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第三部

27. お手つきの巻⑩

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翌日から私の秘密特訓が始まった。誰にも見られないように、自分のお部屋で姉にしごかれる。厳しい指導に心が折れそうになるけど、股間が少し痛むのを庇って歩くのが、かえっていい感じになっていたのです。

「まあまあ、形になってるじゃない」
「はあはあ、そうですか……」
「ところでへクセ様だっけ?あの御方が序列から言ってアンタの後ろを歩く事になるけど大丈夫?」
「どう言う意味ですか?」
「だから、足を引っ掛けられないかって」
「それは大丈夫と思います」
今ではすっかり私を立てて、黒魔術を教えて貰ってるのです。彼女もウォーキングの事が心配で根掘り葉掘り聞いてくる。「何ならもう一度、見ましょうか」とも言ってくれるけど、丁重にお断りしてるのです。
「そう。じゃあとは、紹介された時の自己アピールね」
あのね、そんなスターみたいなアピール無理だって!とにかく全体練習までにウォーキング出来る様に仕上げないといけないのよ。でないとグレース組に迷惑掛けてしまうわ!
私も超必死です!
「お姉様、もう一度お願いします!」

***

こうして特訓を積み重ね、全体練習が明日に迫った夕刻の頃だった。突然アメリアが迎えに来られ、またしても私は御夜伽を勤める事になったのです。
「全く、貴女って人は奇跡のお手つきさんね。側妃を差し置いて……」
グレースやライラは呼ばれないのに私だけって言うのが気になるけど、殿下のご指名なので致し方ない。それに行進の前に股間を痛めるのは好都合です。つか、本当は彼に逢いたい気持ちで一杯でした。

「やあ、ポピー。行進の練習はどうだい?」
「ええ、まあ……あ、そうだ。お願いがあるの」
「何かな?」
「宮廷行列の前日に御夜伽したいの」
「前日?どうして前日なんだ?」
「いえ、その……」
まさか、股間が痛いとウォーキングが上手く行くとは言い難い。
「緊張が解れる……かなって」
「ははは、ポピーでも緊張するんだ」
「緊張します!」
だって気を抜くと『おっさん歩き』になるんだもん。
「分かったよ。でも半月も会えないのは我慢出来ないから、それまでにまた呼ぶと思うよ」
「まあ、エリオット様ったら……」
「あ、そうだ。今度は乗馬しよう!」
「あ、それイイ!フィガーに乗りたいよう!」
あー、彼と逢ってると心が和むうーー。ずっとこうしていたいな。
そして私たちは愛し合いました。──が、
「いったーーいっ!死ぬぅーー!」
今日も死ぬほど痛かったです。全然慣れません。
あ、そう言えば。
私はベッドの上で殿下に気になっている事を聞いてみた。
「あの、お伺いしたい事があります」
「ん?なに?」
「えっと、他のご婦人は抱かないのですか?」
「えっ⁉︎何を聞いてくるのかと思ったら。まあ、そうだね。抱かない、と言うか抱く気がない」
「でも、グレース様とかライラ様は側妃ですけど」
「うん、そうだね。でも彼女らは僕の、その何と言うか、性の指導員だったと言うか……」
「ええっ⁉︎殿下の初めての人なんですか⁉︎」
「そうだよ。僕が16歳の頃だから10年前の話だ」
「じ、10年前……じゃ、あの御方たちは幾つなんですか⁈」
「グレースは今、42歳。ライラは39歳かな」
「ど、どおりでオバさんなんだ!」
「オバさんって酷い事言うな。当時は夢中だったんだよ。ははは」
「あ、ごめんなさい。つい」
つか、僅か16歳の皇太子に、その倍の年を重ねた32歳のグレースが性の手ほどきをしたって事よね。ライラはその時29歳か……。今では全く御夜伽に呼ばれもしない。
「私の10年後も同じ運命なのかもしれないわ」
「ポピーはずっと大事にするよ」
「オバさんになったら若い子に夢中になるんじゃないの⁉︎」
「いや、そんな事はないさ」
本当かしら。怪しいな……。その前に後宮なんかぶっ壊さないといけないわね!

お父様、後宮に勤めて3ヶ月半経ちましたが、今が一番幸せなのかもしれません。私は皇太子様の寵愛を一心に受けたいです。そんな野望が芽生えてしまいました。
 












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