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EP4 闇に溶ける懺悔3 手よ届け
奇妙な共闘
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支部を出て、支部の社用車を適当に見繕い乗り込む。
大人数を収容でき、装甲もある武装車だ。
「それじゃ、お願いね~」
夜一がそう言うと、どこからともなく魂が凍えてしまいそうなほど冷たいマナと共に骸骨の馬が現れる。
あいつはデュラハンだというから、生まれながらに相棒となる霊馬が存在する。
あれを乗り物に宿す事でどんなものでも、知識すらなくとも操ることが可能だと言うから驚きだ。
世の中には便利な能力を持つ種族もいるもんだ。
「ひぃん」
甘えるように、霊馬は夜一の周りをくるくると何週かしたのち、装甲車へと宿る。
運転席に夜一が座り、瑞雪が助手席へと入る。
「むぅ」
「どうしたんだよ、トツカ」
その様子を見ていたトツカが急に渋い声をあげたものだから、俺と夏輝は驚いて二人してトツカを見る。
「何かあったの?」
「……よく、わからない」
夏輝が聞けば、トツカは首を横に振る。
その間も視線は運転席と助手席に注がれ続けていた。
どうにも剣呑な気配がしたが、彼自身言葉どころかどうしてそうなっているのかもわからない様子だった。
「感じたことがないものだ。理解がし難い」
ぽつりと呟く。
これはようするに……嫉妬というやつなのでは?
俺もここ最近で覚えがある。俺の知らない夏輝を知っているノアにたいして抱いたものだ。
(トツカも瑞雪の事が好きだから?いや、それとも自分という猟犬がいるのにってタイプ?わからん……)
自分のこととなると正直面倒だしイライラが募るけど、他人のこんな普段見ない顔を見る分には新鮮だ。
それがあの時分の事を有能な道具であると自称するトツカであればなおの事。
「お前ら、さっさと乗れよ。時間がないだろうが」
立ち止まってトツカの様子を伺っている、つまり車の外で団子になっている状態の俺達に対し、瑞雪は眉根を潜めさっさと乗れと促す。
大型の装甲車だけあって、全員が乗ってもまだ余裕がある。
二列目にトツカ、俺、夏輝、三列目にヴェルデとレイが乗り込んだ。
「それじゃ発射するよ~。こっからはりんきおーへんに柔軟な対応を心掛けよ~」
夜一の気の抜けた掛け声とともに車が発車する。
防弾ガラス越しに見える外の光景は、俺の知っている黒間市とはかけ離れていた。
空高く太陽が昇っているにも関わらず、地球人たちは誰もいない。
彼らは起きることなく、あの黒い汚泥に屠られる可能性すらある。
一切の被害を出さずにいるなんて、絶対に無理なのだから。
「……っ」
泥が町中に広がっていく。
澄んだ水に真っ黒なインクを落とすように。
その様子を夏輝は食い入るように見つめている。
こぶしを握り締め、その手には青筋が立っている。
(出会った頃の夏輝なら、迷わず走っていっていたのかもしれない。今は……色々、知ったし経験したから)
出会ってからそんなに月日は経っていないのに、俺たちは様々な困難に直面してきた。
苦い想い、苦しい事、痛いこと。それらは夏輝を子供のままでいさせてはくれなかった。
思えば、出会った時よりもいくらか大人びたような気がする。
子供の成長は早いって言うけどさ。
「シイナのところまでどれくらいでたどり着ける?」
「妨害がなければ三十分くらいでつくと思う~。まあ、あるからそううまくは絶対にいかないだろうけど」
瑞雪の言葉に夜一がアクセルを踏みつつ答える。
「昨日の夜と、どっちが長いかな」
夜一の言葉に誰も答えられない。
戦いは始まってすらいないのだから。
大人数を収容でき、装甲もある武装車だ。
「それじゃ、お願いね~」
夜一がそう言うと、どこからともなく魂が凍えてしまいそうなほど冷たいマナと共に骸骨の馬が現れる。
あいつはデュラハンだというから、生まれながらに相棒となる霊馬が存在する。
あれを乗り物に宿す事でどんなものでも、知識すらなくとも操ることが可能だと言うから驚きだ。
世の中には便利な能力を持つ種族もいるもんだ。
「ひぃん」
甘えるように、霊馬は夜一の周りをくるくると何週かしたのち、装甲車へと宿る。
運転席に夜一が座り、瑞雪が助手席へと入る。
「むぅ」
「どうしたんだよ、トツカ」
その様子を見ていたトツカが急に渋い声をあげたものだから、俺と夏輝は驚いて二人してトツカを見る。
「何かあったの?」
「……よく、わからない」
夏輝が聞けば、トツカは首を横に振る。
その間も視線は運転席と助手席に注がれ続けていた。
どうにも剣呑な気配がしたが、彼自身言葉どころかどうしてそうなっているのかもわからない様子だった。
「感じたことがないものだ。理解がし難い」
ぽつりと呟く。
これはようするに……嫉妬というやつなのでは?
俺もここ最近で覚えがある。俺の知らない夏輝を知っているノアにたいして抱いたものだ。
(トツカも瑞雪の事が好きだから?いや、それとも自分という猟犬がいるのにってタイプ?わからん……)
自分のこととなると正直面倒だしイライラが募るけど、他人のこんな普段見ない顔を見る分には新鮮だ。
それがあの時分の事を有能な道具であると自称するトツカであればなおの事。
「お前ら、さっさと乗れよ。時間がないだろうが」
立ち止まってトツカの様子を伺っている、つまり車の外で団子になっている状態の俺達に対し、瑞雪は眉根を潜めさっさと乗れと促す。
大型の装甲車だけあって、全員が乗ってもまだ余裕がある。
二列目にトツカ、俺、夏輝、三列目にヴェルデとレイが乗り込んだ。
「それじゃ発射するよ~。こっからはりんきおーへんに柔軟な対応を心掛けよ~」
夜一の気の抜けた掛け声とともに車が発車する。
防弾ガラス越しに見える外の光景は、俺の知っている黒間市とはかけ離れていた。
空高く太陽が昇っているにも関わらず、地球人たちは誰もいない。
彼らは起きることなく、あの黒い汚泥に屠られる可能性すらある。
一切の被害を出さずにいるなんて、絶対に無理なのだから。
「……っ」
泥が町中に広がっていく。
澄んだ水に真っ黒なインクを落とすように。
その様子を夏輝は食い入るように見つめている。
こぶしを握り締め、その手には青筋が立っている。
(出会った頃の夏輝なら、迷わず走っていっていたのかもしれない。今は……色々、知ったし経験したから)
出会ってからそんなに月日は経っていないのに、俺たちは様々な困難に直面してきた。
苦い想い、苦しい事、痛いこと。それらは夏輝を子供のままでいさせてはくれなかった。
思えば、出会った時よりもいくらか大人びたような気がする。
子供の成長は早いって言うけどさ。
「シイナのところまでどれくらいでたどり着ける?」
「妨害がなければ三十分くらいでつくと思う~。まあ、あるからそううまくは絶対にいかないだろうけど」
瑞雪の言葉に夜一がアクセルを踏みつつ答える。
「昨日の夜と、どっちが長いかな」
夜一の言葉に誰も答えられない。
戦いは始まってすらいないのだから。
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