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みんな襲われてるのに、どうやら俺は相手にされてないようだ。

17. カッコいい

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「た、助けてくれえー!」

 市民課のフロアーから男どもの悲痛な声が聞こえる。数匹のマァンティスに追い詰められ、彼らはなす術もなくしゃがみ込んでいる様だ。

 その周りを戦戦恐恐とたたずむしかない女性職員らがいた。

「青葉さん」
「ああ、ここは任せろ」

 すっかり自信のついた俺は、眩い光を放つ“日本刀”を握りしめ、ゆっくりマァンティスに近づく。

「あ、貴方は?」
「青葉高文……こいつをやれる男だ」
「えっ? ちょっと危ないですよ!」

 心配する女の声を振り切りフロアーへ入る。

 不意な俺の登場でヤツらはギィ、ギィと慌てふためき、その場から逃げようとする動きを見せた。

「逃すかあー」

「「「ザクンッ、ザク、ザクーンッ!」」」

 縦、斜め、横と緑色の胴体を真っ二つに切り裂いた。そして刀を振り切った姿勢のままで余韻を味わってみる。

 俺、超カッコいいかも……!

 女性職員をかなり意識してしまったが、目の前でマァンティスを斬った衝撃に言葉も出ない様だった。

 ありゃ、驚いてるだけか。つまらん。

 それからもみこと手分けして市役所のフロアー全てを回り、ヤツらを見つけては斬りまくった。

「上様は屋上かしら?」
「そうだな、もうそこしかない。行ってみよう」

 二人で屋上へ上がると富士山を見つめる信長の姿を捉えた。

「上様!」
「む、……クィーンに逃げられた」
「それは残念でございます」

 だ か ら、“クィーン”って何だ? 

「しかし、富士の樹海へ飛んでいった。やはりあそこが大巣窟じゃ。間違いないわ!」

 はっはっはっはっ……と、初めて信長の笑う声を聞いた。
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