嘘だ。誰だって生きているなら幸せになりたいに決まっている。俺だって、本当は幸せになりたい。
そんな自分の気持ちに嘘をついて、俺は拳銃を向けたのだ。もう、後には引かない。
「は~あ……忘れてたよ。そうだったよ、君はそういう奴だったよ。いつだって綺麗事に身を包んでさ……」
「それが俺なんだ。世話になったな」
「チッ、こんなつもりじゃ無かったのに….…これじゃ無駄死にじゃんか….…」
「中々楽しかったよ。じゃあな詐欺師野郎……!」
辺り一面に銃声が響き渡った。玉は正確にクニハルの左胸を貫通し、高い血しぶきが舞い上がった。それは、夜の橋を一瞬だけ赤く染めてみせた。
少し遅れて、俺の心臓にも同じ衝撃が与えられた。徐々に体から力が抜けていく感覚。朦朧とする意識の中で、最後に一度だけ、優衣と目が合った気がした。
震える声を何とか押し出して、俺はクニハルに問いかけた。
「初めて会った時、お前は人の可能性は無限大だと言った。絶対に出来ないと思っている事でも、その気になれば案外簡単に出来てしまう事だってあると」
「あぁ……確かに言ったね。それが何か?」
「その言葉は嘘か?」
クニハルと目が合った。怒っているとも、楽しんでいるとも、何とも言えない無感情な笑みを浮かべて、クニハルが言った。
「……何故そう思うんだい?」
「もしそれが本当なのなら、どうして俺はあの二人を殺さなきゃいけないんだ?別に殺さずとも、俺がこれから幸せになる可能性だってあるんじゃないのか?」
「ははっ、成る程……」
しばらくして、そうだよ、と言う声が聞こえた。
「ごめんよ。人の可能性は無限大、そんなのは嘘さ」
「……」
「努力は必ず報われる?人は誰でも幸せになれる?本当にそうなら、この世界から夢という言葉は無くなってしまうよ。ロックスターやメジャーリーガー、大金待ちで溢れ返る世界なんて見たくないだろ?」
「そうだな」
「要はそういう事さ。この世界に、不可能は存在する。あの二人を生かしておいて、君が幸せになるのは無理だ。断言する」
それを聞いて、俺は心の中が晴れていくのを感じた。
そうか、やっぱりそうだったんだ。もう、夢物語は終わりにしよう。心が固まった。
「アイツらを殺す事は僕のやりたい事であって、君のやりたい事だ。迷うことは無いよ」
クニハルの言葉が、今まで以上に鮮明に聞こえる。
「分かったよ、お前の言う通りだ。もう迷うのはやめだ」
握りしめた拳銃を。
「聞けて良かった。ありがとよ」
「……?」
「二人を殺す。それが俺のやりたい事なのだとしたら」
ゆっくりと持ち上げた。そして。
「俺はもう一度、自分に嘘をつくとするよ」
銃口を、クニハルに向けた。
「悪いな。あの二人が生きている限り、俺が幸せになれないのは分かった。でも、所詮それだけの事だ」
「……銃を構える相手が違うんじゃないのか?」
「いいや、違わないね。不可能は確かに存在するって自分で言ってただろ?俺には彼女を撃てないって事さ」
「それでも、僕なら撃てると?」
「お前は俺だ。自分を撃つ事に対して抵抗は感じないよ」
拳銃を向けられたクニハルは、特に驚きもせず、ただ真っ直ぐに俺を見ていた。いつ撃たれてもおかしくないこの状況で、俺の目に映る男は顔色一つ変えなかった。
「…….いいのか?僕と君は一心同体なんだ。僕が死ねば、君も死ぬ事になるんだぞ?」
「それでいい。どうしても、俺は他人から奪った幸せが本当の幸福になるとは思えない。そこまでしないと幸せになれないのなら、なれなくていい」
「また、自分に嘘をつくんだね」
「もうこれで最後だからな」
そうだ、これは嘘だ。誰だって生きているなら幸せになりたいに決まっている。俺だって、本当は幸せになりたい。
そんな自分の気持ちに嘘をついて、俺は拳銃を向けたのだ。もう、後には引かない。
「は~あ……忘れてたよ。そうだったよ、君はそういう奴だったよ。いつだって綺麗事に身を包んでさ……」
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辺り一面に銃声が響き渡った。玉は正確にクニハルの左胸を貫通し、高い血しぶきが舞い上がった。それは、夜の橋を一瞬だけ赤く染めてみせた。
少し遅れて、俺の心臓にも同じ衝撃が与えられた。徐々に体から力が抜けていく感覚。朦朧とする意識の中で、最後に一度だけ、優衣と目が合った気がした。
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