83 / 156
03白鷺トロフィーの行方
消えたトロフィー事件05
しおりを挟む
そういえば防犯カメラが設置されていたなあ……と思っていると、英二が身を乗り出す。
「じゃあ生徒会室も不十分だったんですね」
向井さんはしかし、明確に首を振った。少し苦笑している。
「でも、生徒会室は鍵もかかってるし、廊下を映す監視カメラと僕ら警備員の見回りとでカバーしている。こちらも不審なことは生じなかったよ」
「そうですか……」
英二は分かりやすく落胆した。それは純架も同じだ。
「ううむ……。昼は人目が、夜は監視があったのに、白鷺トロフィーは完璧に盗まれた。二重の施錠をもかいくぐって……。こんな非現実的な技、犯人はどうやってやりおおせたんだろう?」
ふと気付いたように、向井さんへ頭を下げた。俺と英二も続く。
「お忙しいところ、ありがとうございました。大変参考になりました」
その後、俺たち『探偵部』は飾り付けとリハーサルに没頭した。まどかの治癒効果は絶大なものがあり、施術された者は肩の軽さと健康増進を実感する。
「これはお客さんにもウケると思うよ」
奈緒は笑いながら楽観的に語った。実際、俺も肩叩き――に見せかけたまどかの治療――を体験し、見違えるように肩凝りが改善されて自信を深める。
「行列が出来るに違いないな」
まどかは褒められて上機嫌になり、得意気に天井付近をくるくる飛び回った。
「せやろ、せやろ。あたしの手にかかればざっとこんなもんや」
純架はしかし、一人浮かない顔で練習にも集中できていない。奈緒が見咎めて、少しきつめに声を出した。
「ちょっと桐木君、だらしないよ。明日は桐木君にも手伝ってもらうんだから、しっかりしてよね」
「ああ、ごめん、飯田さん。ちょっと事件のことで頭が一杯で、他のことに手をつけられない感じでさ。……これからはちゃんとするよ」
「本当? 全く……」
俺は折り紙の綱をカーテンレールに貼り付けながら、奈緒の様子を盗み見た。彼女は学園祭が楽しみなのか、やけに張り切っている。ちょっと異常なぐらいに。
俺は彼女が好きだ。だが奈緒はそんなこととは露知らず――あるいは勘付いているのか――、こちらとは一定の距離を保っていた。俺はこの近いようで遠い関係を一気に縮めるべく、この学園祭にかこつけて、奈緒との校内デートをもくろんでいる。
でも、どうやったらそこまで持っていけるだろうか? そこが悩みの種だった。
奈緒への思慕は果てしなく、俺は情熱を燃やしながら、まとまらない思考をもてあそぶ。
翌日、青い天蓋は眩しいほどに輝いていた。俺と純架は『第40回渋山台高校白鷺祭』と書かれた白い縦看板を見ながら校門を通過した。ダンボールを貼り合わせた上に茶色い塗装を施した『樹の大門』が、トンネルの入り口のように聳え立っている。そこも潜り抜けると、焼きそばやたこ焼きの屋台が左右に展開される大通りが目に入ってくる。昇降口に入ると店舗案内の張り紙が目を惹き、カラフルに化粧された廊下はいつもより華やかだった。
祭が始まる――俺は何だかそわそわして、妙に落ち着かなくなってきた。中学校の文化祭とはまた違う、一段上の雰囲気に、興奮と高揚を煽り立てられる。
1年3組は既に準備万端。久川考案の『ダーツ喫茶』は、黒板に貼られた白黒円盤のダーツボードが特徴的である。1万円弱と結構高く、生徒会から予算を奪い取って購入したものだ。その周辺にはダンボール紙が張り巡らされ、矢で黒板を傷つけないよう気が配られている。
「腕が鳴るぜ……!」
久川は武者震いが止まらないようだ。彼の情熱はここに収斂し、早く開店したくてうずうずしているみたいだった。クラスメイトも普段より緊張し、胸を高鳴らせているようだ。
祭りの始まりである開会式は体育館で行なわれた。渋山台高校全生徒の注目を浴びて、校長や先生方が壇上で意気込みを述べる。初日は生徒・先生のみで楽しみ、二日目の最終日は一般のお客さん方も参加する。稼いだ金は全て学校の懐に入るので、各チームはアンケートとそれの結果如何で手に入る白鷺トロフィーを目標としていた。それが盗まれてなくなっているとも知らずに……
壇上に生徒会長の周防先輩が立った。相変わらず知的な太っちょといった印象だ。だがマイクを通したその声は凛として、涼やかで男前である。
「白鷺祭は今年で第40回目を迎えました。この渋山台高校が開校したまさにその年、偉大な先達が生徒たちの力を発揮して世に知らしめようと、総力を挙げて開催したのが始まりです。以来幾星霜、様々な試みと挑戦がなされ、白鷺祭は発展してきました」
ふっと息をつく。自分を正視する生徒たちを見渡した。そして、
「どうか皆さん、白鷺祭の精神を汚さぬように。心から楽しんでまいりましょう。白鷺祭、開幕です!」
そう締めた。会場から大歓声が拍手の山と共に巻き起こる。周防会長は何か思うところがあるのか、やや不機嫌そうな表情でそれに手を振って応えた。やはり白鷺トロフィーが手元にないことが不満なのだろうか?
ともあれ学園祭はこうして幕を開けた。
我ら『探偵部』の『肩叩きリラクゼーション・スペース』を宣伝するために、チラシ配りは欠かせない。俺と純架が客に対応している間、奈緒と結城はその古典的活動にいそしむべく、紙束を手に一階へ下りていった。広告は『肩叩きでリラックス!』との文句の脇に、部室の場所が示されている。シンプルイズベストとはこのことだ。やはり奈緒が少し浮き足立っているような感じがしたが、高校初の学園祭に緊張でもしているのだろうか。その一方、日向は新聞部に顔を出しに行き、英二が俺たちのサポートに回った。
俺は窓から街の遠景を両目に映した。時刻は午前10時半。
「しかし、開店したはいいものの……お客なんて本当に来るかな?」
何せ旧棟の3階だ。昇降口からはかなり遠い。肩を叩いてもらうためだけに、わざわざ来てくれるだろうか。
「宣伝紙、絶対こっちの案の方が良かったんだけどね」
そう言う純架は自分の描いたイラストを眺めている。俺は覗き見た。
鉄の椅子に両手両足を固定された純架が、体に電気を流されながら『Oh! モーレツ!』と絶叫している。その横に毛筆で『渋山台高校の地獄の釜! これであなたもアハ体験!』と書かれていた。
良かねえよ。
そのとき英二が唐突に叫んだ。彼らしくもなく喜びに満ちている。
「いらっしゃい!」
見れば前谷翔一郎校長が、チラシを手に姿を見せていた。肥えた体は周防生徒会長にだぶるものがある。権力者は太るものなのだろうか。
「校長……」
ともかくも俺は唖然としていた。『割れた壷事件』のいきさつから、前谷校長は絶対来ないだろうと踏んでいたからだ。
彼は機嫌が良さそうだった。
「肩叩き、よろしくお願いする」
純架は俺のようなわだかまりを持ち合わせていないのか、愛想よく元気に答えた。
「お任せください」
俺は校長を衝立の向こう側に案内した。座布団を載せた椅子に座ってもらう。その背後に純架が立った。
「校長、体の力を抜いてリラックスしてください。それからできれば目をつぶって、心持ち背中を曲げて……そうです、その調子です」
校長の死角にまどかが顕現する。彼女は純架と重なり、校長の背中に両手を添えた。純架がはりきって声を出す。
「では、叩かせていただきます!」
純架が対象の肩に連続して両拳を振り下ろす。それに合わせて、まどかが治癒能力を発揮し始めた。
最初は半信半疑だった校長も、2分、3分と施術されるうち、満足そうな溜め息を漏らす。
「なんだか気持ちがいいな。肩叩きって、こんなに効果あるものだったか?」
純架はリズミカルに殴打した。それほど力は込めておらず、あくまでまどかの添え物だ。
「何、校長の肩が思っていたより凝っていた、それだけですよ。……ときに、なぜうちに来たんですか? 他に色々店はあったでしょうに」
前谷校長は目を閉じたまま苦笑した。年輪のある声が紡ぎ出される。
「いや、君と朱雀君には失礼なことをしたと思って、それが今でも尾を引いていてね。謝りに来たんだ。……いつぞやはすまなかった」
意外な吐露に俺は不意を打たれて押し黙った。反省してたんだ、この人。
「もちろんそれだけじゃなく、これから色々な来賓を接待しなくてはならなくてね。その景気付けに、少しでもリラックスしたかったんだ」
5分は短かった。まどかは姿を消し、校長は終了を告げられると立ち上がって大きく伸びをした。爽快な声だ。
「信じられん。あれだけへばっていたのに、まるで一晩ぐっすり眠ったかのように疲れが取れている」
「それは良かった。お代は100円です」
純架は代金を受け取り、アンケートを書いてもらった。校長が記した満足度は5点中5点。満点だ。票の不正を防止するための名前記入に協力してもらい、その紙は箱の中に納められた。
純架が彼に手を差し出す。握手が成立すると、美貌を緩めて笑いかけた。
「校長、宣伝の方、気が向いたらよろしくお願いします」
「ああ、任せろ。これは先生方に人気になるぞ。……そうそう、白鷺トロフィーの捜索も頑張れよ」
俺は心中汗をかいた。校長はトロフィーの盗難と、それを『探偵部』が追っていることを知っているようだ。知らぬは生徒会以外の学生たちか。
「じゃ、これで」
校長はあくびをしながら去っていった。その顔色は見違えるように改善されている。改めてまどかの力を思い知らされた気分だった。
「じゃあ生徒会室も不十分だったんですね」
向井さんはしかし、明確に首を振った。少し苦笑している。
「でも、生徒会室は鍵もかかってるし、廊下を映す監視カメラと僕ら警備員の見回りとでカバーしている。こちらも不審なことは生じなかったよ」
「そうですか……」
英二は分かりやすく落胆した。それは純架も同じだ。
「ううむ……。昼は人目が、夜は監視があったのに、白鷺トロフィーは完璧に盗まれた。二重の施錠をもかいくぐって……。こんな非現実的な技、犯人はどうやってやりおおせたんだろう?」
ふと気付いたように、向井さんへ頭を下げた。俺と英二も続く。
「お忙しいところ、ありがとうございました。大変参考になりました」
その後、俺たち『探偵部』は飾り付けとリハーサルに没頭した。まどかの治癒効果は絶大なものがあり、施術された者は肩の軽さと健康増進を実感する。
「これはお客さんにもウケると思うよ」
奈緒は笑いながら楽観的に語った。実際、俺も肩叩き――に見せかけたまどかの治療――を体験し、見違えるように肩凝りが改善されて自信を深める。
「行列が出来るに違いないな」
まどかは褒められて上機嫌になり、得意気に天井付近をくるくる飛び回った。
「せやろ、せやろ。あたしの手にかかればざっとこんなもんや」
純架はしかし、一人浮かない顔で練習にも集中できていない。奈緒が見咎めて、少しきつめに声を出した。
「ちょっと桐木君、だらしないよ。明日は桐木君にも手伝ってもらうんだから、しっかりしてよね」
「ああ、ごめん、飯田さん。ちょっと事件のことで頭が一杯で、他のことに手をつけられない感じでさ。……これからはちゃんとするよ」
「本当? 全く……」
俺は折り紙の綱をカーテンレールに貼り付けながら、奈緒の様子を盗み見た。彼女は学園祭が楽しみなのか、やけに張り切っている。ちょっと異常なぐらいに。
俺は彼女が好きだ。だが奈緒はそんなこととは露知らず――あるいは勘付いているのか――、こちらとは一定の距離を保っていた。俺はこの近いようで遠い関係を一気に縮めるべく、この学園祭にかこつけて、奈緒との校内デートをもくろんでいる。
でも、どうやったらそこまで持っていけるだろうか? そこが悩みの種だった。
奈緒への思慕は果てしなく、俺は情熱を燃やしながら、まとまらない思考をもてあそぶ。
翌日、青い天蓋は眩しいほどに輝いていた。俺と純架は『第40回渋山台高校白鷺祭』と書かれた白い縦看板を見ながら校門を通過した。ダンボールを貼り合わせた上に茶色い塗装を施した『樹の大門』が、トンネルの入り口のように聳え立っている。そこも潜り抜けると、焼きそばやたこ焼きの屋台が左右に展開される大通りが目に入ってくる。昇降口に入ると店舗案内の張り紙が目を惹き、カラフルに化粧された廊下はいつもより華やかだった。
祭が始まる――俺は何だかそわそわして、妙に落ち着かなくなってきた。中学校の文化祭とはまた違う、一段上の雰囲気に、興奮と高揚を煽り立てられる。
1年3組は既に準備万端。久川考案の『ダーツ喫茶』は、黒板に貼られた白黒円盤のダーツボードが特徴的である。1万円弱と結構高く、生徒会から予算を奪い取って購入したものだ。その周辺にはダンボール紙が張り巡らされ、矢で黒板を傷つけないよう気が配られている。
「腕が鳴るぜ……!」
久川は武者震いが止まらないようだ。彼の情熱はここに収斂し、早く開店したくてうずうずしているみたいだった。クラスメイトも普段より緊張し、胸を高鳴らせているようだ。
祭りの始まりである開会式は体育館で行なわれた。渋山台高校全生徒の注目を浴びて、校長や先生方が壇上で意気込みを述べる。初日は生徒・先生のみで楽しみ、二日目の最終日は一般のお客さん方も参加する。稼いだ金は全て学校の懐に入るので、各チームはアンケートとそれの結果如何で手に入る白鷺トロフィーを目標としていた。それが盗まれてなくなっているとも知らずに……
壇上に生徒会長の周防先輩が立った。相変わらず知的な太っちょといった印象だ。だがマイクを通したその声は凛として、涼やかで男前である。
「白鷺祭は今年で第40回目を迎えました。この渋山台高校が開校したまさにその年、偉大な先達が生徒たちの力を発揮して世に知らしめようと、総力を挙げて開催したのが始まりです。以来幾星霜、様々な試みと挑戦がなされ、白鷺祭は発展してきました」
ふっと息をつく。自分を正視する生徒たちを見渡した。そして、
「どうか皆さん、白鷺祭の精神を汚さぬように。心から楽しんでまいりましょう。白鷺祭、開幕です!」
そう締めた。会場から大歓声が拍手の山と共に巻き起こる。周防会長は何か思うところがあるのか、やや不機嫌そうな表情でそれに手を振って応えた。やはり白鷺トロフィーが手元にないことが不満なのだろうか?
ともあれ学園祭はこうして幕を開けた。
我ら『探偵部』の『肩叩きリラクゼーション・スペース』を宣伝するために、チラシ配りは欠かせない。俺と純架が客に対応している間、奈緒と結城はその古典的活動にいそしむべく、紙束を手に一階へ下りていった。広告は『肩叩きでリラックス!』との文句の脇に、部室の場所が示されている。シンプルイズベストとはこのことだ。やはり奈緒が少し浮き足立っているような感じがしたが、高校初の学園祭に緊張でもしているのだろうか。その一方、日向は新聞部に顔を出しに行き、英二が俺たちのサポートに回った。
俺は窓から街の遠景を両目に映した。時刻は午前10時半。
「しかし、開店したはいいものの……お客なんて本当に来るかな?」
何せ旧棟の3階だ。昇降口からはかなり遠い。肩を叩いてもらうためだけに、わざわざ来てくれるだろうか。
「宣伝紙、絶対こっちの案の方が良かったんだけどね」
そう言う純架は自分の描いたイラストを眺めている。俺は覗き見た。
鉄の椅子に両手両足を固定された純架が、体に電気を流されながら『Oh! モーレツ!』と絶叫している。その横に毛筆で『渋山台高校の地獄の釜! これであなたもアハ体験!』と書かれていた。
良かねえよ。
そのとき英二が唐突に叫んだ。彼らしくもなく喜びに満ちている。
「いらっしゃい!」
見れば前谷翔一郎校長が、チラシを手に姿を見せていた。肥えた体は周防生徒会長にだぶるものがある。権力者は太るものなのだろうか。
「校長……」
ともかくも俺は唖然としていた。『割れた壷事件』のいきさつから、前谷校長は絶対来ないだろうと踏んでいたからだ。
彼は機嫌が良さそうだった。
「肩叩き、よろしくお願いする」
純架は俺のようなわだかまりを持ち合わせていないのか、愛想よく元気に答えた。
「お任せください」
俺は校長を衝立の向こう側に案内した。座布団を載せた椅子に座ってもらう。その背後に純架が立った。
「校長、体の力を抜いてリラックスしてください。それからできれば目をつぶって、心持ち背中を曲げて……そうです、その調子です」
校長の死角にまどかが顕現する。彼女は純架と重なり、校長の背中に両手を添えた。純架がはりきって声を出す。
「では、叩かせていただきます!」
純架が対象の肩に連続して両拳を振り下ろす。それに合わせて、まどかが治癒能力を発揮し始めた。
最初は半信半疑だった校長も、2分、3分と施術されるうち、満足そうな溜め息を漏らす。
「なんだか気持ちがいいな。肩叩きって、こんなに効果あるものだったか?」
純架はリズミカルに殴打した。それほど力は込めておらず、あくまでまどかの添え物だ。
「何、校長の肩が思っていたより凝っていた、それだけですよ。……ときに、なぜうちに来たんですか? 他に色々店はあったでしょうに」
前谷校長は目を閉じたまま苦笑した。年輪のある声が紡ぎ出される。
「いや、君と朱雀君には失礼なことをしたと思って、それが今でも尾を引いていてね。謝りに来たんだ。……いつぞやはすまなかった」
意外な吐露に俺は不意を打たれて押し黙った。反省してたんだ、この人。
「もちろんそれだけじゃなく、これから色々な来賓を接待しなくてはならなくてね。その景気付けに、少しでもリラックスしたかったんだ」
5分は短かった。まどかは姿を消し、校長は終了を告げられると立ち上がって大きく伸びをした。爽快な声だ。
「信じられん。あれだけへばっていたのに、まるで一晩ぐっすり眠ったかのように疲れが取れている」
「それは良かった。お代は100円です」
純架は代金を受け取り、アンケートを書いてもらった。校長が記した満足度は5点中5点。満点だ。票の不正を防止するための名前記入に協力してもらい、その紙は箱の中に納められた。
純架が彼に手を差し出す。握手が成立すると、美貌を緩めて笑いかけた。
「校長、宣伝の方、気が向いたらよろしくお願いします」
「ああ、任せろ。これは先生方に人気になるぞ。……そうそう、白鷺トロフィーの捜索も頑張れよ」
俺は心中汗をかいた。校長はトロフィーの盗難と、それを『探偵部』が追っていることを知っているようだ。知らぬは生徒会以外の学生たちか。
「じゃ、これで」
校長はあくびをしながら去っていった。その顔色は見違えるように改善されている。改めてまどかの力を思い知らされた気分だった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
下っ端妃は逃げ出したい
都茉莉
キャラ文芸
新皇帝の即位、それは妃狩りの始まりーー
庶民がそれを逃れるすべなど、さっさと結婚してしまう以外なく、出遅れた少女は後宮で下っ端妃として過ごすことになる。
そんな鈍臭い妃の一人たる私は、偶然後宮から逃げ出す手がかりを発見する。その手がかりは府庫にあるらしいと知って、調べること数日。脱走用と思われる地図を発見した。
しかし、気が緩んだのか、年下の少女に見つかってしまう。そして、少女を見張るために共に過ごすことになったのだが、この少女、何か隠し事があるようで……
女性探偵の事件ファイル
ナマケモノ
ミステリー
『森の事件』
女性探偵である二階堂に警察からの依頼で森で起きた事件を解決するようにいわれる。
【ライバル探偵の死】
女性探偵の二階堂のライバルである探偵を依頼人によって調べることになる。
※ この物語に出てくる人物や団体などは空想のものである。
この欠け落ちた匣庭の中で 終章―Dream of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
ーーこれが、匣の中だったんだ。
二〇一八年の夏。廃墟となった満生台を訪れたのは二人の若者。
彼らもまた、かつてGHOSTの研究によって運命を弄ばれた者たちだった。
信号領域の研究が展開され、そして壊れたニュータウン。終焉を迎えた現実と、終焉を拒絶する仮想。
歪なる領域に足を踏み入れる二人は、果たして何か一つでも、その世界に救いを与えることが出来るだろうか。
幻想、幻影、エンケージ。
魂魄、領域、人類の進化。
802部隊、九命会、レッドアイ・オペレーション……。
さあ、あの光の先へと進んでいこう。たとえもう二度と時計の針が巻き戻らないとしても。
私たちの駆け抜けたあの日々は確かに満ち足りていたと、懐かしめるようになるはずだから。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる