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EP4 闇に溶ける懺悔2 黒間市防衛戦線
師と弟子
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「酷い眺めだね。ほんっとうにさ。街並み、結構俺は気に入ってたんだけどなあ」
支部で装備を整え、遠呂と共に出てきた双子。ビルから一歩外に出た瞬間、空を見上げ朝陽がため息とともに言葉を吐き出した。
誰も活動していない街は何の音もしない。
人々のざわめき、呼吸音、車の駆動音、何もかもが聞こえない。
街全体が眠っている。そう表現できそうなくらいに静かだった。
(まあ、眠ってるって言うか病気の手術で全身麻酔をかけられてるって言う方が正しいかも)
そして、朝陽たちは悪いところを切除するためのメスだ。
「なんだか、師匠と一緒に任務に出るのは久しぶりな気がしますね」
一歩出た瞬間、空から雨のように泡が降り注いでくる。
落ちてくる途中で、様々な生物の形へと変わっていく泡。
朝陽と月夜が遠呂の一歩前へと出る。
「確かになぁ。お前らがエデンに行っとった期間も考えたら全然最近面倒見てへーかったもんなぁ。せや、絶対にあの泡に直接触れるんやないで。まあ、勅使河原の最期を見たやろうし、お前らならそんなことせーへんと思うけども。朝陽は猟犬を使って撃退、月夜は人間がターゲットにされた場合そっちを回収しつつうちらの方に化け物どもを誘導してや」
遠呂の命令に朝陽、月夜両者ともに頷く。
朝陽の影から多数の猟犬達が現れる。
泥に侵され死んでも構わない、使い捨ての猟犬達だ。
彼らは恐怖も何も感じることがない、朝陽の忠実な下僕たち。
遠呂は飛び出していく双子と猟犬達を、後方から眺めつつ懐から札を何枚か取り出す。
札はふわりと手のひらから自ずと離れ、巨大な白蛇へと転じる。
「結界内の皆を護れ」
遠呂が命じると、蛇たちは最も巨大な一体を除き四方八方へと這っていく。
更に遠呂は二枚の札を取り出し、それぞれ朝陽、月夜へと渡す。
「これは?」
「護符。泡にもし万が一触れてしまった時、ある程度効力を弱めてくれる。お前らもぐずぐずに溶けて死にたくないやろ?まあ、死ぬっちゅうよりも、もっとひどい目に遭うかもしれへんけどな」
半ば脅すような遠呂の物言い。
しかし、普段のお茶らけた様子はなりを潜め、釘をさすようだった。
「心配しすぎなんだってば。俺は強いんだから。月夜の事もちゃんと守るし」
はぁ……月夜。朝陽のことをちゃぁんと見といてや」
朝陽の様子に遠呂はあからさまに大きなため息をつき、月夜に念を押す。
「ちょっとぉ!何で!?俺が信用できないの!?」
「わかったよ、遠呂師匠。師匠も兄さんを信用してないわけじゃないって。ただちょっと……向こう見ずなだけで」
その態度が朝陽のプライドを刺激したようで、ぎゃんぎゃんとまた喚く。
少しはイースターの一件で大人しくなったと思いきや、そうでもないらしい。
朝陽に対して、月夜は苦笑いを漏らすばかりだ。
どうせ、自分は兄よりもずっと弱い。
いざとなれば、兄を庇うつもりではいるが、兄が悲しむことも理解はしている。
だから、兄を諫め、任務を果たすことが出来るのがベストだ。
(兄さんが近接型じゃなくてよかったな。もしもそうだったら間違いなくもっと危ない目に遭っているもの)
頬を膨らませた朝陽は移動用の羽馬に乗り、彼の杖である指揮棒を振り下ろす。
チカチカと猟犬達の首輪が明滅する。
朝陽の力は科学と魔法、そして朝陽自身の才能の混合技。
こういうところも、瑞雪と似ているのに、と月夜は決して口には出さないが心の中でそう思う。
(性格は正反対なんだけどね)
朝陽は自分至上主義、傲慢とすら言えるほどに自分に絶対の自信がある。
瑞雪は、冷徹に見えるが面倒見がよく、自分に全く自信がない。卑屈で、根暗とすら言えるだろう。
自分に自信がないのは、月夜と同じだ。
でも、全く魔法の才能がない月夜と異なり、瑞雪はきちんと強いし、才能もあるのに。
(足して二で割るくらいがちょうどよさそうなんだよね、あの二人は。勿論、僕は今の兄さんが一番好きだけど)
まあ、瑞雪はあの國雪の孫なのだ。きっと、月夜の知らないところで苦労をしているのだろう。
生きている以上、全く苦労も苦痛もない人間なんて存在しないだろうから。
支部で装備を整え、遠呂と共に出てきた双子。ビルから一歩外に出た瞬間、空を見上げ朝陽がため息とともに言葉を吐き出した。
誰も活動していない街は何の音もしない。
人々のざわめき、呼吸音、車の駆動音、何もかもが聞こえない。
街全体が眠っている。そう表現できそうなくらいに静かだった。
(まあ、眠ってるって言うか病気の手術で全身麻酔をかけられてるって言う方が正しいかも)
そして、朝陽たちは悪いところを切除するためのメスだ。
「なんだか、師匠と一緒に任務に出るのは久しぶりな気がしますね」
一歩出た瞬間、空から雨のように泡が降り注いでくる。
落ちてくる途中で、様々な生物の形へと変わっていく泡。
朝陽と月夜が遠呂の一歩前へと出る。
「確かになぁ。お前らがエデンに行っとった期間も考えたら全然最近面倒見てへーかったもんなぁ。せや、絶対にあの泡に直接触れるんやないで。まあ、勅使河原の最期を見たやろうし、お前らならそんなことせーへんと思うけども。朝陽は猟犬を使って撃退、月夜は人間がターゲットにされた場合そっちを回収しつつうちらの方に化け物どもを誘導してや」
遠呂の命令に朝陽、月夜両者ともに頷く。
朝陽の影から多数の猟犬達が現れる。
泥に侵され死んでも構わない、使い捨ての猟犬達だ。
彼らは恐怖も何も感じることがない、朝陽の忠実な下僕たち。
遠呂は飛び出していく双子と猟犬達を、後方から眺めつつ懐から札を何枚か取り出す。
札はふわりと手のひらから自ずと離れ、巨大な白蛇へと転じる。
「結界内の皆を護れ」
遠呂が命じると、蛇たちは最も巨大な一体を除き四方八方へと這っていく。
更に遠呂は二枚の札を取り出し、それぞれ朝陽、月夜へと渡す。
「これは?」
「護符。泡にもし万が一触れてしまった時、ある程度効力を弱めてくれる。お前らもぐずぐずに溶けて死にたくないやろ?まあ、死ぬっちゅうよりも、もっとひどい目に遭うかもしれへんけどな」
半ば脅すような遠呂の物言い。
しかし、普段のお茶らけた様子はなりを潜め、釘をさすようだった。
「心配しすぎなんだってば。俺は強いんだから。月夜の事もちゃんと守るし」
はぁ……月夜。朝陽のことをちゃぁんと見といてや」
朝陽の様子に遠呂はあからさまに大きなため息をつき、月夜に念を押す。
「ちょっとぉ!何で!?俺が信用できないの!?」
「わかったよ、遠呂師匠。師匠も兄さんを信用してないわけじゃないって。ただちょっと……向こう見ずなだけで」
その態度が朝陽のプライドを刺激したようで、ぎゃんぎゃんとまた喚く。
少しはイースターの一件で大人しくなったと思いきや、そうでもないらしい。
朝陽に対して、月夜は苦笑いを漏らすばかりだ。
どうせ、自分は兄よりもずっと弱い。
いざとなれば、兄を庇うつもりではいるが、兄が悲しむことも理解はしている。
だから、兄を諫め、任務を果たすことが出来るのがベストだ。
(兄さんが近接型じゃなくてよかったな。もしもそうだったら間違いなくもっと危ない目に遭っているもの)
頬を膨らませた朝陽は移動用の羽馬に乗り、彼の杖である指揮棒を振り下ろす。
チカチカと猟犬達の首輪が明滅する。
朝陽の力は科学と魔法、そして朝陽自身の才能の混合技。
こういうところも、瑞雪と似ているのに、と月夜は決して口には出さないが心の中でそう思う。
(性格は正反対なんだけどね)
朝陽は自分至上主義、傲慢とすら言えるほどに自分に絶対の自信がある。
瑞雪は、冷徹に見えるが面倒見がよく、自分に全く自信がない。卑屈で、根暗とすら言えるだろう。
自分に自信がないのは、月夜と同じだ。
でも、全く魔法の才能がない月夜と異なり、瑞雪はきちんと強いし、才能もあるのに。
(足して二で割るくらいがちょうどよさそうなんだよね、あの二人は。勿論、僕は今の兄さんが一番好きだけど)
まあ、瑞雪はあの國雪の孫なのだ。きっと、月夜の知らないところで苦労をしているのだろう。
生きている以上、全く苦労も苦痛もない人間なんて存在しないだろうから。
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