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第三章〜ご主人様を攻略致しますので〜

25. ご主人様は決意したのです

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 ※ブルクハルト視点

「エリク。王宮へ行く準備を頼む」

 城の執務室で僕の言葉に彼は呆然と立ち尽くしていた。

「……は?」
「む。言い方を変える。国王様に妻を紹介する」
「……は? お熱でもあるのですか?」
「至って健康だ。それと領民にも結婚したことを知らしめたい。パレードでもしようかと」
「い、いや、やっぱりお熱が」

 失礼にも彼は僕のオデコに手を当てる。

「伯爵様、平熱ですよ!」
「当たり前だ」
「では、頭でもお打ちになられたのでは?」
「どこも。いいか、僕は決意したのさ」
「けつい?」
「ディアナが教えてくれたのだ。領主たる者、苦手なものから逃げてはいけないとね」

 まだキョトンとしてるな。まぁ無理もないか。毎日彼女とダンスしてるうちに恋をした。今更ながらだが。妻なんだが。お陰で若い女性にも免疫がついた様だ。

「あの薬剤師を正真正銘な妻に?」
「ああ。だから準備を頼む。王都へ行くぞ」

 王都、という響きで彼の表情が徐々に緩んでいくのが分かった。

「それはそれはおめでとうございます。ついでに新婚旅行も兼ねて王都で観光しましょう。一月くらいはのんびりと。ええ。私もお供しますよー」

 いや王都はディアナの故郷だろう。観光も何も。単にお前が遊びたいだけではないのか? まぁいいか。そこら辺は彼女と相談しよう。


 ……こうして結婚パレードと国王様拝謁の準備が始まった。

 それと余談だが、城や屋敷の中も女性が自由に行き来できる様、本来の姿へ戻した。さて、後はディアナを本邸へ迎えなければならない。いつまでも別邸住まいではこれまでと何ら変わりないから。

 だがとてもタイミングが難しい。やはり国王様にご紹介した後がいいだろう。これはドミニクとセリアに準備を整えてもらおうか。ちょっとしたサプライズを仕掛けよう。

「で、伯爵様。夜会もご参加されるのですか?」
「ああ。そのためにレッスンしてるからな」

 僕は彼女に逢えるのがとても楽しみになっていた。夕方、いつもの時間に生薬を取りに別邸へ出向く。そして小さなホールでダンスをするのだ。屈託のない彼女の笑顔を毎日眺め、幸せな気分になる。実は生薬は余っていた。近頃は口にしなくても心が落ち着いてるのだ。取りに行くのはただの口実。彼女には内緒だが。

「それとな。ジョニーとも仲良くなったぞ」
「ジョニーって誰ですか?」
「別邸で飼ってるだ」
「……は? 猿? 大丈夫なんですか?」
「慣れたら可愛いものだ」
「す、凄いお変わり様ですね。あの薬剤師、いや失礼。奥様はどんな魔法をかけられたのでしょう」

 確かにディアナは魔法使いだ。そう思う。













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