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Ⅰ.貴方様と私の計略 ~ 出会いそして約束 ~
37.侯爵家の女主人
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知の侯爵と呼ばれる、侯爵家の女主人に求められるのは、情報の整理能力と真実を見る力。
私も頑張らねば。
皆を見送った私は、まずは現状の整理を始めます。
「ダリオ、現状の整理をするわ」
テイラー家の執事長を務める、ダリオと共に女主人の執務室へ入る。
「現在、北の辺境伯領の情報をどこまでつかめているの」
「北の辺境伯領の情報は、辺境伯領からの情報が正しいことも多く、素早くあげられるため常時集めているわけではありませんので、辺境伯様からの情報が最新で全てです」
ダリオの返答に、少し考え結論を出す。
「では、急ぎ北の辺境伯領と国境付近に偵察を。どんな小さな事でも情報を拾って来て下さい。
それから、ハルカとカレンはお爺さまに着いているわね?」
ダリオが頷くのを確認しながら、止めることなく思考を続ける。
元々、ハルカとカレンは、お爺さま専属なのだから、当たり前ではあるのだけど。
そうね。あちらの情報も欲しいわね。情報の精査に必要だわ。
「お爺さまに、あちらの情報をこちらに流して貰うように頼んでちょうだい。
あげる情報の優先順位を決めるのに必要だわ。
それと、情報の共有はマメに行ってちょうだい。個々の判断で、素早く揚げる必要があるものは、お爺さまとクルツに直接あげて貰って構わないわ。
その場合は、後付けで報告を。
それから、クルツにカリンとカイトの双子を付けてちょうだい。
普段着いている二人は、情報の収集に回して」
クルツとは、カリンとカイトが相性が一番いいわ。
それに、素早く多くを集めるなら、カリンとカイトではたりない。
一通りの指示を出し、現在上がっている情報に目を通す。
とりあえずは、北の国境だけで問題が起きているようですわね。
北は元々不安定は地域ではありますけれど、シュトラウス家が辺境伯になってからは、比較的安定してましたのに。
ここ最近で辺境伯領で何か変化があったかしら?
・・・あったわ。ユミナ様が王都に滞在しているわ。
王都から国境まで、馬車で7日程度。
早馬を乗り継いでも、2日程度かかるわ。
王家所属の騎竜隊の助力を得られて、半日程度かしら。
そう考えるとユミナ様の留守を狙った?
可能性としては比較的高いけれど、決定打にかけるわね。
「ダリオ。王都貴族の動向と情勢を調査してちょうだい。
何故、今なのかが気になるわ。ユミナ様が辺境伯領を留守にしているからなのか、別の理由があるのか。
判断するための情報がいるわ」
後は、辺境伯との連絡経路が欲しいわね。
お爺さまの許可はいるけれど・・・そうね。彼らにしましょう。
少しばかり、クセが強いけれど、多分大丈夫よね?
「ヘーゼルとマルクスはいるかしら?」
私の言葉に、二つの影が現れる。
一人は年配の男性でもう一人は若い男性。
本来、二人はお爺さまの専属の様なもの。
私に出来るかしら?いえ、やらなければ!
「お嬢が我らを使うのは珍しいね」
若い男性は、マルクス。少し、剽軽な性格をしている。
そして、使われる相手をしっかりと選んでくる。
ヘーゼルは、少しひねくれてるし、使える相手を選ぶ。
「そうね。貴方たちは、まだ私を本気で認めてはいないでしょう?」
「では、何故今呼んだ」
ヘーゼルが、目を細め見下ろしてくる。
うう・・・この二人の威圧感は相変わらずですわね。
本能に訴えかけるというか。でも、ひるむわけにはいかないのよ。
「当たり前のことを聞かないでちょうだい。
貴方たちが適任だと判断したからに決まっています。
ただ、他家がかかわるから、お爺さまに判断を仰がねばなりませんが。
既に認識していると思うけれど、北の辺境伯領・・・というか、国境で不穏な動きが発生しています。
テイラー家としては、情報の収集と提供。あとは、必要に応じて実力行使です。やることは、何時もと変わらないわ。
そこで、シュトラウス辺境伯との連絡経路としての昨日を貴方たちにお願いしたいの。
既に、辺境伯にはハルカとカレンが顔を合わせています。
彼らに連絡経路となって貰っても良いのですが、彼らはお爺さまの護衛も兼ねていますから、適任ではありません。
それに、貴方たちなら、国境と王都を半日程度で移動可能でしょう?」
私は、一通りの説明をし、ヘーゼルとマルクスを見つめます。
目をそらしたらだめな気がするわね。
「当主の許可は」
「お爺さまは現在王宮に上がっていて、帰ってこないと思うわ。
だから、貴方たちに直接許可をとって貰って、そのまま辺境伯領へ行って貰おうかと思って」
私の答えに、二人は一瞬虚を突かれたような顔をし、マルクスが笑い出しました。
「よくそれで、俺たち使おうと思ったね」
マルクスの言葉に、私はそうよね。と答えます。
「私、最近、守りたいものが増えましたの。そして、譲れないものも。ですから、必要だと判断すれば、無茶だと思っても通しますわ」
「それが、辺境伯か?」
ヘーゼルの問に私は、頷き
「私、お父様から頂いていた、形見の鞘飾りを渡しましたの」
そう答えた。
鞘飾り。母から息子へ。父から娘へと贈られるお守りの様なもの。
父から娘への鞘飾りは、娘の安全を祈願する意味合いと娘の大事な人の安全を祈願する意味合いがある。
娘の鞘飾りは、娘の大切な人へと贈られるものだからだ。
母から息子への鞘飾りは、息子の安全を祈願する意味を持つ。
息子の大切な人から鞘飾りが贈られるまで。
私はお父様から、クルツはお母様から鞘飾りを頂いています。
既に廃れた風習だけれど、お母様がお爺さまから頂いていたから。
テイラー家に残っている古い風習の一つだとお爺さまが後に教えてくださいました。
そして、私はユミナ様へ鞘飾りを送りました。
それが、意味することはそういうことで。
ユミナ様がご存じかはわかりませんけれど。
「そうか」
ヘーゼルは、それだけ言う。マルクスは、少し逡巡したのちこちらに問いかけてくる。
「お嬢は俺たちのことをどう思っている」
どうとは?
漠然とした問いかけに、質問の意味と答を考える。
「質問の意図をとりかねるのですけれど。そうですわね。
私に出来ないことを出来ることについては、すごいと思いますし、敬意を払いたいと思っていますわ。
そして、私にとってあなた方は、仲間であり、家族であり、兄弟のようなものだと認識しております。
私は、あなた方が傷つくことは望みませんし、いなくなれば悲しいです。
けれど、私は上に立つものとして、おそらく酷な指示を出すこともあると思いますわ。
それだけでなく、本心はどうあれ切り捨てる判断をすることもあるでしょう」
これで、答えになりますか。と、マルクスを見つめる。
内心は、これで良いのかという不安が渦巻いていますけれど。
「嬢ちゃんは、甘いな」
そうですか?と、問えば、当主とその奥方は、使うものと使われるものだと言い切られた。と、答えられました。
どうやら、お爺さまとお婆さまは、私とは考え方が違うようですわね。
多分、私の考え方は市井にいた事があり、その上に貴族としての考え方をのせているからなのだとか思います。
「まぁ、嫌いな考え方ではないな」
そう言って、行ってくるとマルクスは、ヘーゼルと共に姿を消しました。
どうやら、私の回答はお気に召してくださったようです。
ひとまず、彼らとお爺さまに任せましょう。
しばらくして、お爺さまからの連絡が届きました。
マルクスとヘーゼルの件については、一部条件付きにはなったようですけれども、許可がおりたようですわ。
クルツからもカリンとカイトが着くことに了承の返答が添えられていました。
次は、王宮での情報のようですわね。
現在、王宮では右往左往しているようです。
北の隣国からは、国境付近での演習の予定は連絡されていないようですわ。
まぁ、同盟国ではないのですから、致し方ないですけれど。
こちらについては、辺境伯による防衛ラインの強化と厳戒態勢をしきつつ、隣国への遺憾の意と真意を確かめるべく使者を送ることにしたようです。
今回の使者さまは、命の危険が伴うわね。
隣国に我が国に敵対意思があった場合は、無事に帰ってこれる保障はないですし。
ヘタをすると拘束や首が落とされることもあるはず。
あ。一応、騎竜隊が護衛につくようですわね。
まぁ、リスクが少し減る程度でしょうけど。
ユミナ様は、ヘーゼルとマルクスを伴って、北に帰られたようですわね。
辺境伯領との連絡用の騎竜に同乗したようです。
と言うことは、ヘーゼル達とは移動自体は別行動・・・何もなければ良いけれど。
でも、そろそろ着く頃合かしら?
それにしても、議席権を持つ貴族たちは、何をしてますの?
事態が発覚し国王による議席招集がかかってから、数刻。
馳せ参じたのは、半数にも満たないだなんて。
社交シーズンなのだから、ほぼ王都に滞在しているでしょうに。
対岸の火事。
自分には関係ない事だとお考えなのでしょうか。
北の国境が崩れれば、国内は荒れるというのに。
平和ぼけと言う奴かしらね。
あとは・・・お爺さまが欲しい情報が纏められているわね。
北の国境付近の情報。
辺境伯領の情報。
王都に滞在中の貴族の動向。
市井の情報。
市井の情報?
何に・・・ああ。市井の噂話には幾ばくかの真実がありますものね。
後は、市井の物流情報。何処に何が流れているかについても確認する必要がありそうね。
「ダリオ。市井の噂も含む情報の収集を持ってきてちょうだい。
それと、ここ数年の物流に関する情報もお願い」
それから、私は情報の波に埋もれながら、集まる情報を精査整理し、必要な場所へと流していく。
テイラー家の女性が求められるのはのは、社交術。
けれど、それよりも重要視されるのは、思考力と観察眼。
情報の精査と整理。それて、それらを判断する能力。
噂の中の真実を見極める力。
私の社交術は、ちょっぴり心許ないけれど、
テイラー家の女として、女主人として出来ることを頑張らねば。
私も頑張らねば。
皆を見送った私は、まずは現状の整理を始めます。
「ダリオ、現状の整理をするわ」
テイラー家の執事長を務める、ダリオと共に女主人の執務室へ入る。
「現在、北の辺境伯領の情報をどこまでつかめているの」
「北の辺境伯領の情報は、辺境伯領からの情報が正しいことも多く、素早くあげられるため常時集めているわけではありませんので、辺境伯様からの情報が最新で全てです」
ダリオの返答に、少し考え結論を出す。
「では、急ぎ北の辺境伯領と国境付近に偵察を。どんな小さな事でも情報を拾って来て下さい。
それから、ハルカとカレンはお爺さまに着いているわね?」
ダリオが頷くのを確認しながら、止めることなく思考を続ける。
元々、ハルカとカレンは、お爺さま専属なのだから、当たり前ではあるのだけど。
そうね。あちらの情報も欲しいわね。情報の精査に必要だわ。
「お爺さまに、あちらの情報をこちらに流して貰うように頼んでちょうだい。
あげる情報の優先順位を決めるのに必要だわ。
それと、情報の共有はマメに行ってちょうだい。個々の判断で、素早く揚げる必要があるものは、お爺さまとクルツに直接あげて貰って構わないわ。
その場合は、後付けで報告を。
それから、クルツにカリンとカイトの双子を付けてちょうだい。
普段着いている二人は、情報の収集に回して」
クルツとは、カリンとカイトが相性が一番いいわ。
それに、素早く多くを集めるなら、カリンとカイトではたりない。
一通りの指示を出し、現在上がっている情報に目を通す。
とりあえずは、北の国境だけで問題が起きているようですわね。
北は元々不安定は地域ではありますけれど、シュトラウス家が辺境伯になってからは、比較的安定してましたのに。
ここ最近で辺境伯領で何か変化があったかしら?
・・・あったわ。ユミナ様が王都に滞在しているわ。
王都から国境まで、馬車で7日程度。
早馬を乗り継いでも、2日程度かかるわ。
王家所属の騎竜隊の助力を得られて、半日程度かしら。
そう考えるとユミナ様の留守を狙った?
可能性としては比較的高いけれど、決定打にかけるわね。
「ダリオ。王都貴族の動向と情勢を調査してちょうだい。
何故、今なのかが気になるわ。ユミナ様が辺境伯領を留守にしているからなのか、別の理由があるのか。
判断するための情報がいるわ」
後は、辺境伯との連絡経路が欲しいわね。
お爺さまの許可はいるけれど・・・そうね。彼らにしましょう。
少しばかり、クセが強いけれど、多分大丈夫よね?
「ヘーゼルとマルクスはいるかしら?」
私の言葉に、二つの影が現れる。
一人は年配の男性でもう一人は若い男性。
本来、二人はお爺さまの専属の様なもの。
私に出来るかしら?いえ、やらなければ!
「お嬢が我らを使うのは珍しいね」
若い男性は、マルクス。少し、剽軽な性格をしている。
そして、使われる相手をしっかりと選んでくる。
ヘーゼルは、少しひねくれてるし、使える相手を選ぶ。
「そうね。貴方たちは、まだ私を本気で認めてはいないでしょう?」
「では、何故今呼んだ」
ヘーゼルが、目を細め見下ろしてくる。
うう・・・この二人の威圧感は相変わらずですわね。
本能に訴えかけるというか。でも、ひるむわけにはいかないのよ。
「当たり前のことを聞かないでちょうだい。
貴方たちが適任だと判断したからに決まっています。
ただ、他家がかかわるから、お爺さまに判断を仰がねばなりませんが。
既に認識していると思うけれど、北の辺境伯領・・・というか、国境で不穏な動きが発生しています。
テイラー家としては、情報の収集と提供。あとは、必要に応じて実力行使です。やることは、何時もと変わらないわ。
そこで、シュトラウス辺境伯との連絡経路としての昨日を貴方たちにお願いしたいの。
既に、辺境伯にはハルカとカレンが顔を合わせています。
彼らに連絡経路となって貰っても良いのですが、彼らはお爺さまの護衛も兼ねていますから、適任ではありません。
それに、貴方たちなら、国境と王都を半日程度で移動可能でしょう?」
私は、一通りの説明をし、ヘーゼルとマルクスを見つめます。
目をそらしたらだめな気がするわね。
「当主の許可は」
「お爺さまは現在王宮に上がっていて、帰ってこないと思うわ。
だから、貴方たちに直接許可をとって貰って、そのまま辺境伯領へ行って貰おうかと思って」
私の答えに、二人は一瞬虚を突かれたような顔をし、マルクスが笑い出しました。
「よくそれで、俺たち使おうと思ったね」
マルクスの言葉に、私はそうよね。と答えます。
「私、最近、守りたいものが増えましたの。そして、譲れないものも。ですから、必要だと判断すれば、無茶だと思っても通しますわ」
「それが、辺境伯か?」
ヘーゼルの問に私は、頷き
「私、お父様から頂いていた、形見の鞘飾りを渡しましたの」
そう答えた。
鞘飾り。母から息子へ。父から娘へと贈られるお守りの様なもの。
父から娘への鞘飾りは、娘の安全を祈願する意味合いと娘の大事な人の安全を祈願する意味合いがある。
娘の鞘飾りは、娘の大切な人へと贈られるものだからだ。
母から息子への鞘飾りは、息子の安全を祈願する意味を持つ。
息子の大切な人から鞘飾りが贈られるまで。
私はお父様から、クルツはお母様から鞘飾りを頂いています。
既に廃れた風習だけれど、お母様がお爺さまから頂いていたから。
テイラー家に残っている古い風習の一つだとお爺さまが後に教えてくださいました。
そして、私はユミナ様へ鞘飾りを送りました。
それが、意味することはそういうことで。
ユミナ様がご存じかはわかりませんけれど。
「そうか」
ヘーゼルは、それだけ言う。マルクスは、少し逡巡したのちこちらに問いかけてくる。
「お嬢は俺たちのことをどう思っている」
どうとは?
漠然とした問いかけに、質問の意味と答を考える。
「質問の意図をとりかねるのですけれど。そうですわね。
私に出来ないことを出来ることについては、すごいと思いますし、敬意を払いたいと思っていますわ。
そして、私にとってあなた方は、仲間であり、家族であり、兄弟のようなものだと認識しております。
私は、あなた方が傷つくことは望みませんし、いなくなれば悲しいです。
けれど、私は上に立つものとして、おそらく酷な指示を出すこともあると思いますわ。
それだけでなく、本心はどうあれ切り捨てる判断をすることもあるでしょう」
これで、答えになりますか。と、マルクスを見つめる。
内心は、これで良いのかという不安が渦巻いていますけれど。
「嬢ちゃんは、甘いな」
そうですか?と、問えば、当主とその奥方は、使うものと使われるものだと言い切られた。と、答えられました。
どうやら、お爺さまとお婆さまは、私とは考え方が違うようですわね。
多分、私の考え方は市井にいた事があり、その上に貴族としての考え方をのせているからなのだとか思います。
「まぁ、嫌いな考え方ではないな」
そう言って、行ってくるとマルクスは、ヘーゼルと共に姿を消しました。
どうやら、私の回答はお気に召してくださったようです。
ひとまず、彼らとお爺さまに任せましょう。
しばらくして、お爺さまからの連絡が届きました。
マルクスとヘーゼルの件については、一部条件付きにはなったようですけれども、許可がおりたようですわ。
クルツからもカリンとカイトが着くことに了承の返答が添えられていました。
次は、王宮での情報のようですわね。
現在、王宮では右往左往しているようです。
北の隣国からは、国境付近での演習の予定は連絡されていないようですわ。
まぁ、同盟国ではないのですから、致し方ないですけれど。
こちらについては、辺境伯による防衛ラインの強化と厳戒態勢をしきつつ、隣国への遺憾の意と真意を確かめるべく使者を送ることにしたようです。
今回の使者さまは、命の危険が伴うわね。
隣国に我が国に敵対意思があった場合は、無事に帰ってこれる保障はないですし。
ヘタをすると拘束や首が落とされることもあるはず。
あ。一応、騎竜隊が護衛につくようですわね。
まぁ、リスクが少し減る程度でしょうけど。
ユミナ様は、ヘーゼルとマルクスを伴って、北に帰られたようですわね。
辺境伯領との連絡用の騎竜に同乗したようです。
と言うことは、ヘーゼル達とは移動自体は別行動・・・何もなければ良いけれど。
でも、そろそろ着く頃合かしら?
それにしても、議席権を持つ貴族たちは、何をしてますの?
事態が発覚し国王による議席招集がかかってから、数刻。
馳せ参じたのは、半数にも満たないだなんて。
社交シーズンなのだから、ほぼ王都に滞在しているでしょうに。
対岸の火事。
自分には関係ない事だとお考えなのでしょうか。
北の国境が崩れれば、国内は荒れるというのに。
平和ぼけと言う奴かしらね。
あとは・・・お爺さまが欲しい情報が纏められているわね。
北の国境付近の情報。
辺境伯領の情報。
王都に滞在中の貴族の動向。
市井の情報。
市井の情報?
何に・・・ああ。市井の噂話には幾ばくかの真実がありますものね。
後は、市井の物流情報。何処に何が流れているかについても確認する必要がありそうね。
「ダリオ。市井の噂も含む情報の収集を持ってきてちょうだい。
それと、ここ数年の物流に関する情報もお願い」
それから、私は情報の波に埋もれながら、集まる情報を精査整理し、必要な場所へと流していく。
テイラー家の女性が求められるのはのは、社交術。
けれど、それよりも重要視されるのは、思考力と観察眼。
情報の精査と整理。それて、それらを判断する能力。
噂の中の真実を見極める力。
私の社交術は、ちょっぴり心許ないけれど、
テイラー家の女として、女主人として出来ることを頑張らねば。
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