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Ⅱ.貴方様と私の計略 ~ 旅路 ~
120.侯爵令嬢、辺境伯領へ⑤(ユミナ視点)
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…私は幸せなのだろうな。
夕食だと声を掛けられたので、私は食堂へと移動する。
己の腹の底に折り重なるように淀んだ感情全てを落ち着けれたわけではないが、ミリィとの食事を断る選択肢はない。
食堂へ到着すれば、既にミリィが席に着いていた。
「すまない。ミリィ。少し遅れた」
「いいえ。私が少し早く来すぎたのですわ。お気になさらず」
私が己の席に着けば、食事が運ばれてくる。
晩餐と言うには質素な献立である。私の食事よりもミリィの食事の方が量が少ない。
「ミリィは何をしていたんだ?」
「私は、お部屋でくつろがせていただいていましたわ。メルとマルクスはあいさつ回りを行っていた様ですけれど。
途中からは、ノヴァと遊んでいました。ユミナ様はいかがでしたか?」
ミリィは綺麗に食事をしながら、私との会話を楽しんでいてくれるようだ。
―――なんというか、地味に幸せだな…
「そうだな。いくつかたまっていた仕事を片付けていた。途中、マルクスとヘーゼルが訪ねてきたが、大きな問題は特になかったな」
私の言葉に彼女は、そうなのですねと言葉を返してくる。
「そう言えば、遅くなったがこの屋敷でやっていけそうかい?」
何でもないことの様に、そうミリィに問う。ハレスの言葉通りであれば、多少なりとも何かを感じているだろう。
「そう…ですわね。気になることがないわけではないですけれど、このお屋敷の皆さまはとても働きものが多いのだと思います。お部屋もそうですが、共用部である廊下などもいろいろと行き届いている印象を受けました。皆ユミナ様を慕っているのだと思いますわ。ですから、私は私らしくあるだけです」
彼女の言葉の意味を私はかみしめるしかなかった。彼女自身が理由ではないことで微妙な態度をとられていることに思うところはあるようだった。それでも、彼女は彼女らしくあるだけだと言っている。それに加え、我が家の使用人を持ち上げてくれてる。
「そうか。何か困った事があれば、私に言ってくれ。有事でなければ、君のためなら時間をつくるから」
そう言えば、少しだけ嬉しそうにうなずきを返してくる。
「はい。ありがとうございます」
その後は、他愛のない話をし食事を終わった。そして、食後の休憩として談話室へと移動し食後のお茶を嗜んでいる。
私がミリィの横へと腰をかければ、距離の近さに少しだけ彼女は身を固くしたようだった。
「ミリィ」
「なんですの?」
声をかえれば、少しだけ肩を震わせ応えてくれる。
―――なんだろうな。反応がいちいち可愛い。
「私は…いや、シュトラウス家の問題で君に苦労を掛けているよね。本当にすまない」
「なんのことですの?」
彼女は少しだけとぼけるように返答をすれば、渋々と言うように言葉を返してくれる。
「…ユミナ様のせいではありません。それに、彼らの思いも理解できます。彼らは私を知りませんもの。だから、知っていただくだけです」
ミリィの言葉をうけ、彼女の瞳を見つめる。そこには、いつもの彼女の光があった。気負うことの無い小さな灯が。
「ありがとう」
そう言いながら、彼女の手を取り、掌へと口づける。
少しだけ強く押し付け、軽く食む。ミリィの肩が軽く跳ねるのを確認し、開放する。
「さて。そろそろいい時間だね。部屋に送ろう」
ミリィを立ち上がらせ、彼女を部屋へと送る。
彼女が部屋の中へと入り、私へと振り向いた。
「おやすみなさいませ。ユミナ様」
私がその言葉の衝撃で、理性をフル動員していれば、ミリィは不思議そうに首を傾げている。
「…ユミナ様?」
「あ…ああ。おやすみ。ミリィ」
彼女の問いかけによって、我に返る。そして、ミリィがしてくれたように私も夜の挨拶を返す。
そして、おまけだというように、額へと口づけ『ちゅっ』とわざと音を立てて離れる。
真っ赤に染まったミリィの顔を確認し、頬へと指先を走らせる。
そこまでして、何とか理性をフル動員させ彼女から指先を離す。
―――駄目だな。私のテリトリーにいると思うと手を出したくなる。
私は、彼女を彼女の護衛達に任せ、内に燻る熱を霧散させるため彼女の部屋を後にした。
夕食だと声を掛けられたので、私は食堂へと移動する。
己の腹の底に折り重なるように淀んだ感情全てを落ち着けれたわけではないが、ミリィとの食事を断る選択肢はない。
食堂へ到着すれば、既にミリィが席に着いていた。
「すまない。ミリィ。少し遅れた」
「いいえ。私が少し早く来すぎたのですわ。お気になさらず」
私が己の席に着けば、食事が運ばれてくる。
晩餐と言うには質素な献立である。私の食事よりもミリィの食事の方が量が少ない。
「ミリィは何をしていたんだ?」
「私は、お部屋でくつろがせていただいていましたわ。メルとマルクスはあいさつ回りを行っていた様ですけれど。
途中からは、ノヴァと遊んでいました。ユミナ様はいかがでしたか?」
ミリィは綺麗に食事をしながら、私との会話を楽しんでいてくれるようだ。
―――なんというか、地味に幸せだな…
「そうだな。いくつかたまっていた仕事を片付けていた。途中、マルクスとヘーゼルが訪ねてきたが、大きな問題は特になかったな」
私の言葉に彼女は、そうなのですねと言葉を返してくる。
「そう言えば、遅くなったがこの屋敷でやっていけそうかい?」
何でもないことの様に、そうミリィに問う。ハレスの言葉通りであれば、多少なりとも何かを感じているだろう。
「そう…ですわね。気になることがないわけではないですけれど、このお屋敷の皆さまはとても働きものが多いのだと思います。お部屋もそうですが、共用部である廊下などもいろいろと行き届いている印象を受けました。皆ユミナ様を慕っているのだと思いますわ。ですから、私は私らしくあるだけです」
彼女の言葉の意味を私はかみしめるしかなかった。彼女自身が理由ではないことで微妙な態度をとられていることに思うところはあるようだった。それでも、彼女は彼女らしくあるだけだと言っている。それに加え、我が家の使用人を持ち上げてくれてる。
「そうか。何か困った事があれば、私に言ってくれ。有事でなければ、君のためなら時間をつくるから」
そう言えば、少しだけ嬉しそうにうなずきを返してくる。
「はい。ありがとうございます」
その後は、他愛のない話をし食事を終わった。そして、食後の休憩として談話室へと移動し食後のお茶を嗜んでいる。
私がミリィの横へと腰をかければ、距離の近さに少しだけ彼女は身を固くしたようだった。
「ミリィ」
「なんですの?」
声をかえれば、少しだけ肩を震わせ応えてくれる。
―――なんだろうな。反応がいちいち可愛い。
「私は…いや、シュトラウス家の問題で君に苦労を掛けているよね。本当にすまない」
「なんのことですの?」
彼女は少しだけとぼけるように返答をすれば、渋々と言うように言葉を返してくれる。
「…ユミナ様のせいではありません。それに、彼らの思いも理解できます。彼らは私を知りませんもの。だから、知っていただくだけです」
ミリィの言葉をうけ、彼女の瞳を見つめる。そこには、いつもの彼女の光があった。気負うことの無い小さな灯が。
「ありがとう」
そう言いながら、彼女の手を取り、掌へと口づける。
少しだけ強く押し付け、軽く食む。ミリィの肩が軽く跳ねるのを確認し、開放する。
「さて。そろそろいい時間だね。部屋に送ろう」
ミリィを立ち上がらせ、彼女を部屋へと送る。
彼女が部屋の中へと入り、私へと振り向いた。
「おやすみなさいませ。ユミナ様」
私がその言葉の衝撃で、理性をフル動員していれば、ミリィは不思議そうに首を傾げている。
「…ユミナ様?」
「あ…ああ。おやすみ。ミリィ」
彼女の問いかけによって、我に返る。そして、ミリィがしてくれたように私も夜の挨拶を返す。
そして、おまけだというように、額へと口づけ『ちゅっ』とわざと音を立てて離れる。
真っ赤に染まったミリィの顔を確認し、頬へと指先を走らせる。
そこまでして、何とか理性をフル動員させ彼女から指先を離す。
―――駄目だな。私のテリトリーにいると思うと手を出したくなる。
私は、彼女を彼女の護衛達に任せ、内に燻る熱を霧散させるため彼女の部屋を後にした。
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