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01桐木純架君
今朝の吸殻事件03
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「でも、先生……」
「俺からも聞きたい。『探偵同好会』は帰宅部同然なのか?」
俺はぐっと詰まった。事件の解決依頼がないとき、『探偵同好会』は確かに帰宅部となる。嘘はつけないし、ついてもすぐばれるだろう。
俺は不承不承認めた。
「……はい。そうなります」
白い手が宙でひるがえる。誰かと思えば奈緒だった。その顔色は怒りのために蒼白だ。
「先生、いいですか」
「何だ飯田」
奈緒は感情の起伏を力でねじ伏せようとしていた。それが語尾の震えに見出される。
「矢原君の言うことは分かります。確かに私たちは依頼がなければ帰宅部です。でもだからって時間を無駄遣いなんてしていません。朝早く学校に来るぐらいなら家で寝てますよ、私も桐木君も朱雀君も」
「さあ、そいつはどうだろう」
矢原はしつこかった。宮古先生は猜疑心を上手く御し得ないでいる。
「飯田、桐木、朱雀。とりあえず立て」
結局俺たちは渋々立ち上がらねばならなかった。立っている「帰宅部」は、これで7人。
「さて、お前たちにもう一度聞くぞ。誰だ、煙草を吸った犯人は」
誰も返事するものはいない。
俺は思う。宮古先生はこの問題に熱心になり過ぎている。確かに自分の教卓のすぐ側で吸殻を発見したときは、相当な怒りで胸郭を満たしたことだろう。だが今の吊るし上げのような詰問は少々やり過ぎだ。これ以上踏み込むと教師と生徒の間の絆さえ壊しかねない。それが分からぬ宮古先生ではないはずだが、やはりまだ若さがあるのだろうか。
「先生」
純架が肩の線まで手を持ち上げた。
「何だ桐木」
「ちょっと僕の意見を聞いていただけますか?」
宮古先生は点頭した。矢原の意見に傾倒しているためか、純架の言葉をうっとうしく思っている様がありありと看取される。
純架はしわぶきを一つした。
「帰宅部だから時間がある。だから早朝にこの教室で煙草を吸うゆとりがある。それは分かります」
矢原は自信満々の笑みで聞いている。嫌な奴だ。純架が続ける。
「しかし犯人が帰宅部だとしても、わざわざこの教室で煙草を吸う必要はありません。自宅で吸ってから登校すればいいわけですからね。それをわざわざ朝早く、しかも危険な、煙草を吸うという行為に走るなんて――しかも教室で、ですよ――、馬鹿馬鹿し過ぎます」
矢原はふん、と鼻を鳴らした。宮古先生が気の迷いから覚めたような目で純架を見つめる。
「じゃあ何故だ? なぜ犯人は、この教室で煙草を吸ったんだ?」
純架はよく響き渡る声で答えた。
「犯人は煙草を吸うのが目的ではなく、その吸殻によって誰かに罪を押し付けるのが狙いだったんですよ、先生」
教室中がひそひそ話で溢れかえる。宮古先生が撃たれた獣のようにうなった。
「そうか……。なるほどな。それで見つけやすい教卓そばに吸殻を置き去りにしたのか。わざとらしくな。言われてみればその通りだ」
俺は矢原の頭を引っぱたいて言ってやりたかった。『探偵同好会』を、桐木純架をなめんなよ、と。宮古先生は頭をかきむしって思考をリフレッシュしている。
「それじゃ僕は、まんまと犯人の思惑に乗せられたわけだ。迂闊だった」
純架は少し慌てて説明を添えた。
「いえ、まだその蓋然性が高いというだけです。普通に考えなしにこの教室で吸った、という可能性も捨て切れません」
純架は慎重に言葉を選ぶ。考え考え口にした。
「でも、そうですね。たとえばこの教室に吸殻を残すことで、先生と生徒たちの間に亀裂を入れよう、と犯人は考えたのかもしれません。そうなると犯人は他の教室の人間だとしてもおかしくはない。今頃別の教室でほくそ笑んでいるのかもしれないですね」
宮古先生は矢原の意見によってはまった陥穽から這い上がったらしい。
「そうなると僕の手に負えんな。放課後、教師皆でミーティングしないと……。分かった。お前ら、もういいから座ってくれ」
俺や他の面々はほっと安堵の吐息をついて座ったが、純架は仁王立ちしたままだ。その表情に凍土の冷厳さがある。頬杖をついてにやにや眺める矢原に正対した。
「それにしても矢原君。君は初めから犯人はこの教室の、しかも帰宅部の人間が怪しいと睨んでいたね? 今も同じ意見かい?」
矢原は先生の許可なく身を起こした。純架を刺し殺さんばかりに人差し指を突きつける。
「煙草を捨てた犯人の考えで、桐木、お前は『誰かに罪を押し付けるのが狙い』だと言った。だが俺はそう思わない。他の考え方もある」
宮古先生は突如始まった生徒二人の言い合いを、土俵そばで相撲を見守る親方然として注視している。純架はまばたきし、もったいぶる矢原に次の台詞をうながした。
「と言うと?」
矢原は満面の笑みで、とうとう本音を口にした。
「正直に言ってやる。俺はお前ら『探偵同好会』が犯人だと思っている」
1年3組に時ならぬ降雪があった――どぎつく冷たい、心胆を寒からしめる降雪が。俺は純架を落ち着きなく見つめることしかできなかった。頼むから負けないでくれ。
純架は軽く両手を広げてみせた。どこまでも美麗である。
「根拠は?」
矢原は両手を腰に当てた。どこまでも醜悪である。
「根拠か。いいだろう、教えてやる。お前ら『探偵同好会』は未だ会員4名で、部活となる規定の6人という人数に至っていない。そこでお前らは、自分たちの存在意義を知らしめ、新たな会員を得るために、『事件とその解決』を欲しがった。本当は今も欲しいんだろう?」
これはその通りだ。純架は認めた。
「まあ、欲しいっちゃ欲しいけどね」
それは矢原の舌を回転させるエンジンに給油したも同然だった。
「だろう? だからさ。お前らは煙草を吸ってその痕跡を残し、それに気づいた宮古先生が解決を依頼してくることを期待したんだ。もちろん犯人はお前ら自身だ。だから解決はあり得ない。そこのところはさっきの通り、容疑者の存在を他クラスにまで広げてうやむやにしようとした。そうして結局このロングホームルームは『探偵同好会』の宣伝に当てられたというわけだ。違うか?」
矢原の推理に教室中が騒然となる。俺や奈緒は好奇の視線で爆撃されて愕然とした。純架はもちろん首を振る。
「違うね。全て君の言いがかりだよ。証拠も何もない」
矢原が獰猛な野獣のように食いついた。
「証拠か。証拠があれば認めるんだな」
「認めるも何も、あるわけないし」
矢原は彼を主役とする独演会を続行した。
「では証拠を皆で見つけ出そう。煙草は紙製でもろいから、犯人は必ず購入時のケースか何かの中に入れて持ってきているはずだ。それから着火するためのライター。ジッポーか百円かは知らないが、それもあるはずだ」
周囲を見渡す。勝ち誇ったような笑みを閃かせた。
「僕、矢原宗雄は、桐木純架か朱雀楼路、飯田奈緒のいずれかの鞄――または机の中――に、それらが入ったままだと断言する」
教室はまたもどよめいた。俺の親友である岩井も長山も、矢原の勢いに気を削がれた様子だ。そんな中、宮古先生は俺たちに聞いた。
「どうする? 矢原の疑惑ももっともだと僕は思う。ここは協力して、鞄と机の中を調べさせてくれないか?」
俺はむくれた。何だ、宮古先生は矢原の言いなりか? しかし奈緒はすぐに恭順の意思を示した。
「分かりました。いいわよね、桐木君」
純架はうなずいた。当たり前だが、特に焦りは見られない。
「僕らが無実であることを証明したほうが良さそうだしね。存分にやりたまえ」
宮古先生が指示を出した。まずは奈緒かららしい。
「じゃ、飯田の前後の茅野、杉森。飯田の鞄と机の中を点検してやれ」
矢原が遮るように挙手した。
「先生、席の近い仲良しな生徒だと、煙草が見つかってもかばってしまうかもしれません。僕と先生でチェックしましょう」
「ええっ、やだ」
奈緒が尻込みした。矢原に持ち物をチェックされるなんて、そりゃ気分のいいものじゃないだろう。だが宮古先生は奈緒を諭す。
「潔白を証明するためだ、飯田。我慢してくれ」
「先生……」
このとき奈緒は失望を隠さない。
「……分かりました。じゃあどうぞ」
奈緒の声に辛味が混じった。宮古先生に対する感情が明らかに減退している。奈緒に惚れている俺としては、ライバルの失点を喜びたいところだった。もちろん今はそんな気になれないが。
鞄は宮古先生が、机は矢原が調べた。櫛やリップ、ノートに教科書、筆記用具。机の上にそれらが並ぶ様を、クラス中が注目している。
何なんだ、今日の授業は。まるで魔女裁判だ。
「ないですね」
矢原が相槌を求めた。宮古先生はうなずく。
「よし、飯田はオーケーだ」
「当たり前です」
奈緒は憤慨を隠し切れない。宮古先生は「疑って済まなかった」と短く謝罪した。
「次は朱雀」
俺の番か。勘弁してくれよな。純架と奈緒、それから仲間の岩井、長山以外は、皆火あぶりに処されようとしている俺を興味深く、面白がって見つめている。
「じゃ、どうぞ」
俺は一歩引いて机と鞄を2人に任せた。矢原は相手が男であるからか、さっきの奈緒よりあからさまにつまらなそうに、乱暴に中身を引っ掻き回した。宮古先生はまだ丁寧で、矢原の粗雑振りが際立つ。
「俺からも聞きたい。『探偵同好会』は帰宅部同然なのか?」
俺はぐっと詰まった。事件の解決依頼がないとき、『探偵同好会』は確かに帰宅部となる。嘘はつけないし、ついてもすぐばれるだろう。
俺は不承不承認めた。
「……はい。そうなります」
白い手が宙でひるがえる。誰かと思えば奈緒だった。その顔色は怒りのために蒼白だ。
「先生、いいですか」
「何だ飯田」
奈緒は感情の起伏を力でねじ伏せようとしていた。それが語尾の震えに見出される。
「矢原君の言うことは分かります。確かに私たちは依頼がなければ帰宅部です。でもだからって時間を無駄遣いなんてしていません。朝早く学校に来るぐらいなら家で寝てますよ、私も桐木君も朱雀君も」
「さあ、そいつはどうだろう」
矢原はしつこかった。宮古先生は猜疑心を上手く御し得ないでいる。
「飯田、桐木、朱雀。とりあえず立て」
結局俺たちは渋々立ち上がらねばならなかった。立っている「帰宅部」は、これで7人。
「さて、お前たちにもう一度聞くぞ。誰だ、煙草を吸った犯人は」
誰も返事するものはいない。
俺は思う。宮古先生はこの問題に熱心になり過ぎている。確かに自分の教卓のすぐ側で吸殻を発見したときは、相当な怒りで胸郭を満たしたことだろう。だが今の吊るし上げのような詰問は少々やり過ぎだ。これ以上踏み込むと教師と生徒の間の絆さえ壊しかねない。それが分からぬ宮古先生ではないはずだが、やはりまだ若さがあるのだろうか。
「先生」
純架が肩の線まで手を持ち上げた。
「何だ桐木」
「ちょっと僕の意見を聞いていただけますか?」
宮古先生は点頭した。矢原の意見に傾倒しているためか、純架の言葉をうっとうしく思っている様がありありと看取される。
純架はしわぶきを一つした。
「帰宅部だから時間がある。だから早朝にこの教室で煙草を吸うゆとりがある。それは分かります」
矢原は自信満々の笑みで聞いている。嫌な奴だ。純架が続ける。
「しかし犯人が帰宅部だとしても、わざわざこの教室で煙草を吸う必要はありません。自宅で吸ってから登校すればいいわけですからね。それをわざわざ朝早く、しかも危険な、煙草を吸うという行為に走るなんて――しかも教室で、ですよ――、馬鹿馬鹿し過ぎます」
矢原はふん、と鼻を鳴らした。宮古先生が気の迷いから覚めたような目で純架を見つめる。
「じゃあ何故だ? なぜ犯人は、この教室で煙草を吸ったんだ?」
純架はよく響き渡る声で答えた。
「犯人は煙草を吸うのが目的ではなく、その吸殻によって誰かに罪を押し付けるのが狙いだったんですよ、先生」
教室中がひそひそ話で溢れかえる。宮古先生が撃たれた獣のようにうなった。
「そうか……。なるほどな。それで見つけやすい教卓そばに吸殻を置き去りにしたのか。わざとらしくな。言われてみればその通りだ」
俺は矢原の頭を引っぱたいて言ってやりたかった。『探偵同好会』を、桐木純架をなめんなよ、と。宮古先生は頭をかきむしって思考をリフレッシュしている。
「それじゃ僕は、まんまと犯人の思惑に乗せられたわけだ。迂闊だった」
純架は少し慌てて説明を添えた。
「いえ、まだその蓋然性が高いというだけです。普通に考えなしにこの教室で吸った、という可能性も捨て切れません」
純架は慎重に言葉を選ぶ。考え考え口にした。
「でも、そうですね。たとえばこの教室に吸殻を残すことで、先生と生徒たちの間に亀裂を入れよう、と犯人は考えたのかもしれません。そうなると犯人は他の教室の人間だとしてもおかしくはない。今頃別の教室でほくそ笑んでいるのかもしれないですね」
宮古先生は矢原の意見によってはまった陥穽から這い上がったらしい。
「そうなると僕の手に負えんな。放課後、教師皆でミーティングしないと……。分かった。お前ら、もういいから座ってくれ」
俺や他の面々はほっと安堵の吐息をついて座ったが、純架は仁王立ちしたままだ。その表情に凍土の冷厳さがある。頬杖をついてにやにや眺める矢原に正対した。
「それにしても矢原君。君は初めから犯人はこの教室の、しかも帰宅部の人間が怪しいと睨んでいたね? 今も同じ意見かい?」
矢原は先生の許可なく身を起こした。純架を刺し殺さんばかりに人差し指を突きつける。
「煙草を捨てた犯人の考えで、桐木、お前は『誰かに罪を押し付けるのが狙い』だと言った。だが俺はそう思わない。他の考え方もある」
宮古先生は突如始まった生徒二人の言い合いを、土俵そばで相撲を見守る親方然として注視している。純架はまばたきし、もったいぶる矢原に次の台詞をうながした。
「と言うと?」
矢原は満面の笑みで、とうとう本音を口にした。
「正直に言ってやる。俺はお前ら『探偵同好会』が犯人だと思っている」
1年3組に時ならぬ降雪があった――どぎつく冷たい、心胆を寒からしめる降雪が。俺は純架を落ち着きなく見つめることしかできなかった。頼むから負けないでくれ。
純架は軽く両手を広げてみせた。どこまでも美麗である。
「根拠は?」
矢原は両手を腰に当てた。どこまでも醜悪である。
「根拠か。いいだろう、教えてやる。お前ら『探偵同好会』は未だ会員4名で、部活となる規定の6人という人数に至っていない。そこでお前らは、自分たちの存在意義を知らしめ、新たな会員を得るために、『事件とその解決』を欲しがった。本当は今も欲しいんだろう?」
これはその通りだ。純架は認めた。
「まあ、欲しいっちゃ欲しいけどね」
それは矢原の舌を回転させるエンジンに給油したも同然だった。
「だろう? だからさ。お前らは煙草を吸ってその痕跡を残し、それに気づいた宮古先生が解決を依頼してくることを期待したんだ。もちろん犯人はお前ら自身だ。だから解決はあり得ない。そこのところはさっきの通り、容疑者の存在を他クラスにまで広げてうやむやにしようとした。そうして結局このロングホームルームは『探偵同好会』の宣伝に当てられたというわけだ。違うか?」
矢原の推理に教室中が騒然となる。俺や奈緒は好奇の視線で爆撃されて愕然とした。純架はもちろん首を振る。
「違うね。全て君の言いがかりだよ。証拠も何もない」
矢原が獰猛な野獣のように食いついた。
「証拠か。証拠があれば認めるんだな」
「認めるも何も、あるわけないし」
矢原は彼を主役とする独演会を続行した。
「では証拠を皆で見つけ出そう。煙草は紙製でもろいから、犯人は必ず購入時のケースか何かの中に入れて持ってきているはずだ。それから着火するためのライター。ジッポーか百円かは知らないが、それもあるはずだ」
周囲を見渡す。勝ち誇ったような笑みを閃かせた。
「僕、矢原宗雄は、桐木純架か朱雀楼路、飯田奈緒のいずれかの鞄――または机の中――に、それらが入ったままだと断言する」
教室はまたもどよめいた。俺の親友である岩井も長山も、矢原の勢いに気を削がれた様子だ。そんな中、宮古先生は俺たちに聞いた。
「どうする? 矢原の疑惑ももっともだと僕は思う。ここは協力して、鞄と机の中を調べさせてくれないか?」
俺はむくれた。何だ、宮古先生は矢原の言いなりか? しかし奈緒はすぐに恭順の意思を示した。
「分かりました。いいわよね、桐木君」
純架はうなずいた。当たり前だが、特に焦りは見られない。
「僕らが無実であることを証明したほうが良さそうだしね。存分にやりたまえ」
宮古先生が指示を出した。まずは奈緒かららしい。
「じゃ、飯田の前後の茅野、杉森。飯田の鞄と机の中を点検してやれ」
矢原が遮るように挙手した。
「先生、席の近い仲良しな生徒だと、煙草が見つかってもかばってしまうかもしれません。僕と先生でチェックしましょう」
「ええっ、やだ」
奈緒が尻込みした。矢原に持ち物をチェックされるなんて、そりゃ気分のいいものじゃないだろう。だが宮古先生は奈緒を諭す。
「潔白を証明するためだ、飯田。我慢してくれ」
「先生……」
このとき奈緒は失望を隠さない。
「……分かりました。じゃあどうぞ」
奈緒の声に辛味が混じった。宮古先生に対する感情が明らかに減退している。奈緒に惚れている俺としては、ライバルの失点を喜びたいところだった。もちろん今はそんな気になれないが。
鞄は宮古先生が、机は矢原が調べた。櫛やリップ、ノートに教科書、筆記用具。机の上にそれらが並ぶ様を、クラス中が注目している。
何なんだ、今日の授業は。まるで魔女裁判だ。
「ないですね」
矢原が相槌を求めた。宮古先生はうなずく。
「よし、飯田はオーケーだ」
「当たり前です」
奈緒は憤慨を隠し切れない。宮古先生は「疑って済まなかった」と短く謝罪した。
「次は朱雀」
俺の番か。勘弁してくれよな。純架と奈緒、それから仲間の岩井、長山以外は、皆火あぶりに処されようとしている俺を興味深く、面白がって見つめている。
「じゃ、どうぞ」
俺は一歩引いて机と鞄を2人に任せた。矢原は相手が男であるからか、さっきの奈緒よりあからさまにつまらなそうに、乱暴に中身を引っ掻き回した。宮古先生はまだ丁寧で、矢原の粗雑振りが際立つ。
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