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忘れられた悪魔
愛しい温もり
しおりを挟む『…………カ』
(……ん……なに……)
『………ルカ』
(…………だれ?)
「ルカ」
「……ぇ………り、ひと……?」
あたたかくて気持ちがいい、真っ白な光の中で名前を呼ばれて。
ゆっくりと瞼を持ち上げるとそこには、いつも通りの優しい笑顔を浮かべたリヒトが立っていた。
「…うそ……え、なんで………?」
「ルカ、おいで?」
こちらに向かって両腕を広げ、優しい声でおれを呼ぶ愛しい人。
唇が震えて、鼻の奥がツンとなったと思った瞬間、両方の目から大粒の涙がぽたぽたと零れ落ち、それを拭うこともせずに大好きなその腕の中に勢いよく飛び込んだおれをぎゅっと抱き留めてくれた彼は、間違いなくいつものリヒトだった。
「……っう、なん、で?りひ、と、おれの、こと、忘れちゃっ、た、んじゃ、ない、の…っ?」
「ケンさんとクオンが、俺の記憶を取り戻してくれたんだ。辛い思いさせてごめんね。もう、大丈夫だよ」
「……うぅぅ…っ、よか、たぁ……!」
わんわんと大声を上げて泣くおれをもう絶対に離さないからとでも言うように強く抱き締め、ほっぺたにキスをして零れ落ちた涙を吸い取ってくれて、耳元で何度も愛してると囁いてくれるリヒト。
おれの涙が落ち着くまでずっとそうしていてくれた彼は、ようやくおれの涙が落ち着いてきた頃、今度は唇に沢山甘いキスをくれた。
たった一日足らずだったけど、本当に辛くて、悲しくて、苦しくて、永遠にも感じられるような時間だった。
でも、それももうおしまい。
これからはまた、リヒトと二人寄り添って幸せな日々を過ごしていける。
良かった。
本当に、良かった…。
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