上 下
17 / 53

クラスメイトは

しおりを挟む

「愛菜さん、愛菜さん。起きて下さい」

 私は誰かに肩を揺らされ目が覚めた。眠たい目を擦り、体を伸ばす。そして横を見てみると私を起こしに来た人がいた。

「おはようございます、愛菜さん」
「おはようございます、ペトラさん」

 その人の名はペトラさん。苗字は知らない。私のお世話をしてくれているメイドさんだ。
 起こされた私はクローゼットから服を取りそれに着替え部屋を出た。朝ご飯だ。
 私が食堂へ歩いていると、そこに偶然雫ちゃんがいた。

「雫ちゃーん」

 私は手を振った。

 それに気づいた雫ちゃんはこっちを向い雫ちゃんと合流し食堂へ向かった。
 クラスメイトのみんなも友達とお話しながらご飯を食べようとすると中央に騎士団長のクラウスさんが現れた。

「勇者のみんな。聞いてほしい」

 クラウスさんの声を聞きクラスメイトたちは目を向けた。

「昨日のダンジョンで一人の仲間が死んだ」

 さっきまで喋っていたクラスメイトは静かになっていた。花蓮先生の方を見ると手をぎゅっと強く握りしめている。悔しかったのだろう。

「だが、その死んだ仲間のためにも強くならなければならない!必ず生きて魔王を討伐するのだ!」

 そう、神夜くんのことはダンジョンで言われた通りベヒモスに殺されたと報告してそうなったのだ。
 クラウスさんの言葉でクラスメイトみんなは少し元気を取り戻したみたいでご飯また食べはじめる。

 私は隣にいる雫ちゃんに話しかけた。

「雫ちゃん」
「どうしたの?愛菜」
「部屋で神夜くんに貰ったペンダントを鑑定してみたんだ」
「それで?」
「ペンダントの名前は『邪悪を祓いしペンダント』。効果は付けている者に近ずいている邪悪なものを全て祓うだった」
「つ、つまりそれは」
「ええ、神夜くんが言っていた通り『見守っている』」

 その言葉を聞き雫ちゃんは驚いた表情を見せたがすぐに嬉しそうな顔でペンダントを撫でた。

「いつもいつも、彼は心配性ね」
「ほんとうよ」
「でも」「だけども」
「「そんな所も大好き」」

 私と雫ちゃんはお互いの顔を赤らめながら見あって笑った。

「だからね」
「うん」
「大好きな神夜くんに会うために必ず強くなろう」
「そうだね!愛菜」

 私と雫ちゃんは生き残り神夜くんに会うため強くなる事を決意した。

 そして私は雫ちゃんと一緒にご飯を食べ始めた。

「姫宮さん、星乃さん。僕達も一緒に食べてもいいですか?」

 話しかけて来たのは勇者の秋山光輝くんとその友達の田中龍也くんだった。

「いいよ、ね、雫ちゃん」
「ええ」
「ありがとうございます」

 秋山くんは隣の田中くんを見て頷き私たちの前の席に座った。

「それにしても残念ですね、黒瀬くんは姫宮さんと星乃さんが仲良くしていたのに」
「そうだね、神夜くんは昔からの幼馴染だから悲しいな」

 私は話に出された神夜くんの事を生きていると知っていながらも秘密にする為悲しみの表情を見せた。横を見ると雫ちゃんも同じことをしている。

「でも、もうこんなことはさせません!俺達が必ず姫宮さんと星乃さんを守ります!」

 秋山くんは拳を握り締めそう言い放った。その横にいる田中くんも同じことをしている。

「ありがとう」
「ありがとうございます」

 私は雫ちゃんと微笑みながらそう返事をし、ご飯を食べ終わり訓練場へ向かった。
 私は魔法の練習で雫ちゃんは剣の練習をし、クラスメイトの人達も自分に合った様々な練習を行っていた。
 そして太陽が沈み、私たちは訓練を終え晩御飯を食べたあと部屋に戻った。

(神夜くん、必ず生きて会いに行くよ)

 私はそう思いベットの中で寝た。

◇◆◇◆◇◆◇◆

 勇者たちが眠っている夜、王の椅子の下の隠し部屋ではクラウス騎士団長とグレス・ローゼス皇帝がいた。

「で、死んだ勇者の仲間は?」
「名前は黒瀬神夜、やること全て中の下の奴です」
「なんだその程度の奴か。なら放っておけ」
「了解しました」
「勇者の仲間なんぞ、一人や二人死んでも構わん。その程度の奴ならな。フハハハハ」
「ハハハハハ」

 二人の笑い声は小さな隠し部屋の中で木霊した。

◇◆◇◆◇◆◇◆

 深夜、皇帝とクラウスが話している中、勇者である秋山光輝の部屋に一人の男が秋山と喋っていた。
 それは秋山と仲がいい友達の田中龍也だった。

「おい光輝」
「なんだ龍也」
「お前はチャンスだと思わねぇのか?」
「なんのだよ」
「姫宮さんと星乃さんのことだよ」
「そんなの当然だろ?」
「だよなぁ」

 二人はニヤリと黒い笑を浮かべた。

 実は秋山は雫のことを、田中は愛菜のことが好きだったのだ。
 それもそうだろう、学校では愛菜と雫は二大女神と言われるほど綺麗で可愛いからだ。
 秋山は周りにはいい顔を見せているがそれはただ雫を自分の女にする為の行動だったのだ。
 自分は顔が、頭が良い、運動も出来る。そんな自分だったら雫ぐらい容易く手に入るだろうと思っていた。だが雫は自分ではなくいつも一人でただ本を読んでいる黒瀬とかいう陰キャで、自分にとってはモブでしかない男と一緒にいた。
 それがすごく腹が立つと苛立ちを感じていた。
 そんな中、異世界召喚という非現実的なら事が起き自分は勇者だった。これで雫は自分のものになるだろうと思ったがまだならない。
 そして訓練を積み強くなりダンジョンに向かった。魔物を殺し一番前線で戦い活躍していた。そこでベヒモスが現れ、あの邪魔だった黒瀬が死んだのだ。
 この状況は秋山にとって好ましかった。田中も同じなのだろう。
 そして秋山の部屋の中、秋山は田中とこの状況を利用し秋山は雫を、田中は愛菜を自分のものにしようとしているのだ。
 この夜、皇帝と騎士団長の笑い声と共にもう一つの不気味な笑い声が存在したのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

流石に異世界でもこのチートはやばくない?

裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。 異世界転移で手に入れた無限鍛冶 のチート能力で異世界を生きて行く事になった! この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。

私のバラ色ではない人生

野村にれ
恋愛
ララシャ・ロアンスラー公爵令嬢は、クロンデール王国の王太子殿下の婚約者だった。 だが、隣国であるピデム王国の第二王子に見初められて、婚約が解消になってしまった。 そして、後任にされたのが妹であるソアリス・ロアンスラーである。 ソアリスは王太子妃になりたくもなければ、王太子妃にも相応しくないと自負していた。 だが、ロアンスラー公爵家としても責任を取らなければならず、 既に高位貴族の令嬢たちは婚約者がいたり、結婚している。 ソアリスは不本意ながらも嫁ぐことになってしまう。

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ
ファンタジー
 第15回ファンタジー大賞、奨励賞頂きました。  投票していただいた皆さん、ありがとうございます。  励みになりましたので、感想欄は受け付けのままにします。基本的には返信しませんので、ご了承ください。 「あんたいいかげんにせんねっ」  異世界にある大国ディレナスの王子が聖女召喚を行った。呼ばれたのは聖女の称号をもつ華憐と、派手な母親と、華憐の弟と妹。テンプレートのように巻き込まれたのは、聖女華憐に散々迷惑をかけられてきた、水澤一家。  ディレナスの大臣の1人が申し訳ないからと、世話をしてくれるが、絶対にあの華憐が何かやらかすに決まっている。一番の被害者である水澤家長女優衣には、新種のスキルが異世界転移特典のようにあった。『ルーム』だ。  一緒に巻き込まれた両親と弟にもそれぞれスキルがあるが、優衣のスキルだけ異質に思えた。だが、当人はこれでどうにかして、家族と溺愛している愛犬花を守れないかと思う。  まずは、聖女となった華憐から逃げることだ。  聖女召喚に巻き込まれた4人家族+愛犬の、のんびりで、もふもふな生活のつもりが……………    ゆるっと設定、方言がちらほら出ますので、読みにくい解釈しにくい箇所があるかと思いますが、ご了承頂けたら幸いです。

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

処理中です...