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第 21 話

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 待って。何この静寂。え?俺そんなダメな事した?そりゃあ、身分が一番高いのに最初に挨拶したけどさぁ?それは仕方なくね?だってコイツらリリー達話さないんだもん。


 ーーー。気不味い。ありえないぐらいに気不味い。…おい、誰だ今息飲んだやつ。そんな緊迫した場面じゃないだろうが。俺をこれ以上緊張させるな。吐くぞ。


 これは俺が対処しなきゃいけないのか?ただでさえ、具合悪くて死にそうだっていうのに。本気でここにいる奴らは俺を殺したいらしい。




「…殿下。発言の許可を頂いても?」


「いいだろう。…君の妹は挨拶も出来ないらしいが。」


「ッレオナード様!」




 んなもん知らねぇ!ぶち殺すぞ!…いけない、いけない。また俺の意志とは無関係にヤバい言葉が俺の口から出ようとしていた。


 …ん?そういえば、リリーって俺のこと知らないような感じだったよな?の記憶を照らし合わせてもリリーに会ったことないし…


あれ。これ、もしかして。俺とリリーって今日が初対面でお互いのこと兄妹だって知らない感じ?


 うわ。今一番ヤバいことに気付いてしまった。リリーと俺って兄妹っていう認識ないのか。俺はゲームの知識で知っていたが。仕方ない。ここは知ってる設定で乗り切るしかない。あとでレイに問い詰めてもらおう。




「レオナード様、婚約者である私にそのような…ッ」


「口を慎め、リリー嬢。いくら貴女が殿下の婚約者だとしても、場所を考えろ。…殿下、このような騒動を起こした私が言うのは場違いだと痛感しておりますが、今、彼女らは混乱しております。この場で話を聞こうともまともな話は出ないでしょう。もうすぐ陛下も御到着なされます。どうかこの話は後に回させて頂けないでしょうか。」


「お前…ッ、コイツの味方をするのか…ッ!いや、お前に発言させた俺が馬鹿だった。おい、ルーカル。コイツを捕えろ!パーティーにはもう出させない。別室にでも放り込んでおけッ!!」




 レオナードのその言葉が終わる頃には俺の両脇にレオナードの騎士であるらしき人が二人、俺の腕を掴んできた。…あ、これ俺あと五分保てばいい方だな…死ぬ…


 本当にレオナードはアホなのだろうか。俺が彼女達、という言い方をしたのが気に食わなかったんだろう。そこに、リリーが含まれていたから。どれだけ婚約者が嫌いなんだ。おかしいだろ、リリー本当にお前は何をしたんだ?


 はは、挨拶も碌にしない奴らには何の罰も与えず、発言の許可を取ったのにも関わらず、俺を強制的に捕える。正直、殿下のやっていいことじゃない。…ていうか、普通にムカつく。なんだアイツ。


レイとアーシュは後ろから俺に付いてきてくれているようだ。うん。レイ、その殺気はレオナードに向いているな?流石に不敬罪免れないから止めておけ。まあ、少しざまぁと思った俺は止めておけと心に思うだけで止めないけどな。


 あー、もうダメだ。ルーシュ、レイ。もしこの二人が手を離したら俺は倒れることになるから会場を混乱させない程度に俺のことを別室に運んでくれ。


 最後の力を振り絞りながら、そんな願いを持って、後ろを振り向く。よろしく頼んだ、そう言うつもりで俺は二人に笑顔を見せた。


 ーーー薄れていく意識の中で、アルフ・レイデーンが思ったのは、俺の笑顔引きつってたらさぞかし滑稽だっただろうな、という心底どうでもいい内容だった。




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