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03白鷺トロフィーの行方
能面の男事件05
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俺は唾を飲み込んだ。率直な感想を漏らす。
「……狂ってる」
英二が同意を表し点頭した。
「反吐が出るな」
熊谷は斜め45度に首を傾ける。分度器で正確に計っても45度だろう。
「それから私は何も感じなくなりました。『能面の男』と呼ばれるようになったのもその頃です。後は三宮家への復讐のみが私の生きる糧でした。磨きに磨いた暗殺の腕で、三宮家の当主である三宮剛の命を奪う。その瞬間を思うとぞくぞくして眠れなくなるほどでした。しかし……」
笑みが消える。子供がごとく不平そうに口を尖らせた。
「三宮剛は隙がなく、いつも黒服に護衛されていて殺害の機会がありませんでした。彼自身も気づいていたのでしょう。自分が罪深い人間であり、轢殺してきた人たちの憎悪を買っていることに。常に誰かに生命を脅かされていることに。私は彼の鉄壁の守りの前に、膝を屈してしまいました」
さも残念そうに腕を広げた後、胸の辺りで組む。
「そこで代わりに目をつけたのが、一人息子の三宮英二君、君です。君を殺されたら、三宮剛は嘆き悲しんで地獄を味わうでしょう。私は君の殺害に舵を切りました。覚えているでしょう、山中でのバーベキューの一件を」
英二は仏頂面で、この異常な男の問いに答えた。
「ああ。チンピラに殺されかかった」
「あれは自分でも成功するとは思いませんでした。ほんの遊び、小手調べ、といったところです。まずはどれぐらいの守りか確かめたわけです。私が捕まえられてしまうことのないように、そこだけは細心の注意を払いましたがね」
俺は『バーベキュー事件』を回想した。『能面の男』は黒服の沢渡さんとチンピラを抱き込み、ボウガンを凶器として英二殺害を狙ったのだった。
熊谷は滑らかに舌を動かす。気分が良さそうだが表面的には変わらない。
「それで小手先の技では殺せない、と判明したので、突破口を見出すべく英二君の周囲を調べ上げました。その結果、英二君に最も近い存在の菅野結城さんにほころびを発見したのです。三宮剛の残酷な性格が、菅野君の母と祖母の処遇に表れているのを確認したときは、小躍りしたくなったほどでした」
結城は口を閉ざしたまま、この独演会を拝聴している。『能面の男』は得意げに続けた。
「後は英二君が語ったとおりです。全ては私の意のままに運びました。私はね英二君、君をなぶり殺す光景を動画で記録し、それを収めた記録媒体を君の父上に送りつけてやるつもりです。逆に、そこまでしないと私の気は晴れないといいますかね。ああ、映像を見たときの三宮剛の嘆き悲しみぶりを想像したら! 私は胸がすく思いです」
口元を押さえるも、笑いはこみ上げて抑え切れないようだ。
「ふふ、以上です。私の怒りが理解できましたか、英二君?」
長い演説の最後を質問で締めくくり、熊谷は顎を摘んで英二を見つめた。英二は溜め息をついた。
「馬鹿馬鹿しい」
熊谷の眉間に皺が寄るのを無視する。
「お前の両親は自由競争のこの社会で、力なきゆえに敗れ去った負け犬なだけだ。三宮家を恨むのは筋違いというものだろう。己の両親を殺したというが、それはお前が心底から腐っているというだけの話だ。まともな職に就かず、闇稼業で財をなして、ただそれが後ろめたかったから手近な――そして真っ当な人間を殺して、自己の正当化を図ったんだ。違うか?」
熊谷のこめかみに青筋が浮かぶ。まぶたを全開にして、駄々っ子の癇癪のようにうなり声を上げた。その顔は多彩に変化し、奇怪なことこの上ない。
「ん、んん、んんんっ!」
次の瞬間、熊谷の蹴りが英二のどてっ腹に食い込んでいた。かなりの痛打だ。
「うっ……」
英二が体をくの字に折ってひざまずく。攻撃者はその姿を見下ろし、肩で息をした。
「お前! 馬鹿にするな!」
その後、狂態を恥じるように笑顔で取り繕う。額に汗がうっすら浮かんでいた。
「……それにしてもずいぶん口汚い罵倒でしたね。何ですか、私を無駄に喋らせたり怒らせたり、時間稼ぎのつもりですか? 残念ながらこんな場所に誰かの助けが来るはずもないでしょう」
白いハンカチで額を拭きながら、結城に目線を巡らす。
「菅野君、英二君の服には発信機がついてないんですよね?」
結城は軽く頭を下げた。もはや熊谷の手下に成り下がっている。
「はい、熊谷様。いつもは緊急事態に即応できるよう小型の発信機がつけられているのですが、私が今朝お召し物を点検した際、あえて外しておきました」
熊谷は満足そうだった。天井から降り注ぐ蛍光灯の輝きに、その能面のような顔が黒々と陰影を作る。
「と、いうわけです。英二君、無駄な真似はやめなさい」
英二は腹部を押さえて、だいぶ苦しげに立ち上がった。横にいる結城に正対する。
「結城、お前はこれでいいのか? 俺がなぶり殺されるのが、お前の本望なのか?」
元メイドは糖分ゼロの回答を寄越した。
「何を今更。私は熊谷様と同じ気持ちです。三宮家への復讐を果たす、それが私の今の生きる目標なのです。本望なのです」
乾いた、疲れ切った笑いをする。
「きっと、熊谷様はあなたを殺した後、私も殺すでしょう。これだけ裏事情を知って、ただで帰してくれるはずもありません。そうですよね、熊谷様?」
それは残酷な未来を見つめるものの目だった。あの熊谷が言葉に詰まる。
「……それは……」
「いいんです。三宮英二……いや、英二様」
その双眸に涙が浮かんでいた。唇を震わせ、渋山台高校一年生の少女は告白する。
「私はあなたが好きでした」
英二は唇を引き結んでその言葉を受け止めた。結城の目尻から透明な線が頬を伝う。
「メイドとして接するうちに、そのぶっきらぼうな態度に私は心惹かれていきました。裏にある海のように広い心と、それがもたらす優しさ。ご主人様としてではなく、一人の男の子として。私はあなたが大好きでした。でも……」
唇が震えている。その隙間から心底辛そうな声が吐き出された。
「あなたは辰野さんに目を向けた。彼女に恋をした。それで私は押し潰されるような悲哀を味わいました。私は苦しくて、切なくて、夜も寝られない毎日でした。そのため、いつしかメイド業務にさえ差し障りが出てきてしまいました」
そんな様子は見えなかったが……。俺の知らないところで、あるいは知識の及ばないところで、不本意なミスでもしていたのだろうか。
結城は二本の指で目尻を拭った。
「だからです。三宮家への復讐は、ひょっとしたらきっかけとして以外、意味を持たないのかもしれません。あなたを私一人のものとするためにも、死んでいただきます。そして私も残虐に殺される。英二様、あの世で二人仲良く暮らしましょう。もっとも英二様は天国で、私は地獄かもしれませんが……」
俺は二人を交互に見た。ご主人様とそのメイドではない、高校生のうら若き男女として、二人は初めて出会ったかのように視線を絡ませている。一種の清涼感さえあった。
それを無粋にも邪魔したのは熊谷だ。早く英二を拷問したくてたまらないらしかった。
「もういいでしょう、菅野君。……では英二君、まずはその指を万力で締めてあげましょう。果たしてその尊大な態度がいつまでもちますかな」
悦に入った、下卑た言葉が室内に反響したときだった。
複数――いや、大勢の靴音が、遠くかすかに聞こえてきたのだ。
「何ですか? ここには誰も来れないはず……」
英二は破顔一笑、熊谷へ嘲るように言った。
「馬鹿な奴だ。俺が何も用意していないとでも思ったのか」
英二はポケットから小型のスマホを取り出した。それは起動しており、明るい画面が地下室で映える。
「車内で結城に拳銃を突きつけられたとき、こっそり起動して通信を始めたんだ。純架にな」
俺は狂喜し、熊谷は狼狽の谷へ転落した。
「何ですって……?」
「『能面の男』出没の噂が流れて三日後、純架に頼んで、俺が万一連れ去られたときに通話する専用の番号を共有したんだ。車からこの屋敷まで、今までの会話は全て筒抜けだ。きっと純架は録音していることだろう。居場所もGPSで絶えず送信している。だからあいつらはこの場所にやって来れたんだ。ちなみに向こうの音声は聞こえないよう設定してある」
熊谷は絶望的な顔だ。
「そんな、そんな……! この山中で電波が届くはずがありません。それに門と扉はコンピュータで制御されています。開けられるはずが……!」
「純架と黒服たちは移動基地局車を使ってるんだ。熊谷、さっきお前はここをテクノロジーの要塞だとか抜かしたな。そんなもの、最精鋭の黒服たちにとっては乗っ取ることなどわけもない。残念ながら、追い詰められたのはお前たちの方というわけだ」
俺は心の中で叫んだ。助けが、純架たちが来る! もうおしまいだと観念していたけど、どうやら大逆転ホームランとなりそうだ。しかし移動基地局車を私的利用って、法律とかもう金で全部解決の世界だな……
熊谷は恐怖と憤怒で狂的に地団駄を踏んだ。
「おのれ、英二君……!」
結城が英二に震える声を出す。信じられない、といった表情だった。
「私に内密で、桐木さんと前もって準備していたなんて……。まさか、私と熊谷様や漆原さんの繋がりをご存知だったのですか?」
英二は堂々と受け止める。
「ああ、薄々な。一週間前、渋山台高校近隣における『能面の男』の目撃情報を、他人のタレコミとして最初に伝えてきたのは他ならぬお前だ。それからの明らかに気の抜けた態度。俺は裏で女の黒服一名に調査を命じて、この数日間お前の動向を注視した」
「……狂ってる」
英二が同意を表し点頭した。
「反吐が出るな」
熊谷は斜め45度に首を傾ける。分度器で正確に計っても45度だろう。
「それから私は何も感じなくなりました。『能面の男』と呼ばれるようになったのもその頃です。後は三宮家への復讐のみが私の生きる糧でした。磨きに磨いた暗殺の腕で、三宮家の当主である三宮剛の命を奪う。その瞬間を思うとぞくぞくして眠れなくなるほどでした。しかし……」
笑みが消える。子供がごとく不平そうに口を尖らせた。
「三宮剛は隙がなく、いつも黒服に護衛されていて殺害の機会がありませんでした。彼自身も気づいていたのでしょう。自分が罪深い人間であり、轢殺してきた人たちの憎悪を買っていることに。常に誰かに生命を脅かされていることに。私は彼の鉄壁の守りの前に、膝を屈してしまいました」
さも残念そうに腕を広げた後、胸の辺りで組む。
「そこで代わりに目をつけたのが、一人息子の三宮英二君、君です。君を殺されたら、三宮剛は嘆き悲しんで地獄を味わうでしょう。私は君の殺害に舵を切りました。覚えているでしょう、山中でのバーベキューの一件を」
英二は仏頂面で、この異常な男の問いに答えた。
「ああ。チンピラに殺されかかった」
「あれは自分でも成功するとは思いませんでした。ほんの遊び、小手調べ、といったところです。まずはどれぐらいの守りか確かめたわけです。私が捕まえられてしまうことのないように、そこだけは細心の注意を払いましたがね」
俺は『バーベキュー事件』を回想した。『能面の男』は黒服の沢渡さんとチンピラを抱き込み、ボウガンを凶器として英二殺害を狙ったのだった。
熊谷は滑らかに舌を動かす。気分が良さそうだが表面的には変わらない。
「それで小手先の技では殺せない、と判明したので、突破口を見出すべく英二君の周囲を調べ上げました。その結果、英二君に最も近い存在の菅野結城さんにほころびを発見したのです。三宮剛の残酷な性格が、菅野君の母と祖母の処遇に表れているのを確認したときは、小躍りしたくなったほどでした」
結城は口を閉ざしたまま、この独演会を拝聴している。『能面の男』は得意げに続けた。
「後は英二君が語ったとおりです。全ては私の意のままに運びました。私はね英二君、君をなぶり殺す光景を動画で記録し、それを収めた記録媒体を君の父上に送りつけてやるつもりです。逆に、そこまでしないと私の気は晴れないといいますかね。ああ、映像を見たときの三宮剛の嘆き悲しみぶりを想像したら! 私は胸がすく思いです」
口元を押さえるも、笑いはこみ上げて抑え切れないようだ。
「ふふ、以上です。私の怒りが理解できましたか、英二君?」
長い演説の最後を質問で締めくくり、熊谷は顎を摘んで英二を見つめた。英二は溜め息をついた。
「馬鹿馬鹿しい」
熊谷の眉間に皺が寄るのを無視する。
「お前の両親は自由競争のこの社会で、力なきゆえに敗れ去った負け犬なだけだ。三宮家を恨むのは筋違いというものだろう。己の両親を殺したというが、それはお前が心底から腐っているというだけの話だ。まともな職に就かず、闇稼業で財をなして、ただそれが後ろめたかったから手近な――そして真っ当な人間を殺して、自己の正当化を図ったんだ。違うか?」
熊谷のこめかみに青筋が浮かぶ。まぶたを全開にして、駄々っ子の癇癪のようにうなり声を上げた。その顔は多彩に変化し、奇怪なことこの上ない。
「ん、んん、んんんっ!」
次の瞬間、熊谷の蹴りが英二のどてっ腹に食い込んでいた。かなりの痛打だ。
「うっ……」
英二が体をくの字に折ってひざまずく。攻撃者はその姿を見下ろし、肩で息をした。
「お前! 馬鹿にするな!」
その後、狂態を恥じるように笑顔で取り繕う。額に汗がうっすら浮かんでいた。
「……それにしてもずいぶん口汚い罵倒でしたね。何ですか、私を無駄に喋らせたり怒らせたり、時間稼ぎのつもりですか? 残念ながらこんな場所に誰かの助けが来るはずもないでしょう」
白いハンカチで額を拭きながら、結城に目線を巡らす。
「菅野君、英二君の服には発信機がついてないんですよね?」
結城は軽く頭を下げた。もはや熊谷の手下に成り下がっている。
「はい、熊谷様。いつもは緊急事態に即応できるよう小型の発信機がつけられているのですが、私が今朝お召し物を点検した際、あえて外しておきました」
熊谷は満足そうだった。天井から降り注ぐ蛍光灯の輝きに、その能面のような顔が黒々と陰影を作る。
「と、いうわけです。英二君、無駄な真似はやめなさい」
英二は腹部を押さえて、だいぶ苦しげに立ち上がった。横にいる結城に正対する。
「結城、お前はこれでいいのか? 俺がなぶり殺されるのが、お前の本望なのか?」
元メイドは糖分ゼロの回答を寄越した。
「何を今更。私は熊谷様と同じ気持ちです。三宮家への復讐を果たす、それが私の今の生きる目標なのです。本望なのです」
乾いた、疲れ切った笑いをする。
「きっと、熊谷様はあなたを殺した後、私も殺すでしょう。これだけ裏事情を知って、ただで帰してくれるはずもありません。そうですよね、熊谷様?」
それは残酷な未来を見つめるものの目だった。あの熊谷が言葉に詰まる。
「……それは……」
「いいんです。三宮英二……いや、英二様」
その双眸に涙が浮かんでいた。唇を震わせ、渋山台高校一年生の少女は告白する。
「私はあなたが好きでした」
英二は唇を引き結んでその言葉を受け止めた。結城の目尻から透明な線が頬を伝う。
「メイドとして接するうちに、そのぶっきらぼうな態度に私は心惹かれていきました。裏にある海のように広い心と、それがもたらす優しさ。ご主人様としてではなく、一人の男の子として。私はあなたが大好きでした。でも……」
唇が震えている。その隙間から心底辛そうな声が吐き出された。
「あなたは辰野さんに目を向けた。彼女に恋をした。それで私は押し潰されるような悲哀を味わいました。私は苦しくて、切なくて、夜も寝られない毎日でした。そのため、いつしかメイド業務にさえ差し障りが出てきてしまいました」
そんな様子は見えなかったが……。俺の知らないところで、あるいは知識の及ばないところで、不本意なミスでもしていたのだろうか。
結城は二本の指で目尻を拭った。
「だからです。三宮家への復讐は、ひょっとしたらきっかけとして以外、意味を持たないのかもしれません。あなたを私一人のものとするためにも、死んでいただきます。そして私も残虐に殺される。英二様、あの世で二人仲良く暮らしましょう。もっとも英二様は天国で、私は地獄かもしれませんが……」
俺は二人を交互に見た。ご主人様とそのメイドではない、高校生のうら若き男女として、二人は初めて出会ったかのように視線を絡ませている。一種の清涼感さえあった。
それを無粋にも邪魔したのは熊谷だ。早く英二を拷問したくてたまらないらしかった。
「もういいでしょう、菅野君。……では英二君、まずはその指を万力で締めてあげましょう。果たしてその尊大な態度がいつまでもちますかな」
悦に入った、下卑た言葉が室内に反響したときだった。
複数――いや、大勢の靴音が、遠くかすかに聞こえてきたのだ。
「何ですか? ここには誰も来れないはず……」
英二は破顔一笑、熊谷へ嘲るように言った。
「馬鹿な奴だ。俺が何も用意していないとでも思ったのか」
英二はポケットから小型のスマホを取り出した。それは起動しており、明るい画面が地下室で映える。
「車内で結城に拳銃を突きつけられたとき、こっそり起動して通信を始めたんだ。純架にな」
俺は狂喜し、熊谷は狼狽の谷へ転落した。
「何ですって……?」
「『能面の男』出没の噂が流れて三日後、純架に頼んで、俺が万一連れ去られたときに通話する専用の番号を共有したんだ。車からこの屋敷まで、今までの会話は全て筒抜けだ。きっと純架は録音していることだろう。居場所もGPSで絶えず送信している。だからあいつらはこの場所にやって来れたんだ。ちなみに向こうの音声は聞こえないよう設定してある」
熊谷は絶望的な顔だ。
「そんな、そんな……! この山中で電波が届くはずがありません。それに門と扉はコンピュータで制御されています。開けられるはずが……!」
「純架と黒服たちは移動基地局車を使ってるんだ。熊谷、さっきお前はここをテクノロジーの要塞だとか抜かしたな。そんなもの、最精鋭の黒服たちにとっては乗っ取ることなどわけもない。残念ながら、追い詰められたのはお前たちの方というわけだ」
俺は心の中で叫んだ。助けが、純架たちが来る! もうおしまいだと観念していたけど、どうやら大逆転ホームランとなりそうだ。しかし移動基地局車を私的利用って、法律とかもう金で全部解決の世界だな……
熊谷は恐怖と憤怒で狂的に地団駄を踏んだ。
「おのれ、英二君……!」
結城が英二に震える声を出す。信じられない、といった表情だった。
「私に内密で、桐木さんと前もって準備していたなんて……。まさか、私と熊谷様や漆原さんの繋がりをご存知だったのですか?」
英二は堂々と受け止める。
「ああ、薄々な。一週間前、渋山台高校近隣における『能面の男』の目撃情報を、他人のタレコミとして最初に伝えてきたのは他ならぬお前だ。それからの明らかに気の抜けた態度。俺は裏で女の黒服一名に調査を命じて、この数日間お前の動向を注視した」
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