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33.再会
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※ジェラール視点
──結局、眠れなかった。コンデションは最悪だ。だが、アニエスが居るとは限らない…よな?
そんな淡い期待をしながら支度を整える。ふと、セーターが目に入った。今朝は肌寒いから丁度良い。などと思ったが、袖を通すのは何となく恥ずかしい。
コン、コン。
あ、バルナバだ。もう来たのか。気の早いやつだ。
「おはようございます。あれ?セーター着ないのですか?」
「えっ?」
何だ、こいつは。開口一番、私が気にしてることをズケズケと!
「き、着た方が良いのかな?」
「勿論です!アニエス様にお見せしないと!」
その瞬間、私の淡い期待は露と消え失せる。
やはり、彼女は居るんだ。ああ、ついに面と向かって話をしなければならないのか…?
『落ち着け、これは公務だ。冷静になれ!』
そう自分に言い聞かせて、やむなく出発した。
パカッパカッと白馬に跨った私は、多くの役人を引き連れ視察に向かう。大礼服ではないが、パールホワイトの制服でブラウンのセーターが垣間見える、それなりの正装だ。
「殿下、こんなに役人をぞろぞろ引き連れて…」
「うん?土地の区画を決めるんだ。専門家や担当の者が必要だろう?」
「まあ、そうですが」
と言うか、私一人では心細かったのだ。バルナバ、そこは察してほしいぞ。
さて、屋敷が見えてきたな。一人、二人…五人も居る。いよいよか。
「説明は誰がするのだ?」
「アニエス様に決まってるでしょう?」
「そ、そうか」
お前が上手く立ち回ってくれ。そうココロの中でバルナバに言ってみる。だが、それはかなりの危険を伴うだろう。そんな予感がした。
「アニエス様ー、殿下がお越しになられましたよー!見て見て、あのセーター着てますよー!」
こ、こいつ…!いきなり余計なことを!
屋敷の前で一礼するアニエス、コリンヌ、ベルティーユ、ソフィア。そしてブリスが居た。
ブリスが居るとプレッシャーになるな。いや、もう観念しろ。私は領主として来てるんだ。これは公務だ。堂々と振る舞え!
「久しぶりだな、アニエス」
意外と冷静な自分に驚いてる。彼女の目をしっかり見て、口にした。
「ジェラール様…」
彼女は言葉が詰まった様だ。私たちは幼馴染。十年ぶりの再会ではあるものの、立場は領主と罪人なのだ。恐らく気まずいのだろう。
「セーター、ありがとう。大事にするよ」
彼女が少し不憫に思えた。思わず、優しい言葉をかけてしまう。
「わたくし…あの…」
ん?泣いてるのか?これは予想外の展開だぞ?私はどうすればいいのだ?
「わー、アニエス様、感激してるんですね?殿下、説明はソフィアにして貰います」
「う、うむ」
ナ、ナイスフォロー、バルナバ。お前にしては機転が利くじゃないか。
その場にアニエスらを置いて、バルナバ、ソフィアに先導されながら、牧場の敷地内へと入って行く。
私はアニエスが気がかりだった。彼女は何かを訴えたいのかもしれない。自身の罪について、話を聞いて欲しいのではないだろうか?
もはや、そのことで頭が一杯だ。
「なあ、バルナバ。日を改めてアニエスと面談しよう」
王都で何があったのか知りたい。そして、私に出来ることはないのか?彼女のチカラになりたい。
──そう思った。
──結局、眠れなかった。コンデションは最悪だ。だが、アニエスが居るとは限らない…よな?
そんな淡い期待をしながら支度を整える。ふと、セーターが目に入った。今朝は肌寒いから丁度良い。などと思ったが、袖を通すのは何となく恥ずかしい。
コン、コン。
あ、バルナバだ。もう来たのか。気の早いやつだ。
「おはようございます。あれ?セーター着ないのですか?」
「えっ?」
何だ、こいつは。開口一番、私が気にしてることをズケズケと!
「き、着た方が良いのかな?」
「勿論です!アニエス様にお見せしないと!」
その瞬間、私の淡い期待は露と消え失せる。
やはり、彼女は居るんだ。ああ、ついに面と向かって話をしなければならないのか…?
『落ち着け、これは公務だ。冷静になれ!』
そう自分に言い聞かせて、やむなく出発した。
パカッパカッと白馬に跨った私は、多くの役人を引き連れ視察に向かう。大礼服ではないが、パールホワイトの制服でブラウンのセーターが垣間見える、それなりの正装だ。
「殿下、こんなに役人をぞろぞろ引き連れて…」
「うん?土地の区画を決めるんだ。専門家や担当の者が必要だろう?」
「まあ、そうですが」
と言うか、私一人では心細かったのだ。バルナバ、そこは察してほしいぞ。
さて、屋敷が見えてきたな。一人、二人…五人も居る。いよいよか。
「説明は誰がするのだ?」
「アニエス様に決まってるでしょう?」
「そ、そうか」
お前が上手く立ち回ってくれ。そうココロの中でバルナバに言ってみる。だが、それはかなりの危険を伴うだろう。そんな予感がした。
「アニエス様ー、殿下がお越しになられましたよー!見て見て、あのセーター着てますよー!」
こ、こいつ…!いきなり余計なことを!
屋敷の前で一礼するアニエス、コリンヌ、ベルティーユ、ソフィア。そしてブリスが居た。
ブリスが居るとプレッシャーになるな。いや、もう観念しろ。私は領主として来てるんだ。これは公務だ。堂々と振る舞え!
「久しぶりだな、アニエス」
意外と冷静な自分に驚いてる。彼女の目をしっかり見て、口にした。
「ジェラール様…」
彼女は言葉が詰まった様だ。私たちは幼馴染。十年ぶりの再会ではあるものの、立場は領主と罪人なのだ。恐らく気まずいのだろう。
「セーター、ありがとう。大事にするよ」
彼女が少し不憫に思えた。思わず、優しい言葉をかけてしまう。
「わたくし…あの…」
ん?泣いてるのか?これは予想外の展開だぞ?私はどうすればいいのだ?
「わー、アニエス様、感激してるんですね?殿下、説明はソフィアにして貰います」
「う、うむ」
ナ、ナイスフォロー、バルナバ。お前にしては機転が利くじゃないか。
その場にアニエスらを置いて、バルナバ、ソフィアに先導されながら、牧場の敷地内へと入って行く。
私はアニエスが気がかりだった。彼女は何かを訴えたいのかもしれない。自身の罪について、話を聞いて欲しいのではないだろうか?
もはや、そのことで頭が一杯だ。
「なあ、バルナバ。日を改めてアニエスと面談しよう」
王都で何があったのか知りたい。そして、私に出来ることはないのか?彼女のチカラになりたい。
──そう思った。
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