貴方様と私の計略

羽柴 玲

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Ⅰ.貴方様と私の計略 ~ 出会いそして約束 ~

29.記憶の欠片と重なる欠片③(ユミナ視点)

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どれだけ、用意周到なんだ・・・



殿下と私は、二日かけてなんとか、足取りをつかめた。
巧妙に細工されていて、カミラ殿下の特殊能力がなければまだ時間がかかったかもしれない。

この国の王家といにしえの血族と呼ばれる者達には、公然の秘匿事項がある。
絶対ではないが、特殊な力が発露することがある。
現れる能力は一律ではなく、発露した本人に依存することが多いと聞く。
また、血の濃さではなく、血を引く者であれば、何十代と発露がなくとも発露することはある。

カミラ殿下の特殊能力は、隠匿の発露と呼ばれるものらしい。
隠してあるなにかを暴く力なんだ。と、おっしゃられていた。
常時発動型ではないから、まぁ重宝している。と、苦笑もされていたが。
私からしたら、万能ではないらしいが難儀であるとしか言えない。だって、それは知りたくもない事を知ってしまうと言うことでもあるじゃないか。
それに、その能力を発露しなければならないような環境に晒されていたということだ。

「私がこの力を使うとユミナはいつも難しい顔をするな」

今回も殿下は、そうおっしゃって苦笑される。
私は友人に恵まれているな。とおっしゃって、分かったことを伝えてくださる。

殿下の暴いた隠匿を元に、足取りを追う。
何度か殿下の能力に頼る必要があったのは、少し悔やまれる。
常時発動型も含め特殊能力の利用には、対価が必要だと言われている。
些細なものから、重大なものまで区々まちまちだ。
殿下の場合は、血液を媒体に発動する。
できれば、あまり使わせたくはない。

そうこうしているうちに、殿下と私は貴族街の外れに戻ってきていた。
スラムから非正規の手順で、王都をでると隣町へ向かっていた。
しかし、分からぬように途中から引き返し、正規の手順で王都に戻っていた。
そして、たどり着いたのが貴族街の外れだった。

「えらく、遠回りさせられたものだな」

「ええ。ほんとに」

それだけ、用意周到に準備し、警戒しているといえる。
さて、あと少しだ
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