みんな襲われてるのに、どうやら俺は相手にされてないようだ。

みんな襲われてるのに、どうやら俺は相手にされてないようだ。

３. 鉢合わせ

　街路樹のある歩道をひたすら走ってると脇道から男の悲鳴が聞こえ、思わず立ち止まってしまう。なんと数匹のマァンティスが逃げ惑うおっさんらに襲いかかっていたのだ。しかも俺の存在までヤツらに気づかれてしまった。

　……っ、いかん、最悪の鉢合わせだ。巻き込まれる。

　化学防護服と防毒マスクで防御した三人のおっさんは、既に抵抗したのかボロンボロンだ。対し、マァンティスは八匹がかりでピンクの毒霧を吹きつけている。あっという間におっさんらはぐったりして、三匹のマァンティスに連れ去られていった。

　残る五匹が一斉に俺を見る。

　こ、今度こそ確実に襲われるっ。ここは息を止めて逃げるしかない！

　そう決心し、タイミングを図っていた。

　ーーが、

　大きな触覚をピクピクさせながら、じりじりと近づくマァンティスの動きが急に止まった。そして一斉にプイっと横を向いて飛び立っていったのだ。

　は？　は？　まただ。何故襲わない？　俺を成人男性と認識してないのか？　まさか女とでも？　いやいや、どっからどう見ても俺は男だ。じじぃでも子供ないぞ。

　意味わからん。俺は相手に……されてないのか？

　しかし、またしても助かったのだ。拍子抜けしたけど、生きてると実感したら腹が減ってるのを思い出し急いでスーパーへ向かった。