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第3章 逆転ざまぁだーー!!

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 闇夜の中、月の光を頼りに階段を登っていく。誰にも見られてない事を確認し、シェリーの部屋へ入った。

 彼女はポピーと会うのを嫌がっている様だ。気まずいからだろう。しかし何時迄もこのままではいけない。ポピーも恨みを果たした筈だ、ここで仲直りするべきだと説得した。

 やがてポピーが予定よりやや遅れて現れた。

「誰にも見つかってないか?」

「大丈夫です」

 シェリーは下を向いたままだった。ここは私が間を取り持たないとならない役目である。

「シェリー、ポピーが会いに来たぞ」

「う、うん…」

「もう恨みっこはなしだ。安心しろ。彼女は文句を言いに来たんじゃない。何か聞きたい事があるそうだ。な、ポピー」

「ええ、…ね、シェリー」

「なに?」

「本当の事を言って。王子様が好きだったのでしょう?」

「…え」

「ポピー、聞きたい事ってそれか? もういいんじゃないのか?」

 シェリーは元婚約者の立場だ。流石に新たな婚約者の前で本音は言いづらいだろう。

「わたくしはずっと貴女を恨んでました。でも、お兄様から言われて今、迷っています…実は思い当たる節があるの」

「何の話だ?」

「ミーア様の事よ」

「彼女がどうかしたの?」

 シェリーが反応を示した。

 確かミーアってシェリーが虐めた女生徒だったよな。

「彼女は王子様の愛人じゃありません。お側に仕える護衛です」

「えっ⁈ そう…なの?」

「はい。彼女は訓練された兵士だったのです。だから貴女に態と虐められる役をされていました。時には挑発までして…」

「ポピー、どう言う事だ?」

「わたくしは王子様に呼ばれ、婚約破棄の協力を求められていました。その時、ミーア様の事を知ったの」

「何だって⁈ 協力を⁈」

 やはりポピーは王子と繋がっていたんだ。

「つまりミーアはシェリーを悪役令嬢に仕立てる為、言わば罠に嵌める為、王子が呼び寄せた兵士だったと言うのか?」

「恐らくそうです。エミリーも然り、そんな陰謀めいた真似をする王子様に不安を感じます。ちょっと恐ろしいです」

「なあポピー、協力とは具体的に何だ? 何を要求されたんだ?」

「シェリーに婚約破棄を意識させてほしい。それと彼女に何か問題はないか? …と」

「で…?」

「アルコール依存症のお話をさせて頂きました。わたくしは王子様の力になりたかったのです。でも今思えば、それが正しかったのか…」

 シェリーはポピーの方へ近づき、はっきりと言葉に表した。

「わたくしは王子様と婚約を交わした時からでした。…でもね…でもね…うう…うっうっうっ…」

 シェリーはポピーの肩にすがって涙を流す。

「わたくしでは…駄目なの…彼は…ポピーじゃないと…。分かっていたの…だから苦しかった…。貴女にも辛く当たった…ごめんなさい」

「シェリー、もっと素直に言ってくれれば良かったのに…」

 ポピーもシェリーの肩に手をかけ涙を零した。そしてお互い抱き合って泣いた。

「わたくしこそ、ごめんなさい。…貴女を陥れようとしてたの…」

 ポピーは嗚咽しながらシェリーにそう伝えた。






 


 



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