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しかし、私には2つの疑問が残った。まず、なぜ私にダイアリーを渡したのだろうか?このダイアリーは予言書として機能し、鉛筆で書き足すことで未来が変わるという事実や、印刷された文字が鉛筆で勝手に修正されている現象を、高橋直人はおそらく気づいていたはずだ。そんな危険なダイアリーを渡す意図は何だったのだろう?もしページを破ることで効力が消えるのであれば、それで問題は解決されたはずだ。
2つ目の疑問は、なぜ名前が消されていたのかということだ。果たして、それを消したのは誰なのだろう?

持ち主について尋ねる前に、彼にこれらの疑問を投げかけた。
「それは、貴女に未来を知ってもらい、上手に対処してもらいたかったのです。もちろん、書き足せば未来が変わることも予測してました。ただ、高野さんは常識のある人だと信じていましたから」
い、いや、私は聖人君子せいじんくんしでも何でもありませんよ!実際、お局に仕返ししたし、貴方をここに呼んだし……とは言えない。「確かにお役に立ちました」と言うのが精一杯だった。

「名前は──推測ですが、所有者が自ら消して証拠を隠滅したと思われます。消しても日記の印字は残っていますし」
「なるほど、よく理解しました。では、肝心の所有者ですが……」
「数日間、張り込みをしましたが、怪しい人物は現れませんでした。あのサテライトオフィスは予約が不要なので、使用者の特定もできません。しかし、ショールームに設置してある防犯カメラの解析結果から、ある人物が浮かび上がりました」
「カメラに映っていたのですか?」
「はい、何かを探すような動きを確認したのです。そのため調査を進めて、時間がかかりましたが人物を特定しました。筆跡と照らし合わせた結果、ほぼ間違いないと考えています」
「その人物は、いったい……」
私はコーポレートサービスGrの誰かだと推測していた。しかし──
「購買本部、部品調達Grの松本絵梨さんです」
「……え?」
誰だろう?思い浮かばない。全く知らない人だ。
「ご存知なさそうですね。彼女は高野さんと同期入社ですが」
「同期?」
正直言って、同期と言われても交流はない。
「確か、工場研修で一緒だったと思います」
「ああ、そうだったかもしれません。半年間の研修で、その人と接触したことがあるのかも……」
「彼女に恨みを買われている可能性がありますよ?」
「ごめんなさい。全く記憶にありません」
わけが分からない。購買部と総務部は別のフロアにあり、彼女との接点は皆無。メールのやり取りもない。同期で研修は一緒だったかもしれないけど、完全な他人と言っても過言ではない。松本絵梨なる人物からそこまでの悪意を向けられているとは思えないのだ。

「松本さんと、この件で接触しましたか?」
「いいえ、まだです。貴女に話をしてからと思っていましたので。ただ、一つの事実が分かりました」
「何ですか?」
「松本さんは貴女の職場の佐藤さんと親しい関係にあるようです」
「佐藤……拓也!」
同期のちょっとおバカなボンクラ男子だ。つまり、彼の指示で松本が動いていたってこと?

どういうことなの?どうすればいい?




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