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Ⅲ.貴方様と私の計略 ~ 婚約者 ~
124.辺境伯の煩悩と侯爵令嬢の隙(ユミナ視点)
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この状況は…ちょっと辛いな…
私は、ミリィにあるお願いをしていた。もう少し触れ合いたいと。
彼女は正しく意味を理解してくれていたかはわからないが、反応は悪くはなかったと思う。
―――はぁ。すぐ側にいるのになかなか距離が縮まらないな…まぁ、私も悪いのだろうが
そうぼやきながら、直ぐそばで安心したように眠るミリィへと視線を向ける。
私の肩へ頭を軽く預け、規則正しい寝息を立てている。
―――意識されていないわけではないのはわかっているが…こうも安心しきって眠られるのも少しな…
今は、街へと視察へ赴いた帰りだ。馬車に乗ってからさして時間はたっていない。
屋敷と街との距離はそれほどない。馬車で30分もかからない距離だ。馬ならばまだ早い。
そんな短い時間で、ミリィは寝てしまった。
―――行きは街を楽しみにしつつも少し緊張した感じだったのにな
帰りの馬車では、少し油断した隙に眠っていた。帰路に少しだけ問題があり、道を少し変更することに関する話をしている隙に眠られてしまった。
―――私との距離に緊張するのに、二人きりの密室空間で眠るのだな…
その時、軽く馬車が揺れ、ミリィの体が大きくかしぎ、座席から落ちそうになった。
自然と手が伸び、落ちることは免れるが、私に少しだけいたずら心がわく。
―――また、落ちたら危ないからな…
そう自分に言い訳しながら、ミリィを私の膝に乗せ横抱きにする。
そして、頭を私の肩にもたれさせるように楽な姿勢をとる。その際に、少しだけもぞもぞとミリィが動いたが、座りのいい位置を見つけたのか、おとなしく私の膝に座った状態で落ち着いた。
―――少し、まずったな。この姿勢は、少し辛い…
ミリィの体が私に密着した状態で固定されている状況に少しだけつらさを感じる。
ドレスを着るためにコルセットをしているものの、女性らしい柔らかな肢体を体で感じている。
―――抱き上げているのがミリィだというだけで、私の感じ方はここまで変わるのか…
今まで、女性とこれほど接したことがないとは言わない。
私もいい年をした大人なのだから、深い交わりを持った女性もいる。
ただ、抱き上げただけでここまで意識し、辛いと思うだけの女性はいなかった。
―――私も大概悪い男だったというわけか
密着したミリィの肢体と己の煩悩と戦っていれば、到着したと知らされる。
「わかった。私が声をかけるまで開けなくてよい」
入り口を開けようとする気配を感じ、そう声をかける。ミリィの寝顔を誰かに見られるのは嫌だと感じてしまったのだからしょうがない。
「ミリィ。屋敷についた。起きて?」
そう、声をかければもぞもぞと動き出した。
「…もう、お屋敷ですの?」
目をこすりながら、眠そうな声で返答するミリィに「ああ」と返し、彼女の動きを観察する。
今はまだ、寝ぼけていて自分が置かれている状況を理解していないようだった。
「自分で歩くかい?私は、このまま運んでも問題ないけれど」
そう声をかければ、「え?」と疑問の声を上げ、目を見開き固まってしまった。
「私はどちらでもいいのだけれど、ミリィはどうしたい?」
そう、少しだけ意地悪く問いかければ、状況を把握するようにミリィが口を開いた。
「どうして、私はユミナ様のお膝に乗っているのでしょうか…」
「座席から落ちそうで、危なかったからなか?」
消え入りそうなほど小さな彼女の言葉に、用意していた建前ともいえる回答を返せば、少しだけ思案するしぐさをする。
「それは…ありがとうございます?」
納得はできていないけれど、お礼は言うべきだろう。そんな思考が見え隠れする返答を彼女はし、私の膝から降りようと試みているようだ。
「ミリィ。少しだけ…」
私はそういい、彼女の顔を少しだけ強引に引き寄せ唇を奪う。いつもよりも少し長い口づけをすれば、彼女も控えめながら答えてくれる。
それを感じながら、少しだけ唇を離し彼女の表情を垣間見る。目を閉じ頬を染める彼女を確認すれば、たまらず再度唇を奪う。
頭の片隅では、彼女を怖がらせぬようゆっくりと進めると思いながらも、少しだけと彼女の唇を軽く食む。そして、何度か啄ばむ様な口づけを繰り返し、彼女を開放する。
「さて、ミリィ。屋敷に入ろうか」
そう声をかけ、彼女を膝から降ろせば恨めし気にこちらを見ているのに気づく。
「どうしたの?」
「…ユミナ様だけ余裕そうなのが少しだけしゃくですわ」
問えば、そう返答され私は苦笑を返すしかなかった。
―――私とて余裕なわけではないのだがな…
馬車を降りるためミリィの手をとれば、払いのけられることなくゆだねてくれる。
それに安堵と幸せを感じながら、言うはずの無かった本心を少しだけこぼしてしまう。
「別に私も余裕なわけではないよ。ただ…君には格好よく見せたいだけだ」
思わずこぼれたその言葉に、思わず口元を抑え、ミリィを見れば驚いた表情をしている彼女がいた。
そこに嫌悪はなく、ただ驚いているだけなのを感じ取り、私は少しだけ強引に馬車を降りる。
照れ隠しもあったが、これ以上自分が余計なことを言わないためだというのもある。
―――あんな本音、言う気はなかったんだがな…かなわない…
そんなことを思いながら、私とミリィは手を繋ぎ屋敷へと入っていった。
私は、ミリィにあるお願いをしていた。もう少し触れ合いたいと。
彼女は正しく意味を理解してくれていたかはわからないが、反応は悪くはなかったと思う。
―――はぁ。すぐ側にいるのになかなか距離が縮まらないな…まぁ、私も悪いのだろうが
そうぼやきながら、直ぐそばで安心したように眠るミリィへと視線を向ける。
私の肩へ頭を軽く預け、規則正しい寝息を立てている。
―――意識されていないわけではないのはわかっているが…こうも安心しきって眠られるのも少しな…
今は、街へと視察へ赴いた帰りだ。馬車に乗ってからさして時間はたっていない。
屋敷と街との距離はそれほどない。馬車で30分もかからない距離だ。馬ならばまだ早い。
そんな短い時間で、ミリィは寝てしまった。
―――行きは街を楽しみにしつつも少し緊張した感じだったのにな
帰りの馬車では、少し油断した隙に眠っていた。帰路に少しだけ問題があり、道を少し変更することに関する話をしている隙に眠られてしまった。
―――私との距離に緊張するのに、二人きりの密室空間で眠るのだな…
その時、軽く馬車が揺れ、ミリィの体が大きくかしぎ、座席から落ちそうになった。
自然と手が伸び、落ちることは免れるが、私に少しだけいたずら心がわく。
―――また、落ちたら危ないからな…
そう自分に言い訳しながら、ミリィを私の膝に乗せ横抱きにする。
そして、頭を私の肩にもたれさせるように楽な姿勢をとる。その際に、少しだけもぞもぞとミリィが動いたが、座りのいい位置を見つけたのか、おとなしく私の膝に座った状態で落ち着いた。
―――少し、まずったな。この姿勢は、少し辛い…
ミリィの体が私に密着した状態で固定されている状況に少しだけつらさを感じる。
ドレスを着るためにコルセットをしているものの、女性らしい柔らかな肢体を体で感じている。
―――抱き上げているのがミリィだというだけで、私の感じ方はここまで変わるのか…
今まで、女性とこれほど接したことがないとは言わない。
私もいい年をした大人なのだから、深い交わりを持った女性もいる。
ただ、抱き上げただけでここまで意識し、辛いと思うだけの女性はいなかった。
―――私も大概悪い男だったというわけか
密着したミリィの肢体と己の煩悩と戦っていれば、到着したと知らされる。
「わかった。私が声をかけるまで開けなくてよい」
入り口を開けようとする気配を感じ、そう声をかける。ミリィの寝顔を誰かに見られるのは嫌だと感じてしまったのだからしょうがない。
「ミリィ。屋敷についた。起きて?」
そう、声をかければもぞもぞと動き出した。
「…もう、お屋敷ですの?」
目をこすりながら、眠そうな声で返答するミリィに「ああ」と返し、彼女の動きを観察する。
今はまだ、寝ぼけていて自分が置かれている状況を理解していないようだった。
「自分で歩くかい?私は、このまま運んでも問題ないけれど」
そう声をかければ、「え?」と疑問の声を上げ、目を見開き固まってしまった。
「私はどちらでもいいのだけれど、ミリィはどうしたい?」
そう、少しだけ意地悪く問いかければ、状況を把握するようにミリィが口を開いた。
「どうして、私はユミナ様のお膝に乗っているのでしょうか…」
「座席から落ちそうで、危なかったからなか?」
消え入りそうなほど小さな彼女の言葉に、用意していた建前ともいえる回答を返せば、少しだけ思案するしぐさをする。
「それは…ありがとうございます?」
納得はできていないけれど、お礼は言うべきだろう。そんな思考が見え隠れする返答を彼女はし、私の膝から降りようと試みているようだ。
「ミリィ。少しだけ…」
私はそういい、彼女の顔を少しだけ強引に引き寄せ唇を奪う。いつもよりも少し長い口づけをすれば、彼女も控えめながら答えてくれる。
それを感じながら、少しだけ唇を離し彼女の表情を垣間見る。目を閉じ頬を染める彼女を確認すれば、たまらず再度唇を奪う。
頭の片隅では、彼女を怖がらせぬようゆっくりと進めると思いながらも、少しだけと彼女の唇を軽く食む。そして、何度か啄ばむ様な口づけを繰り返し、彼女を開放する。
「さて、ミリィ。屋敷に入ろうか」
そう声をかけ、彼女を膝から降ろせば恨めし気にこちらを見ているのに気づく。
「どうしたの?」
「…ユミナ様だけ余裕そうなのが少しだけしゃくですわ」
問えば、そう返答され私は苦笑を返すしかなかった。
―――私とて余裕なわけではないのだがな…
馬車を降りるためミリィの手をとれば、払いのけられることなくゆだねてくれる。
それに安堵と幸せを感じながら、言うはずの無かった本心を少しだけこぼしてしまう。
「別に私も余裕なわけではないよ。ただ…君には格好よく見せたいだけだ」
思わずこぼれたその言葉に、思わず口元を抑え、ミリィを見れば驚いた表情をしている彼女がいた。
そこに嫌悪はなく、ただ驚いているだけなのを感じ取り、私は少しだけ強引に馬車を降りる。
照れ隠しもあったが、これ以上自分が余計なことを言わないためだというのもある。
―――あんな本音、言う気はなかったんだがな…かなわない…
そんなことを思いながら、私とミリィは手を繋ぎ屋敷へと入っていった。
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