青い月にサヨナラは言わない

Cerezo

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EP4 闇に溶ける懺悔4 後始末

死屍累々

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 その後、全員で地表まで降りた俺達。
 瑞雪達もすぐにそれに気づき駆け寄ってくる。
 結界はまだ張られたままで、壊された形跡もない。何とか最悪の事態は免れることが出来たのだ。
 レイは素直に俺達についてきた。
 ただ、一言も発さず唇を真一文字に引き結んだまま。 
 涙すらも必死に堪えているのだろう。別に泣いたっていいのに。
 周囲の建物はぐちゃぐちゃで、コンクリートも割れている。
 泥は消え失せており、何によってここまでの損害を被ったのか経緯を知っている人間でなければわからないだろう。
 美しく澄んだ空は俺達の心とは正反対。
 世界はどうあろうと俺達に関係なく回り続けるのだと嫌でも理解させられる。
 
「お前たち、無事だったか」

「それはこっちのセリフかも」

 瑞雪が俺達が生きている姿を見て胸をなでおろす。
 俺が言うとトツカがじぃっと瑞雪を見ていた。

「瑞雪が死にかけたが、問題はない。無事だ」

「……言わんでいい」

 瑞雪はバツが悪そうに目を逸らす。瑞雪が死にかけるのはいつもの事……とはいえ、それで済ませたくはない。
 いつかコロッと死んでしまいそうで恐ろしい。
 見れば全身薄汚れているし、濡れている。風邪をひくほど軟ではないだろうけど、支部に戻って服は着替えたほうがいいのは間違いない。
 ちなみに夏輝は俺が肩を貸して何とか立っている状態だ。

「全員生きてるぅ。冬真達も皆問題なさそーだったよぉ」

「ベルナルドさんが死ぬわけないッス!エヴァン達は知らねーっスけど」

 夜一とヴェルデも五体満足で無事。なんだかんだ優秀な奴らだ。
 そんな四人の視線は俯いたままのレイへと注がれる。
 夜一とヴェルデは何も言わない。トツカも瑞雪の判断に任せるだろう。
 夏輝が何か言おうとして、言葉を詰まらせる。
 この場にシイナがいないことが答えの全て。皆が察している。
 そして、レイは俺達に多大な損害を与えようとした相手だ。
 傭兵たちは薬の事やチョコエッグの事件の事を知らないが、レイは違う。
 知っていて勅使河原に与していたし、エデンのスパイだ。

「……」

 瑞雪は苦い顔をしている。これが朝陽だったら、悩むことなくレイを今すぐこの場で殺していたかもしれない。
 彼は、優しい。そして真っ当な人間としての感性を持ったままの人間だ。
 そんなもの、御絡流の会に所属する上で足手まといにしかならないだろうに。

「……俺は、死ぬわけには、いかない。シイナが、幸せになれって、言ったから。だから、死ぬことは、できない。でも、俺がしたことも、理解している。俺のせいでたくさんの地球人が死んだ。地球人がエデンでしたことと同じことをした」

 言葉を紡ぐ。その声は驚くほど静かで、冷静だった。

「殺されたくはないけど、殺す道理はある。だからそれを止めることは出来ない。……俺を猟犬にするメリットもないし、な」

 弱いから。レイに戦う力はもうない。所持しているゴーレムたちは破壊されてしまったのだから。
 逃げる事をしないのは多分、罪悪感と絶望と、希死観念からだろう。
 自ら死を選ばないのは、シイナの最期の言葉から来ている。
 勿論、そんなこと瑞雪は知らない。
 知っているのは俺と夏輝と、カタマヴロスだけだ。
 瑞雪の目がレイを射抜く。そして薄い唇を開いた。

 

 

 
 
 

 
 
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