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第12話 ふんっ!今は我慢、我慢なの!!

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「そうですね。これはルイ家の面目に関わること。召使いのフリでも何でもやってみますわ!」



***



 次の日から事情を知るアプレンとともに、公務室のお掃除をすることにした。何か手がかりを探そうと試みたけど、そう簡単には見つからない。手詰まりを感じたころ、サラーニャに呼び出された。

「ララコスティ、モモシャリーさまがお呼びだ。さっさと来い!」

 ふん。サラーニャめ、偉そうーに!

「今すぐに参ります」

 わたくしは密かに深呼吸して気持ちを整える。そして憎っくきモモシャリーの前で跪いた。

「お呼びでしょうか。モモシャリーさま」
「ああ、ララコスティ。お前に仕事を与えるわ」
「お仕事ですか。どういった内容でしょう?」
「私たちの婚約パーティーを貴族院の同窓会を兼ねて執り行うの。お前はこの招待状を同級生全員に手渡ししなさい」

 手渡し⁈ 同級生ってざーっと30人は居るわよね、お屋敷全て回るなんて超面倒なっ!

「かしこまりました」

 ん? 待てよ。これって宮殿からお外へ出られるのかしら⁈

「期間は3日。必ず本人へ手渡しするのよ。あ、そうそう。お前、記憶喪失だから住所をそこへ記してあげたから」
「はい。ご配慮ありがとうございます」
「それと、そのボロ服で行きなさい。何か聞かれたら『ゼアス家の召使いです』って言うのよ。いいこと?」

 なるほど。落ちぶれたこのララコスティを見せたいってワケね。ふん、やることが陰湿だわ。

「かしこまりました、モモシャリーさま」



***



 わたくしは招待状を持って宮殿を後にする。久しぶりの外出にテンションが上がった。

「あー、空気が美味しいわ」
「いい天気ですね、ララコスティさま」
「アプレン、付き合ってもらってありがとう。でも1人で大丈夫ですわ」
「ダメです! 1人で行かせるわけにはいかないよ。僕は貴女の護衛をするんだ」
「うふふ、頼もしいこと。じゃあ、お願いしようかしら」

 さて、何処から行こうかな。宮殿の近くは沢山の同級生が居るの。とは言っても、こんなボロ服でお会いするのは気が引ける……。取り敢えずわたくしの境遇をご存知の方、つまりあの婚約(破棄)パーティーに参加されてた方々から訪問しよう。今の自分を説明するのも面倒だしね。

 まずは1軒目。伯爵家の立派な門構えに立ち、召使いを通じて同級生をお呼び頂く。彼女はモモシャリーと通じてるお嬢さま。わたくしを見るやいなや明らかに軽蔑の眼差しで接してきた。

「あら、ララコスティさま……いえ、ゼウス家の召使いが何の御用かしら?」

 わたくしは笑顔で招待状を差出しながらご挨拶をする。

「この度、貴族院の同窓会を兼ねてモモシャリーさまの婚約パーティーを催したいと存じます」
「……大体のことは知ってますわ。それにしても貴女はとことん落ちぶれたわね。おーほほほほ」

 ふんっ! 初っ端からムカつくわね! ……いえ、今は我慢、我慢なの!

「是非ご出席くださいますよう、お願い申し上げます」

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