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EP4 闇に溶ける懺悔3 手よ届け
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「人型!?あ、本当に……」
「人型のくせして翼もないのに空を飛ぶって反則だろっ」
夏輝とレイが俺の言葉に竜の背から身を乗り出し、眼下を確認する。
泥狐の足元には歩くたびに巨大な津波が巻き起こり、その波が魔物によって構成されていることがわかる。
群体恐怖症の人間には間違いなくキツい光景だった。
波は散り散りになり、街の方へ飛んでいくもの、俺達へ向けて飛んでくるもの、様々だ。
一つ言えるのは、人型になったことでかは知らないが、今まではてんでばらばらに襲ってきていたものが確かな指向性を持ち始めたということ。
俺達へ向けて、まるで渡り鳥の大群のように人型が押し寄せてくる。
裸の人間が押し寄せてくる姿は不快感と悍ましさしかない。
竜が息を吸い込み、広範囲へ炎ノブレスを吐き出す。
長い首を動かし、全方向を薙ぎ払う。
チリチリと頬を焦がす熱に身を乗り出していた夏輝とレイが慌てて首を引っ込めた。
「追ってきているとはいえ、確実にシイナの頭は見えてきてる。あと少しだね……」
「つっても、空を飛んで近づけば近づくほど、穢れがとんでもないのが俺でもわかるぜ。竜の俺はまだキャパシティがあるが、お前らちびたちはそうでもないんじゃないか?」
「それは、確かに……」
夏輝の言葉に、カタマヴロスは俺達を気遣う様子を見せつつ、右腕を薙いで狩り残した泥人形を吹き飛ばす。
しかし、弾けた泥から視認できるほど濃密な穢れが噴出する。
それを見るだけでも強い吐き気を覚え、俺は思わず尻尾と耳をへにゃりと垂らす。
レイの顔も真っ青を通り越して土気色だ。
俺だって間違いなく似たようなもんだろう。正直、嘔吐どころか魂ごと口からまろびでてしまいそう。
「正直、これ以上はかなりキツいぜ!遠くから木っ端みじんに破壊したほうがよっぽど楽なレベルだ!」
竜の声にも少しの苦痛が混ざる。
「……俺が」
ひとつ深く長く息をして、夏輝が刀の柄を握りなおす。
夏輝の顔は今まで見たことがない位に険しく、緊張した様子だった。
俺はそんな夏輝を視界に入れつつ、握り締める手に俺の手を重ねる。
そして首輪越しではなく手を通して直接、俺自身が持つそう多くはないマナを限界まで彼へと渡した。
少しでも夏輝の力になりたかった。
苦しみや重責を分かち合いたかった。だって、俺は昨日の夜は何もしないどころか捕まって足を引っ張ってしまった。
それがなければ、今のこの状況にはなっていなかったかもしれない。
「シイナ!しっかりしろっ!頼む、正気に戻ってくれ……っ!俺はここにいるからっ!お前を迎えに来たんだ!」
レイがその間にも必死に訴える。
訴えつつ、レイもまた夏輝の腕を掴みありったけのマナを送り込んだ。
マナを通して伝わってくる哀しみ。
それはとても深く、胸を鋭い刃で貫かれるような苦しみ、痛みを感じる。
もしかすると、シイナの事だけではないのかもしれない。地べたを這いつくばり、泥水を啜って生きてきた。
その苦しみは他の誰も理解することが出来ないだろう。
皆、生きている限りそれぞれの苦しみがあるから。
「頼む、夏輝……俺には、これしかできないから」
レイの言葉に夏輝は深く頷き、イオを練り上げ始める。
莫大な光のイオ。
夏輝の体表を覆い、刀へと流れだす。やはり、鞘からは抜けないようで、鞘越しに光の刃が形成されていく。
それこそ、夏輝の身の丈を超える程にまで膨れ上がった。
重くはないらしく、竜の背の上で立ち上がり刀を構える。勿論、脚力強化と風魔法で体幹を支えつつだ。
「レイのマナを混ぜることで、シイナがもしかしたら気づいてくれるかも……。希望的観測だけど」
「こういう時は思いつくこと全部やった方が後悔がないぜ。やらないで後悔するより、やって後悔する方がましだ」
「そうだね、ラテア」
大きく息を吸い込み、夏輝が刀を思い切り振り降ろした。
「人型のくせして翼もないのに空を飛ぶって反則だろっ」
夏輝とレイが俺の言葉に竜の背から身を乗り出し、眼下を確認する。
泥狐の足元には歩くたびに巨大な津波が巻き起こり、その波が魔物によって構成されていることがわかる。
群体恐怖症の人間には間違いなくキツい光景だった。
波は散り散りになり、街の方へ飛んでいくもの、俺達へ向けて飛んでくるもの、様々だ。
一つ言えるのは、人型になったことでかは知らないが、今まではてんでばらばらに襲ってきていたものが確かな指向性を持ち始めたということ。
俺達へ向けて、まるで渡り鳥の大群のように人型が押し寄せてくる。
裸の人間が押し寄せてくる姿は不快感と悍ましさしかない。
竜が息を吸い込み、広範囲へ炎ノブレスを吐き出す。
長い首を動かし、全方向を薙ぎ払う。
チリチリと頬を焦がす熱に身を乗り出していた夏輝とレイが慌てて首を引っ込めた。
「追ってきているとはいえ、確実にシイナの頭は見えてきてる。あと少しだね……」
「つっても、空を飛んで近づけば近づくほど、穢れがとんでもないのが俺でもわかるぜ。竜の俺はまだキャパシティがあるが、お前らちびたちはそうでもないんじゃないか?」
「それは、確かに……」
夏輝の言葉に、カタマヴロスは俺達を気遣う様子を見せつつ、右腕を薙いで狩り残した泥人形を吹き飛ばす。
しかし、弾けた泥から視認できるほど濃密な穢れが噴出する。
それを見るだけでも強い吐き気を覚え、俺は思わず尻尾と耳をへにゃりと垂らす。
レイの顔も真っ青を通り越して土気色だ。
俺だって間違いなく似たようなもんだろう。正直、嘔吐どころか魂ごと口からまろびでてしまいそう。
「正直、これ以上はかなりキツいぜ!遠くから木っ端みじんに破壊したほうがよっぽど楽なレベルだ!」
竜の声にも少しの苦痛が混ざる。
「……俺が」
ひとつ深く長く息をして、夏輝が刀の柄を握りなおす。
夏輝の顔は今まで見たことがない位に険しく、緊張した様子だった。
俺はそんな夏輝を視界に入れつつ、握り締める手に俺の手を重ねる。
そして首輪越しではなく手を通して直接、俺自身が持つそう多くはないマナを限界まで彼へと渡した。
少しでも夏輝の力になりたかった。
苦しみや重責を分かち合いたかった。だって、俺は昨日の夜は何もしないどころか捕まって足を引っ張ってしまった。
それがなければ、今のこの状況にはなっていなかったかもしれない。
「シイナ!しっかりしろっ!頼む、正気に戻ってくれ……っ!俺はここにいるからっ!お前を迎えに来たんだ!」
レイがその間にも必死に訴える。
訴えつつ、レイもまた夏輝の腕を掴みありったけのマナを送り込んだ。
マナを通して伝わってくる哀しみ。
それはとても深く、胸を鋭い刃で貫かれるような苦しみ、痛みを感じる。
もしかすると、シイナの事だけではないのかもしれない。地べたを這いつくばり、泥水を啜って生きてきた。
その苦しみは他の誰も理解することが出来ないだろう。
皆、生きている限りそれぞれの苦しみがあるから。
「頼む、夏輝……俺には、これしかできないから」
レイの言葉に夏輝は深く頷き、イオを練り上げ始める。
莫大な光のイオ。
夏輝の体表を覆い、刀へと流れだす。やはり、鞘からは抜けないようで、鞘越しに光の刃が形成されていく。
それこそ、夏輝の身の丈を超える程にまで膨れ上がった。
重くはないらしく、竜の背の上で立ち上がり刀を構える。勿論、脚力強化と風魔法で体幹を支えつつだ。
「レイのマナを混ぜることで、シイナがもしかしたら気づいてくれるかも……。希望的観測だけど」
「こういう時は思いつくこと全部やった方が後悔がないぜ。やらないで後悔するより、やって後悔する方がましだ」
「そうだね、ラテア」
大きく息を吸い込み、夏輝が刀を思い切り振り降ろした。
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