わたくしのこと“干物女”って言いましたよね？

21話 今日はとことん見返してやります！

『ララ様、やっぱり恥ずかしいです。こんな大胆な露出の衣装で』

二時間前に会場へ入った私は、ホテルスタッフと動画の確認をしながらも、突き刺さるいやらしい視線に戸惑いを隠せないでいた。

『あら、とてもお似合いよ。皆が見てるじゃない』

だからこそ、恥ずかしいんです！

真紅のミニドレスの胸元から、おっぱいの谷間がこれでもかとアピールしているようで、さらに背中も丸出しでボディラインが強調されたド派手な衣装。そして、アクセサリーも豪華で謝恩会とはいえ少々場違いではないかと心配なのだ。

『大丈夫。ショールを羽織ってるから』

その羽織り物もスケスケのラメではないですか！

『美しいわよ、花。だから背筋を伸ばして自信を持って！今日は勝負の日よ！』
『は、はい……』

そうだった。この謝恩会で絵梨花とお局に大反撃すると決めていたのだ。なので、今日は全てを解禁している。マスクも眼鏡もない。ヘアスタイルもメイクも完璧だと思う。それに、ララ様も側にいるから心強い。

まぁ外見も衣装もララ様で中身だけは私。でも、これで勝負する。これまでの鬱憤を晴らすのだ。

そこへ東薔薇主任と各課世話役、それに絵梨花Grが到着した。絵梨花は主任の隣をキープして楽しそうだ。

「ん……誰？あの娘？」

会場にド派手でセクシーなドレスを着た女性がホテルスタッフと連携している姿を見た一行は、しばらく誰だか分からない様子。

『花、東薔薇に笑顔で声かけしなさい』

う、うん。今日は軍師の言う通り頑張ってみる。

「東薔薇主任、お疲れ様でーす！」

私は最大級の笑顔で手を振ってみせた。

「あ、もしかして綾坂さ……ん？」

一行がざわつく。特に絵梨花やお局のキンキン声が聞こえてきた。

「ええーーっ！？あれが干物女ーー！？」
「何かの間違いでしょう！信じられないっ！」

明らかに全員が驚愕の眼差しを向けていた。あの派手な女性が、まさか地味で根暗な私だとは想像もしていなかったのだろう。

「う、美しいな……」
「えっ！？東薔薇様？」

主任がそう呟いた。絵梨花はその発言が聞き間違いだと思って聞き返す。でも彼はそれを無視して私に歩み寄って来た。

「綾坂さーん」
「ああっ、待って。東薔薇様！」
いや、彼だけではない。同期男子も後輩男子も「マジか！」と叫びながら駆け寄って来る。取り残された絵梨花とお局と新卒女子は会場入口でぽつんと置き去りにされてしまった。

『主役は完全に花ね。あの絵梨花らの情けない顔ったら、うふふ』
『ララ様、今日はとことん見返してやります！』

皆に囲まれ、ちやほやされながら段取りの確認を済ませ、受付の準備に取り掛かった。

「ほんと、見違えるようだね。綾坂さん」
「主任、少々派手かと後悔してますわ」
「いや、似合ってる。魅力的だ」

東薔薇主任のエロい視線が気になるけど、それよりも扉の影から怨念のようなオーラを感じて気味が悪い。絵梨花がハンカチを噛み締めながら睨んでおいでなのだ。

「池園さんがチラチラ見てます。主任、花束贈呈のサプライズなど、ご説明なさった方が宜しいかと」
「ん……そうだな。行ってくるよ。君は専務の対応をお願いする。御登壇まで控室でお待ち頂こう」
「かしこまりました」

『ふふん。絵梨花ったら相当焦ってるようね』
『ララ様、まさか私が主任と親しく会話するなんて想像もしてなかったのでしょう』
『先制ジャブは効いたわね。お次はお局といこう』
『お局……ですか？』

しかし、彼女を懲らしめる材料ってあったかしら？