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第 22 話

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« ルーシュ視点 »






 アルフの笑顔は、艶かしい程に美しかった。


 急にこんなことを言い出せば、俺の主…いや、アヴィ様は俺がおかしくなってしまったのではないかと、そう考え本気で心配するだろう。


それもそのハズ。俺はアルフが大嫌いし、大嫌いなことはアヴィ様にはこれでもかと言うほど言った。俺は媚びの売るアルフが心底気持ち悪く、うざったく感じていたからだ。


けど、アルフが生死を彷徨ったあの池へ落ちた事件からのアルフの態度はどうだ?あの新しい従者…レイのことを命懸けで助けたり、俺にも一切ベタベタしなくなったし、なにもかも一人でやるようになった。


 そのうち、レイはアルフの従者になる、とそう言った。だから従者としての仕事を教えてくれ、と。


 アルフは今まで仕えている人間が俺しかいなかったから、今までアルフのことは全て俺がやっていた。それは物凄い苦痛で、本気で辞めようかと思ったことが何度もあったぐらいには嫌だった。


けど、レイに教えてくれ、と言われた時、不意にと思ってしまった俺がいた。はは、何故だ?俺は死ぬほど嫌がっていたじゃないか。


そう思いながらも、俺はアルフが嫌いだから。そんな謎めいた暗示のようなモノを自分にかけながら、レイに従者の仕事を教えた。少々手荒くなってしまったのも、無意識だった。


 …この気持ちに気付きたくなかったんだろう。俺が、アルフを好きだなんていう、この気持ちに。


 レイがアルフの従者になるのを嫌だと思ってしまったのも、レイに対してキツく当たってしまったのも、ふとした時にアルフを目で追ってしまった事も。少し考えれば、それは俺がアルフのことを好きだからだろう。


 どこに惹かれたかなんてもう分からない。アルフの顔?仕草?行動?もうそんなものどうでもいいほど好きなんだ。アルフがいればなんでもいい。そう思えてしまうほどには。


 少し、長くアルフとはいすぎた。いくら嫌いでもずっと一緒にいれば情は移るし、それも俺好みのストイックで優秀、他人に踏み込ませないが心を開けば自分の内を全て見せてくれる。そんな人にアルフがなれば、好きになってしまうのも無理はない。


 そんなアルフのパーティー会場で醸し出していた雰囲気。それはもう素晴らしかった。周りにいる人達を圧倒し、魅了する。そんな雰囲気。


 アルフにワインをかけた平民の女。


 アルフにワインをかける。それだけで死に値する。俺の愛するアルフになにをしているのか。それどころかアルフに近づこうとする女。レイと一緒のタイミングで飛び出そうとしたが。


それは、アルフ自身が女に氷の刃を向けたことにより、達成させることはなかった。


 少し固まっていたレイと俺だったが、苦しそうなアルフを見て、即座に行動する。俺はアルフをレイは女共の対処を。


俺がアルフを支えてやると、かなりアルフの身体は熱を持っていた。ワインをかけられた服をそのままに、氷魔法なんて使うからだろう。熱が出ているのかもしれない。早く別室に運ばなくては。そう思うが、男の登場でそれは叶わなかった。


 なかなか挨拶を言い出さない女共に痺れを切らしたのか、それこそ最上級の挨拶を披露するアルフ。もちろん、俺とレイの挨拶もアルフがした。…ていうか、リリーとアルフが兄妹なのばれたな。どうしよ。


 そんな考えはすぐに切り替わる。なんと馬鹿王子がアルフを捕らえるよう命令したのだ。本当に馬鹿かコイツは。この公的な場所でのその命令はお前自身もアルフもいらない目で見られるようになるだけなのに。


 この馬鹿王子がどう見られようがどうでもいいが、アルフは違う。…殺してやろうか、この王子。しかもアルフは今、熱がある。理に叶った提案だったし、アルフが捕まる理由がない。本当にふざけるなよ。レイも同じようなことを考えているらしく、王子を睨んでいる。いいぞ、もっとやれ。


 ふと、前から視線を感じた。


それはアルフからのものでレイそして俺を見てからアルフは俺達に笑顔を見せた。そうして、それを俺とレイに不思議に思わせる時間もなく…


 ーーー倒れた。




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