50 / 61
第2章 何故、わたくしを!?
50
しおりを挟む
※ジャック視点
卒業パーティーで王子は動いた。
打ち合わせ通り、シェリーをダンスに誘う。この時点で影武者かどうかの判断はつかない。私ですら踊ってみないと分からないのだ。しかし予測はついていた。皆の前でステップを踏むから、ここは影武者でないと対応できないだろう。
それが分かった上で…、
「シェリー公爵令嬢との婚約を破棄させて頂く!! 皆の前で声高らかに宣言しよう!!」
王子は言い放った。ポピーが自白するのを促してる様にも見える。
「はーっはははははははははははっ!! これは何の余興ですかな、エリオット王子?」
やはり父が黙っていない。豪快な笑い声とは裏腹にお怒りの形相だ。
「シェリー、お前も何か言いなさい。王子の発言、場合によっては侮辱罪で訴えても構わん!」
ところが…、
「お父様、いえ、御主人様…まだお分かりになりませんか? わたくしは使用人のポピーでございます」
彼女は自らカミングアウトしたのだ。
「はは…は…。シェリー、どうしたのだ、何故そんな見えすいた嘘をつく?」
「シュルケン公爵、これは本当の事だ!」
王子は自信満々に言い切った。
「馬鹿な…? 何を突拍子のない事を…王子、いくら貴方でも許しませんぞ。それにシェリー、お前まで…そんな話、誰が信じると言うのかっ⁈」
さて、そろそろ私の出番だ。ポピーが自白したのは予想外だったが、かえって彼女の発言によって父を説得し易くなったのは間違いない。
「お父上様、このジャックはとっくに気がついていましたよ」
「ジ、ジャック⁈ えっ? お前まで…⁈ ま、まさか、まさか…⁈」
「はい。ポピーはシェリーの影武者です」
父は空いた口が塞がらない。暫くポピーとシェリーを見比べていた。しかし私は父に信頼されている。だからこの証言が真実だと悟るのに時間は掛からなかった。
「ほ、本当なのか、ジャック…ああ、お前がそう言うのならこの娘は使用人だろうな…何てこった…信じられない」
そして狼狽した父を王子は見逃さず、トドメを刺した。
「シュルケン公爵、この罪は大きいぞ。皇族である僕を騙し、世間を騙した。このまま彼女と結婚など出来る筈もない!!」
「……は…。も、申し訳…あ、ありませ…ん」
父はうなだれた。完全に敗北だ。そして全ての元凶だと思われるシェリーを睨みつけた。そこから彼女の断罪が始まった。生徒、教員、父兄の居る前で、それは酷いほどに…。
「この馬鹿モノーーッ!! お前と言うヤツは! お前と言うヤツはっ!」
面子を潰された父が何度も何度もシェリーを叩く。私は思わず止めに入った。鼻血を垂らし悲痛な表情と共にカラダが震えている妹をこれ以上、見てられない。
「もういいでしょう…」
***
エリオット王子はシェリーの貴族院卒業の取り消しとポピーの卒業を認めさせた上、公爵家の養子にしてポピーと結婚すると言う、とんでもない案を父に呑ませる事に成功した。でないとシュルケン公爵家がどう処分されていたか分からなかった。
恐らくこの件で我が公爵家の信頼は地に落ちていくと思う。権勢を誇っていた時代は終わるのだ。皇室には二度と逆らえないだろう。
しかし、私は釈然としないものがある。それが何なのか? 事の真相を突き止めなければならないと、そう感じていたーー。
卒業パーティーで王子は動いた。
打ち合わせ通り、シェリーをダンスに誘う。この時点で影武者かどうかの判断はつかない。私ですら踊ってみないと分からないのだ。しかし予測はついていた。皆の前でステップを踏むから、ここは影武者でないと対応できないだろう。
それが分かった上で…、
「シェリー公爵令嬢との婚約を破棄させて頂く!! 皆の前で声高らかに宣言しよう!!」
王子は言い放った。ポピーが自白するのを促してる様にも見える。
「はーっはははははははははははっ!! これは何の余興ですかな、エリオット王子?」
やはり父が黙っていない。豪快な笑い声とは裏腹にお怒りの形相だ。
「シェリー、お前も何か言いなさい。王子の発言、場合によっては侮辱罪で訴えても構わん!」
ところが…、
「お父様、いえ、御主人様…まだお分かりになりませんか? わたくしは使用人のポピーでございます」
彼女は自らカミングアウトしたのだ。
「はは…は…。シェリー、どうしたのだ、何故そんな見えすいた嘘をつく?」
「シュルケン公爵、これは本当の事だ!」
王子は自信満々に言い切った。
「馬鹿な…? 何を突拍子のない事を…王子、いくら貴方でも許しませんぞ。それにシェリー、お前まで…そんな話、誰が信じると言うのかっ⁈」
さて、そろそろ私の出番だ。ポピーが自白したのは予想外だったが、かえって彼女の発言によって父を説得し易くなったのは間違いない。
「お父上様、このジャックはとっくに気がついていましたよ」
「ジ、ジャック⁈ えっ? お前まで…⁈ ま、まさか、まさか…⁈」
「はい。ポピーはシェリーの影武者です」
父は空いた口が塞がらない。暫くポピーとシェリーを見比べていた。しかし私は父に信頼されている。だからこの証言が真実だと悟るのに時間は掛からなかった。
「ほ、本当なのか、ジャック…ああ、お前がそう言うのならこの娘は使用人だろうな…何てこった…信じられない」
そして狼狽した父を王子は見逃さず、トドメを刺した。
「シュルケン公爵、この罪は大きいぞ。皇族である僕を騙し、世間を騙した。このまま彼女と結婚など出来る筈もない!!」
「……は…。も、申し訳…あ、ありませ…ん」
父はうなだれた。完全に敗北だ。そして全ての元凶だと思われるシェリーを睨みつけた。そこから彼女の断罪が始まった。生徒、教員、父兄の居る前で、それは酷いほどに…。
「この馬鹿モノーーッ!! お前と言うヤツは! お前と言うヤツはっ!」
面子を潰された父が何度も何度もシェリーを叩く。私は思わず止めに入った。鼻血を垂らし悲痛な表情と共にカラダが震えている妹をこれ以上、見てられない。
「もういいでしょう…」
***
エリオット王子はシェリーの貴族院卒業の取り消しとポピーの卒業を認めさせた上、公爵家の養子にしてポピーと結婚すると言う、とんでもない案を父に呑ませる事に成功した。でないとシュルケン公爵家がどう処分されていたか分からなかった。
恐らくこの件で我が公爵家の信頼は地に落ちていくと思う。権勢を誇っていた時代は終わるのだ。皇室には二度と逆らえないだろう。
しかし、私は釈然としないものがある。それが何なのか? 事の真相を突き止めなければならないと、そう感じていたーー。
0
お気に入りに追加
260
あなたにおすすめの小説
王女の影武者として隣国に嫁いだ私は、何故か王子に溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
王女アルネシアの影武者である私は、隣国の王子ドルクス様の元に嫁ぐことになった。
私の正体は、すぐにばれることになった。ドルクス様は、人の心を読む力を持っていたからである。
しかし、両国の間で争いが起きるのを危惧した彼は、私の正体を父親である国王に言わなかった。それどころか、私と夫婦として過ごし始めたのである。
しかも、彼は何故か私のことをひどく気遣ってくれた。どうして彼がそこまでしてくれるのかまったくわからない私は、ただ困惑しながら彼との生活を送るのだった。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
婚約破棄されたのたが、兄上がチートでツラい。
藤宮
恋愛
「ローズ。貴様のティルナシア・カーターに対する数々の嫌がらせは既に明白。そのようなことをするものを国母と迎え入れるわけにはいかぬ。よってここにアロー皇国皇子イヴァン・カイ・アローとローザリア公爵家ローズ・ロレーヌ・ローザリアの婚約を破棄する。そして、私、アロー皇国第二皇子イヴァン・カイ・アローは真に王妃に相応しき、このカーター男爵家令嬢、ティルナシア・カーターとの婚約を宣言する」
婚約破棄モノ実験中。名前は使い回しで←
うっかり2年ほど放置していた事実に、今驚愕。
【完結】婚約破棄はいいのですが、平凡(?)な私を巻き込まないでください!
白キツネ
恋愛
実力主義であるクリスティア王国で、学園の卒業パーティーに中、突然第一王子である、アレン・クリスティアから婚約破棄を言い渡される。
婚約者ではないのに、です。
それに、いじめた記憶も一切ありません。
私にはちゃんと婚約者がいるんです。巻き込まないでください。
第一王子に何故か振られた女が、本来の婚約者と幸せになるお話。
カクヨムにも掲載しております。
神の子の影武者になりました!
夕立悠理
恋愛
──貴女はとても幸福な子なの
魔法が発展した国バベル。その魔法は神からの恩恵であり、盟約でもあった。その国では盟約に基づき、千年に一度、神の子が生まれる。
これは、そんな国で、神の子と同じ日にそっくりな見た目で生まれてきてしまった少女の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる