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第 23 話

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「もし、俺がこの世界にいけたら、アルフ様のこと死ぬまで愛してやるのに。」




 ーーこれは、俺の記憶か。


懐かしいな。あの頃の俺の世界には隼人しかいなかったから、隼人の話を俺が永遠に聞いていたっけ。隼人と話すのは楽しかったな。


 あの時、いつにも増して真面目な顔でアホなことを言う隼人には笑わされたが、俺がその話に突っ込めば隼人がまたアルフの良さを俺が寝落ちするまで語られるのは目に見えてたからその日は返さなかったんだ。




「あれ、兄さん?いつもなら笑いながら突っ込んでくるのに。どうかしたの?」


「いや、突っ込んだら、寝落ちするまでアルフ、様?のことを語るだろう?お前は。」


「えぇ~?兄さん聞いてくれないの~?俺には兄さんしかいないのにぃ」


「はは、大袈裟な。いいだろう、聞いてやるから俺に興味持たせてみろよ」


「言ったな!絶対後でこのゲームやりたくなってるからッ!!」




 大口を叩く割には、この後、隼人のほうが早く寝落ちしたんだよな。アルフの良さを目をギラギラさせながら語っているのに、徐々に目がトロンとしていった隼人は可愛かったな。弟補正かもしれないが。


はは、こんな幸せな記憶、なんで思い出したんだろう。こんな記憶、辛くなるだけじゃ、ないか。


 ーーもう、隼人との時間は戻ってこないんだから。


なんで俺、隼人のことを残して死んじゃったのかな。俺には隼人しかいなかったように、隼人にも俺しかいなかった。俺が死んだら隼人は幸せになんか、なれないんじゃないか。まあ、俺が死んだあと、隼人が幸せならいい、というわけでもないだが。


 俺がいないのに、幸せになる隼人なんか見たくない。共依存なのは分かってる。でも、ダメなんだ。どうしても、俺のいないところで隼人が何かしているのが耐えられなかった。


俺は別に隼人のことを恋愛感情として好きなわけじゃない。俺が生きているなら、隼人が結婚して子供が出来て、幸せになってくれたって良かったんだ。というか、それが良かった。そうなって欲しかった。


 隼人の幸せは勿論、俺の幸せ。けど、俺には隼人しかいないから。隼人も俺しかいないで欲しかった。


隼人だけは俺から奪わないで。始まりはそんな子供心だったんだ。俺の両親を奪ったモノに、俺の弟だけは、どうしても奪って欲しくなかった。それがだんだんと依存へと変わり、気付けば、隼人がいないと生きていけなくなっていた。



「兄さん、好きだよ。俺の手、絶対離しちゃダメだからね?」




 ーー離して、ごめんな。ダメな兄さんで…ごめんな。


 急に深いところにあった意識が浮上し出す。どうやら、この夢ももう醒めるみたいだ。大好きな俺の弟の夢。少し、いや、かなり残念に思う自分がいる。このまま、醒めなければいいのに。そう思ってしまう自分が。


 はは、少し昔の俺に引きずられすぎたかな。…いろいろ考えたけど、結局、俺は隼人が幸せになるところを見たかった、それだけなのかもしれない。そう考えれば、いくらか気持ちが軽くなる。


 ーー俺はもう前を向く。向かなければいけないんだ。レイやルーシュ、神様だって、俺を信頼してくれている。もう、俺は隼人がいなくても、一人じゃないんだ。


ここで、区切りを付けよう。前の世界への、隼人への未練はここに置いていく。俺はもうこの世界で、として生きていくしかないんだ。
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