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人事本部長の前で、直人は冷静にこれまでの経緯を説明していた。彼の姿はまるで『正義の使者』のようであり、直属の部長や課長たちの前でも堂々と話してる様子に感心した。私の心配は杞憂に終わるようだ。やはり、橘太郎には好ましくない勢力が存在してることがわかり、この不祥事を利用して彼を追い落とそうとする動きが垣間見えた。しかし、余談は許さない。橘がどう申し開きを行うかは明日にならないと分からないのだ。幸いなことに、人事本部長が味方なのは頼りになるが……
9月1日(金)
橘美咲と山本節子は連携して偽りの生理休暇を取得し、不在でした。
一方、森田課長は終日そわそわして落ち着きがありませんでした。時折、部長席に行って何やら話し込んでいました。
私は直人の上司で人事労政Grの課長に呼び出され、橘専務告発に関する事情聴取を受けました。また、私が美咲たちから受けたモラハラについても状況を聞かれました。
そして、橘太郎は社長兼CEOと面談し、何らかの話があったと思われます。
「ほーう。人事の対応が良くなってるわ。今までモラハラの訴えは無視されてきたけど、風向きが変わったようね」
自宅に帰って祝杯をあげながら、明日の予定を確認した。そして、今後のことを考えていた。それはダイアリーの処分についてのことだ。本体や長嶺さんの手記は私が手にしている。後の残骸は松本絵梨だ。彼女から山田の手記をもらえばダイアリーの原本が揃う。やはり、直人を入れて3人で燃やすのが一番良い結末だろうと思っていた。
「近くのお寺がいいかな。でもいつにしよう?」
早ければ明後日にできるけど、橘太郎をはじめとする美咲たちの顛末を見届けてからという思いもある。そうすると数ヶ月後になるかもしれない。もし、失脚しなかった場合はダイアリーに書き込むことも可能だ。焦ることはない。まずは松本絵梨に山田の手記を持って来させようと彼女にメールを送った。すると、会社では渡したくないとの返事が来て、週末に会う約束をした。そして、ついでにどさくさに直人を誘おうと心に決めた。
──と、その時だった。どこからともなく声が聞こえてくる。
「おいおい、燃やすなんてもったいない。もっと有効活用してくれないか?」
「ひぃっ……!だ、だれ!?」
恐怖に慄きながらも、振り返って周りを見渡した。私の部屋は誰もいないはずだし、鍵もしっかりと掛けている。
「こんばんは。干物女さん」
突然、目の前に黒づくめの男が現れた──
9月1日(金)
橘美咲と山本節子は連携して偽りの生理休暇を取得し、不在でした。
一方、森田課長は終日そわそわして落ち着きがありませんでした。時折、部長席に行って何やら話し込んでいました。
私は直人の上司で人事労政Grの課長に呼び出され、橘専務告発に関する事情聴取を受けました。また、私が美咲たちから受けたモラハラについても状況を聞かれました。
そして、橘太郎は社長兼CEOと面談し、何らかの話があったと思われます。
「ほーう。人事の対応が良くなってるわ。今までモラハラの訴えは無視されてきたけど、風向きが変わったようね」
自宅に帰って祝杯をあげながら、明日の予定を確認した。そして、今後のことを考えていた。それはダイアリーの処分についてのことだ。本体や長嶺さんの手記は私が手にしている。後の残骸は松本絵梨だ。彼女から山田の手記をもらえばダイアリーの原本が揃う。やはり、直人を入れて3人で燃やすのが一番良い結末だろうと思っていた。
「近くのお寺がいいかな。でもいつにしよう?」
早ければ明後日にできるけど、橘太郎をはじめとする美咲たちの顛末を見届けてからという思いもある。そうすると数ヶ月後になるかもしれない。もし、失脚しなかった場合はダイアリーに書き込むことも可能だ。焦ることはない。まずは松本絵梨に山田の手記を持って来させようと彼女にメールを送った。すると、会社では渡したくないとの返事が来て、週末に会う約束をした。そして、ついでにどさくさに直人を誘おうと心に決めた。
──と、その時だった。どこからともなく声が聞こえてくる。
「おいおい、燃やすなんてもったいない。もっと有効活用してくれないか?」
「ひぃっ……!だ、だれ!?」
恐怖に慄きながらも、振り返って周りを見渡した。私の部屋は誰もいないはずだし、鍵もしっかりと掛けている。
「こんばんは。干物女さん」
突然、目の前に黒づくめの男が現れた──
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