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一章

レオンの心

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レオンside

は最近声が出る様になってきた。

まず、自分の事をなんて言っていいのかわからなかったからセドが言っている事を真似してみた。

「ねーえー、レオンー、ワシの事イサギさんじゃなくてさ、お兄ちゃんかイサギお兄ちゃんって呼んでよー」

「...イ..サギ...さん」

だって、お兄ちゃんっていうのはじゃないと呼べないんだって孤児院の誰かが言ってた

俺が呼んだらダメなんだ、だって俺はじゃ無いから...

「家族......じゃ、ない...から」

そう言うとイサギさんは丸く目を見開いてこっちを見ていた

「ガーンッ!!えっ、ちなみにレオン、家族って意味わかる?」

「......血、繋がってる...って言ってた」

「孤児院の人が言ってた?」

俺はコクリと頭を縦にふる

「あのね、レオン。血の繋がりがあるのが家族って言うのは本当だよ、でもね、血の繋がりがなくても家族にはなれるんだよ」

今度は俺が目を丸くする

それは本当なのだろうか

もし、もしも本当に血の繋がりがなくてもになれるのだとしたら、俺はイサギさんと...

「セドに確認したんだ、養子縁組制度というものがあってね、書類を提出したら書類上でになってしまうけど、家族になれるんだよ。」

家族...

「でもね、ワシは書類とか、血の繋がりとか、そう言うのがなくてもレオンの事家族だととっくに思ってたんだけど...レオンはどうかな?」

俺は...本当にこの人の......イサギさんのになれる?

でも、どうしてイサギさんは俺にここまでしてくれるのだろう

会ったばかりで優しくて...

温かくて...

セドも俺を助けてくれた...

あの時セドに助けてもらった時の事は今でも夢に見る

怖かったけど、初めての優しい思い出

あの日から俺はイサギさんに出会って、ミリーさんにも優しくしてもらって...

三人とも俺にとって、とても...とても...

それにイサギさんは行き場のない俺を引き取ってくれた

昨日初めてイサギさんと長い時間離れ離れになった

前は誰もそばにいない事が当たり前だったのに、いつの間にかイサギさんが側にいて頭を撫でてくれたりギュッとしてくれたりするのが当たり前になっていた。

もう会えないのかと、俺の事が嫌になって何処か別の所に行ってしまうのかと思うと胸が張り裂けそうに痛くて苦しくてグルグルして...

でも、ちゃんと帰って来てくれて

セドの家に迎えに来てくれて、宿に一緒に帰って寝て...

今もこうして書類とか血の繋がりとか関係なく家族だって言ってくれて...

そうか、俺は嬉しいのか

すると目から水...涙が溢れて来た

「ふっ、...ゔあぁぁんっ、俺もっ、...家族っ!なる...っ!イサギさ...お兄ちゃんとっ...家族っ、なるの...うあぁぁぁん!」

するとお兄ちゃんも目から涙を流しながら勢いよく俺をギュッと抱きしめる

「あぁ、そうだな、家族になろうレオンっ」

もう、何もいらない、これ以上望むものは何も無いから...

女神様、どうかこの幸せを奪わないで下さい

セドやミリーさん、お兄ちゃんと俺を離さないで下さい

お願いします

お願いします...














「レオン、起きれる?」

体を軽くゆすられる

「ん...」

あれ?俺眠ってて...

俺はハッとして、もしかして今までの出来事は夢なのではと思って焦りながらお兄ちゃんを見つめると

「大丈夫、夢じゃないよ。早速だけど今から養子縁組の書類を提出しに行こうかと思ってね」

「え...っ」

「別の日にする?」

そう言って笑うお兄ちゃん

俺はフルフルと慌てて首を横に振る

「じゃあ行こうか、レオン。」

そう言って出かける準備をするとお兄ちゃんが手を伸ばしてくれたのでその手を掴んで手を繋いでお兄ちゃんに着いていく。










そうしてついた場所はお城だった

お兄ちゃんは門番の人に何かを言うと門を開けて通してくれたので俺はお兄ちゃんと手を繋いだまま門を通り抜ける

迷路みたいな道を歩いて行くとある扉の前で止まってコンコンとお兄ちゃんが扉を叩いた

「失礼するよ」

そう言ってガチャリと扉を開けて中に入るので俺も着いて行く

「はぁ、せめて返事を待ってくれ、イサギ。」

あ、この人は見た事がある...

「おや、君は確かレオンと言ったか」

俺はどうして良いか分からずお兄ちゃんの後ろにサッと隠れる

「今日はワシとレオンの養子縁組の書類を提出しに来たんだけどさ、ここにサインしてくれよ第二騎士団団長殿。」

「......はぁ、君はいつも驚かせてくれる...この書類は、あぁ、ここに貴族の署名がいるのか。」

「知り合いの貴族なんてワシには第二騎士団団長殿くらいしか居ないし」

「......君は、レオンはイサギと家族になるのは望んでいるのかい?」

そう言って俺に目線を合わせて話しかけてくる団長さん

「ん...お兄ちゃん、ずっと一緒、家族になろうって、言ってくれた......から、嬉しい。」

「......そうか、分かった、私がこの書類に署名しよう。これで良いか?イサギ」

「ああ、ものすごく頼もしいよ、ありがとね第二騎士団団長殿」

「この書類は私が責任を持って提出しておこう。そして丁度良かった、イサギ、この間のセドの剣術の件だが、私が引き受けよう。私の方で剣術の習得ができたら次は私の知り合いの第三騎士団の者を紹介するとセドに伝えてくれ、詳しい日程はまたイサギに手紙を出す」

「ああ、分かった。無理を言ってすまないな、セドの事、よろしく頼む」

そう言って頭を下げるお兄ちゃん

「意外だな、イサギが礼儀正しい」

「できるだけセドには強くなってもらいたいからね、まあこっちにも色々な事情があるから。そうだ、ついでにセドに剣術指南をしている所をレオンにも見学させてもらえないか?」

俺?どうして?またお兄ちゃんと離ればなれ?

そう思うとたまらなく胸が苦しくなり、お兄ちゃんにギュッと抱きつく

「レオン、ワシはね、レオンにも自分を守れるくらい強くなって欲しいんだよ。レオンの容姿はとても目立つんだ。また悪い奴らに目をつけられて連れ去られたらと思うとワシは居てもたっても居られなくて仕事に行けないんだよ?」

「......お兄ちゃん...帰ってくる?迎えに...、くるっ?グズッ」

「勿論!レオンはワシの家族だからね!大好きだよ、レオン」

そう言ってギュッと抱きしめてくれるお兄ちゃん

俺もお兄ちゃんが大好きだ

そう思いながら抱きしめ返す

「本当に仲がいいんだな、安心したよ」

団長さんが何とも言えない顔で、でも優しい顔で笑いながらそう言った。

「さ、家に帰ろう、レオン」

「ん...帰る」

扉を出る時チラリと後ろを振り返ったら団長さんがヒラリと手を振っていたのでおれもおずおずと手を挙げてすぐに下ろすと慌ててお兄ちゃんの後をついて行った

「レオン、手を繋ごうか」

「ん」

俺はお兄ちゃんの温かい手を握ると何故かとても嬉しくなり、涙が溢れて来た

「どうした?レオン」

「わか...らなっ、ここがポカポカする...のに、っ」

「あぁレオン、それはね、嬉し泣きって言うんだよ、嬉しくて嬉しくてどうしようも無いと涙が出る事があるんだ」

そうなのか...

感情っていうのは難しい...

嬉しいと涙が出るのか、お兄ちゃん達と居るとたくさんの感情が湧き出てきて忙しいな

そう思いながら俺は涙を流しながらお兄ちゃんと一緒に宿に帰って行った



end
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