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9年後

32.手紙の返事

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手紙を持って部屋を出たアロナを見送りつつ、先程気になっていた絶版の本を手に取り読む

なにこれすごく面白い、こんな本を持っているなんてずるいぞアロナ!

実は速読が出来るので次々と本を取って読んでいく。

読み終わった本?

それはほら、そこら辺にポイっとね

俺の部屋はそれをいつもやってしまうからどうしても散らかってしまう。



それから約1時間くらい経った

あらかた興味のある本を読み終えたくらいで部屋のドアが開いた

ガチャ

「イズー...なっ、なっ、なにをどうしたらこんな短時間で部屋が汚くなるのですか!!」

「いやー、ごめんて、俺片付けが苦手でさー、それに面白い本ばかり置いてあるこの部屋が悪いんだって」

「いや、責任転換しないでください」

アロナから怒気を感じたのでここはおとなしく謝っておくのが無難か。

「ごめんなさい」

「まったく、貴方という人は。次やったら許しませんからね!」

どうやら許された様で良かった

「それで?返事は貰えたのかな?」

「ええ、私がアルフレッド殿下から預かった手紙だと言って書いてもらいました。まぁ、少し疑われてはいましたがね、本当に私が直接アルフレッド殿下に貰ったのかと。」

「それは苦労をかけたな」

「本当ですよ全く。貴方は昔から変わりませんね」

「そうか?」

「はい、これが手紙の返事です。」

そう言うとアロナが手紙を俺に手渡してきた。

「確かに受け取った、ありがとなアロナ。」

「いえ、このくらい。それにしてもイズ、メイル殿下には会って行かないのですか?」

「なんで?」

「なんでって...あの頃の私たちは弱かった。イズに嫌われ役をやって貰わなければメイル殿下の心すら助けられなかった位に。でも今は違います!みんな強くなりました、メイル殿下だってきっと本心では貴方に会いたがっているはずですっ!」

「ありがとう、でも俺の答えは変わらない。」

「イズっ!」

「また何かあったらよろしくな、アロナ、じゃあまた。」

「待って!」

俺はアロナを無視して転移で自分の部屋に戻った。

「遅かったな、イズリル。手紙はどうだった?」

「あぁ、無事返事を書いてもらったさ。アロナに全部任せたけどな」

「ふん、そんな手紙など燃やしてしまえばいいものを。」

「物騒ですね、ディアンさん」

本当はアロナに会うのもどうしようかと思ってたんだけど、アルフレッド殿下とも約束しちゃったし、約束を破るわけにはいかないからなぁ。

「燃やさないならそんな手紙どうすると言うのだ」

「あのねー、次王城に行く時に渡すに決まってるだろ?みんなが皆んなディアンじゃ無いから燃やさないんですー。」

ディアンには本当に人の心というものが欠けている気がする。

出来るだけ早めに行きたいなぁ、丁度明後日なら行っても良いかもな、よし、明後日行こう。

「明後日王城に行くけどディアンも「行く」...はい。」

食い気味で返事をしてくるディアン。

「別に来てもディアンにはつまらないんじゃ無いか?」

「イズリルと離れるなど考えられんな」

もう好きにしてください。

「さてと、夜も遅いし今日はもう寝ようかな」

「そうか、なら寝るぞ」

そう言うとディアンは俺の布団に入る

...いつまで俺はディアンの抱き枕になれば良いんだ?

「はぁ、もう諦めるしか無いよな、うん、深く考えるのやめよう。」

俺もディアンの隣に横になる

「おやすみ」

「ああ。」





ーーー王城ーーー

さてと、今日は軽く付与魔法の結果報告がてらアルフレッド殿下に会ってさっさと帰るか

「用事をさっさと済ませて帰るぞイズリル。」

「はいはい、分かったよ」

俺はため息をつきながら用事を済ませることにした。

まずは...

「あれ?イズリル殿!」

そう言って走ってくるのはアルフレッド殿下だ。

なんと言う偶然。

これは用事が早く済みそうだ。

「イズリル殿!こんにちは!」

「こんにちは、アルフレッド殿下。お元気そうで何よりです。」

そう言って俺はニコリと笑うとアルフレッド殿下は照れた様に笑った

「よ、良ければその...僕の部屋に...」

「分かりました、丁度手紙のこともありますし。」

「手紙っ!」

そう言って笑うアルフレッド殿下はとても嬉しそうだ。

「は、早く部屋に行きましょう!イズリル殿、ハーバー殿!」

「はい、...ディアン、そんな凶悪な目つきで殿下を見ない!すみませんアルフレッド殿下。」

「い、いえっ。」





場所は移りアルフレッド殿下の部屋に着いた

「お、おかけ下さい!」

そう促されて俺とディアンはソファーに腰をかける

「では早速、預かってきた手紙はこちらです。」

「わぁ!あ、ありがとうございます!今ここであけて読んでも良いですか?」

「勿論ですとも!」

俺はニコリと笑う。

アルフレッド殿下はそんな俺の返事にホッとして手紙を開けて読み始めた。

そうすると徐々にアルフレッド殿下の大きな目に涙が溜まりはじめた。

「うっ、うぇっ、ゔぅーっ、うあぁーーんっ!兄上ーっ!」

そう言って泣きじゃくるアルフレッド殿下。

そんなアルフレッド殿下をなだめる為、俺は近くに行き頭を撫でる。

そうするとアルフレッド殿下は俺に抱きつくと

「あ、兄上がっ、僕のこと大好きだってっ、兄上、なにも悪く無いのに辛い思いさせてごめんってっ...兄上がっ、兄上がっ!うわぁぁーーんっ!」

「その手紙、宝物ですね」

「んっ、うんっ!た、宝物っ」

そう言って泣きながら笑うアルフレッド殿下。

暫くそうしていたら泣き疲れたのか、寝てしまった。

「私のイズリルに抱きつきながら寝るとは万死に値する」

いや、それを毎晩やってる貴方が言うのはどうかと思いますけど。

とりあえず使用人の人を呼んでアルフレッド殿下をベッドに運んでもらい、俺とディアンは付与魔法の研究結果を提出して公爵邸に帰る事にした。

いやー、頑張って手紙をメイルに届けた甲斐があったな。

アロナにも久しぶりに直接会って話せたからよかった。

そう思いながらディアンと一緒に公爵家の馬車に乗って帰宅した。
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