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カップルによる納刀の儀
焦らされて ※
しおりを挟む「……ぁ……あ……あ…………」
開きっぱなしの口から溢れる唾液もなんの意味ももたない母音も、自分ではどうすることもできなくて、怠い腕をなんとか持ち上げ、おなかの上に吐き出した精液を拭ってくれていた神崎に向かって助けを求めるように差し出すと、髪を撫でながらそっと抱き締めてくれて、溢れた唾液を舐め取り、身体をさすってくれる手つきがあまりに優しくて、さっきまでの意地悪な言動は幻だったんじゃないかとすら思えてくる。
「大丈夫?」
「……はぁっ……は……ふ……」
なかなか整わない呼吸のせいでうまく返事ができず、とりあえずこくこくと頷くと、心底愛しいものを見るような目で見つめられて顔中にキスの雨を降らされるのがくすぐったいけど嬉しい。
達したあとのこのドロドロに甘やかされる時間が堪らなく好きで、この瞬間が永遠に続けばいいのにとすら思う。
暫くそのまま髪を撫でられたり身体をさすられたり顔にキスされたりしながら横になっていたら、段々呼吸と脈拍が落ち着いてきて、その途端、胸への刺激だけでイッてしまったという事実をはっきりと認識した俺は、急激に込み上げてきた恥ずかしさに堪えられず、脇に丸まっていた掛け布団を手繰り寄せ、もぞもぞと潜り込んだ。
「……なにしてんの?」
「……冬眠」
「ふふっ、なんで冬眠?」
「………お気になさらず……」
「いや、気にするでしょ」
布団の上から軽く、ポンポンとリズミカルに叩かれるのが心地良い。
心地良いけど、ずっとこのままでいる訳にもいかないのに、勢いで隠れてしまったものだから布団から顔を出すタイミングが分からない。
「もしかして、恥ずかしいの?」
「…………」
「おっぱいだけでイッちゃったから?」
「っ…………」
そうすぐに図星を突いてくれるなよ。
余計出ずらくなるじゃんか!
もうちょっとこうさぁ……別の言い方とかさぁ……あるんじゃないの?
そうは思っても、言われてしまったものは仕方ないし事実なのもまた仕方ない。
さてどうしたものかと考えていると突然、布団の上からポンポンしてくれていた手と抱き締めてくれていた腕の温もりが消えた。
なんの物音もしなくなってシーンと静まり返った肌寒い部屋。
恥ずかしがってばかりいる俺に呆れてどこかへ行ってしまうのかと、言いようのない不安に襲われ布団を鼻のあたりまで下げると、ニヤニヤしながらこちらを見下ろす神崎と目が合った。
「あ、出てきた」
「……っ?!な…………っ」
「どっか行っちゃうかと思った?」
「ば、ばか……っ!」
騙されたことに気付き、再び布団の中に潜り込もうとするも、物凄い早ワザで布団を剥ぎ取られて遠くに放られ、呆気に取られている内に覆いかぶさってきた神崎に両腕を押さえ付けられてしまって、これではいよいよ隠れる場所が無い。
「……顔真っ赤」
「……うるっさい」
「恥ずかしかった?」
「…………ん」
「でも可愛かったよ」
隠れる場所を取り上げて、隠そうとする腕すら押さえ付けて。
そんな意地の悪いことをしてきているというのに、話し掛けてくる表情と声はすこぶる甘くて優しくて、そのギャップに風邪でもひいてしまいそうだ。
「……続き、していい?」
散々いいようにしてきたくせに、こういう時の確認は怠らないところも。
本当に大事にされてるんだと実感して、もっともっと好きになる。
もちろん断る理由なんてどこにも無くて小さく頷けば、嬉しそうに微笑んで身体を起こした神崎は俺の胸元やおなかにキスをしながら下半身の方へと降りていった。
腹筋とは無縁のふにふにしたおなかは、神崎のお気に入りの部位だ。
案の定、久々にじっくりと触れたそこの感触に感激したみたいで、ずーっとそこばっかり啄んでくるからちょっと……。
「ねぇ……ふふっ、くすぐったい……っ」
「はぁ……ほんとこのむちむちたまんない……」
「ちょっ、と、きいてる……っ?」
「聞いてる聞いてる」
本当に聞いてはいるんだろうけど適当な返事から、今それどころじゃないからという圧を感じる。
ちゅっ、ちゅ、と音を立てて啄んだり、甘噛みされたり、ほっぺたを擦り寄せられたり、手のひらで撫で回されたり、揉まれたり……。
しつこくそんなことを続けられていたら、くすぐったかったはずなのになんだか段々変な気分になってきた。
「……は……ぁ……ねぇ、もうそこ、おしまい……っ」
「……なんで?勃ってきちゃったから?」
「……っ、いちいち、いうなっ、ばかぁ……!」
「いてて」
指摘されたくないことをあっさりと指摘されて、恥ずかしい気持ちを紛らわすために彼の脇腹のあたりをげしげしと蹴っ飛ばしてみたけど、いててと言いつつ楽しそうな顔をしてる神崎も、蹴るたびにプルプルと揺れる自分自身のそれもなんとも憎らしい。
(……持ち主の意に反してご機嫌に揺れてるんじゃないよ、まったく!)
なんて無茶なことを考えながら攻撃を続けていると、足首をぱしっと掴まれてそのまま左右に大きく開かされた。
「ちょっ……やめ………!」
「うーん……絶景」
慌てて手を伸ばし、隠してはみたものの、生憎全てを覆えるほど俺の手のひらは大きくない。
勃ちあがって主張しているそこだけは辛うじて隠せていても、その下にぶら下がってるのだとか、後ろの……入口?出口?までは完全には隠せなくてあまり意味が無いような気もする。
それでも何もかもをさらけ出しているよりはマシかとそのまま隠していたら、突然べろりとその手を舐め上げられて、ひっと引き攣った声を上げてしまった。
「……手、どけて?」
「…………っ」
優しいけど、有無を言わさない響き。
命令、とまではいかないけど、俺の耳がこの響きをとらえた瞬間、一気にそれが脳まで駆け上がり、全神経に向けて従えと司令を出す。
つまり結局俺には彼の言うことに従う以外他に無くて、ゆっくりとそこから外した手はすぐに彼の手に捕まり、所謂恋人繋ぎのように指を絡めて握られてしまったから、顔に続いてまたしても隠すことが出来なくなった。
もう何度も見られたそこ。
さっきだって、息が当たるほどの距離で見られた。
だけど何回見られたって恥ずかしいもんは恥ずかしいし、それ以上に問題なのは、その恥ずかしさから快感を得てしまっている自分がいるってこと。
内ももをさわさわと撫で回しながら、肝心な場所には一切触れずにただじっと見つめられているだけなのに、そこは萎えるどころか硬さを増していて、生暖かい粘液が先端を覆い始めてる。
それに、これからされるであろうことを想像しただけで下腹に力がこもり、それと連動して愚息もぴょこんぴょこんと跳ねるからもう一刻も早くなんとかして欲しい。
そんな俺の願いが届いたのか、神崎の頭がゆっくりと下がり始めて、すぐにやってくるだろう刺激に備えてギュッと目を瞑った。
それなのに。
「……っん……ぁ…………」
俺の期待を見事に裏切って、内ももに降り立った神崎の唇。
首筋にされたのと同じようにぢゅうっと大きな音を立てて吸い上げられ、それを何度も何度も場所をずらし、左右の足を入れ替えて繰り返されたから、多分俺の内ももには赤紫色の痕がびっしり残っているだろう。
「もぉ……しつこい……っ」
「んー……でも、やっと手に入れたんだからちゃんと俺のだってシルシつけとかないと」
そんなことしなくたって、俺はもう頭のてっぺんからつま先まで全部ちゃんと神崎のなのに。
こうして恋人同士になるまで知らなかったけど、神崎って意外と独占欲が強いタイプなのかもしれない。
だけどそれも彼からの愛情のあらわれだと思うと悪い気はしないから、神崎の気の済むようにさせてやることにした。
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