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一章

やっと

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「イサギ様...」

ふと声をかけられ三人の方を向くとミリーさんはセドが寝ているベッドの端に力尽きて寝ていた

「ミリーさんはそのまま寝かせてあげてね、ろくに眠れずに憔悴しきっていたから。」

「は、はい...、あのっ、俺、イサギ様を危険な目に遭わせてしまって...本当にすみませんでしたっ!」

ギュッと目を瞑り下を向いて両手を硬く握るセド。

ワシはゆっくりセドの方へと向かう

「その認識は改めようか、ワシは危険な目にはあってないしむしろ巻き込んだのはこちらだろう。ワシを狙った計画だった。そこに巻き込まれたのはセドだ。謝るならこちらが謝らないと。すまなかったね、セド。」

そう言ってワシは頭を下げた。

「イイイ、イサギ様!俺なんかに頭を下げてはっ!」

「あれ?セドは知らないの?対等な友人関係って言うのはこうやって頭を下げて謝っても何ら問題はないんだよ?」

するとセドが目を見開いて

「ゆゆゆ、友人関係!?」

と面白いくらい動揺していた。

「あれ?違うの?ワシはもうセドとは友人関係にあると思ってたけど...」

そう言ってわざとしゅんとした表情を見せればセドは余計に慌ててゆ、友人です!と言った。

「よかった、友人じゃないなんて言われたらどうしようかと思ったよ」

ニコリと笑うとセドが顔を真っ赤にする。

「ま、謝るのはこれで終わりね、セドは三日間も眠っていたんだからきちんとご飯を食べて療養する事。」

「はいっ、分かりました!イサギ様」

「......うーん」

「どうしたんですか?」

「友達なんだから呼び捨てで良いのに」

「イサギ様を呼び捨て!?ででで、出来ません!」

「いや、できるよ。ほら、イサギって呼んでみて」

「イ」

「イ?」

「イサ...ギ.........さん」

「おしいっ!まぁ、及第点としておこう。今度からはそう呼ぶように。」

「は、はいっ、イサギさん...っ!」

セドには話しておかないといけないな、今回の事件の内容を。

「セド、今回の事件には奴隷商が絡んでいて、そこのボスが懸賞金のかかっていたタチの悪い奴だったらしい。部下は全員ワシが始末してボスだけ第二騎士団団長殿に引き渡した。ここまでは良いかな?」

「は、はいっ」

「そこでだ、セドの他にも捕まっていた人が居てね、皆元いた場所に帰ったかちゃんとした孤児院に行くことが決まった。」

ここまで話すとおのずとワシとセドの視線がこの小さな男の子に目が行く

「この子は...」

「そう、セドが助けた男の子だよ。一時的にワシが預かっている。セドにもどうしたいか聞いておこうと思って。セドが眠っている間に孤児院に行くかと聞いたけど、目が行きたくないと訴えていてね...」

グズグズと鼻を鳴らしながらセドのお腹に抱きついて離れない男の子。

真剣に何かを考えているセド。

「イサギさん、俺、今考えていることがあって、でもそれって周りの人に迷惑をかけるんじゃないかって、そしてイサギさんにも...もう少し考えさせてもらっても良いですか?」

「...分かった。時間はたくさんあるんだ、ゆっくり考えると良い。特にまだ体調が万全でない状態で考え事しても良い答えなんて見つからないからさ、明日もお見舞いにこの子供と一緒にくるから暫くゆっくりすると良い。」

「あっ、ありがとうございます!イサギさん!」

「うん、じゃあそろそろおいとましようかな、あ!そうだ、ミリーさんにもワシの事はイサギさんと呼ぶようにと言っておいて」

「えっ!わ、わかりましたっ!」

そしてセドにひっつき虫になっている男の子の頭をポンポンと軽く手を乗せると顔をあげ、こちらをじっと見る。

「今日は帰ろうか、君の名前も今度セドやみんなと一緒に考えよう。それに明日も明後日もセドの所に行くから心配するな、セドは居なくなったりしないから。」

「......」

じっとワシとセドを交互にキョロキョロと見るとコクリと頷いてワシの手を握った。

これは迷子にならないようにとワシが手を繋ぐと言う事を教えたらこの三日間で初めて自分からできるようになった事だ。

「じゃあね、セド、また明日来るよ。ほら、君もこうやって手を振ってごらん?セドが喜ぶよ」

「......」

フリフリ

するとセドが笑ってまたねと言って手を振りかえした。

その笑顔を見て男の子は自分の胸あたりの服をギュッと握った。

ワシも笑顔になりながらローブのフードをかぶってセドの家を後にする。

「今さっきセドが笑ってまたねと言ってくれただろ?それを見てこみ上げた感情が分からない?」

「......」

男の子はジッとワシを見上げながらキュッと強めに手を握り返す。

「その感情はね、嬉しい、楽しみ、そう言った感情だよ、おもにポカポカとした暖かい気持ちにしてくれるんだ。」

「......」

するとまたワシを見上げて少し困惑気味な目をしていた。

「ふふっ、あぁ、そうだね、その気持ちが沢山あり過ぎると苦しくなる時もあるね、でもそれはとても幸せな事だ。」

男の子が下を向いてしまったのでワシはまだ難しかったかな?と言って鷹の宿までを無言で男の子と歩く。

「ほら、宿が見えてきたよ。明日もセドの家に行くんだろう?早く寝て早く起きてお見舞いの品を選んで持っていこう。」

「......」

コクリ

「よしっ、良い子だ」

そう言って男の子の頭を撫でくりまわした。




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