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EP4 闇に溶ける懺悔1 狂乱の夜明け
昔馴染
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「久しぶりやなぁ、ロセ。情報屋と客としてしか会ったことなかったからなぁ。まさかここにまで入ってくるとは。なぁ?」
「どうも~。最近全然依頼してくれなかったから寂しかったんだよ?」
医務室から出た瞬間、ロセは遠呂に呼び止められる。
彼は以前から、時折情報屋としてのロセに依頼を出していた。
通常よりもいつも多めに料金を支払ってくれるし、時折戯れに抱かれてやるくらいには上客だった。
「こんな時だけど、何か御用?仕事なら今回の件が片付いた後なら受けられるけど」
疲労を滲ませないように細心の注意を払いながら、普段通りの妖艶な笑みを浮かべ遠呂を見上げる。
アレウはこういう時、基本的にロセの後ろで見ていることが多い。
厄介な客でなければ、アレウは口出しはしてこないのだ。
だから、この時ロセは特に気にせず遠呂に対して応対を続けていた。
「いんや、今日はロセやなくて、そっちの吸血鬼と話があってん。悪いんやけど、少し借りるで?」
「え?アレウ、遠呂さんと知り合いなの?」
振り返り、アレウをロセが見上げる。
アレウはと言えば、酷く気まずそうな……面倒くさそうな顔をしていた。
沈黙を肯定と取るロセ。
(僕とアレウが付き合い始めて百年以上経過してるんだけど…ってことはこの人はただの地球人ではないんだろうね)
自分に関する事でなければ、特に気にすることもないだろうけど。
レイの事について頭を悩ませるよりかははるかに気が楽だった。
アレウはロセよりもずっと長く生きている吸血鬼だ。自分の知らない知り合いの、一人や二人はいることだろう。
「ごゆっくり。戻ってくるまで待ってるから」
「……おう」
アレウからは行かないでほしいというオーラが如実に出ていたが、ロセはにこりと愛らしい笑みを浮かべた後、小さく手を振りさっさと部屋から出ていく。
少し何か腹にでもいれておくべきかもしれない。だって、長い夜は結局未だ明けてはいないのだから。
「まさかお前が戻ってくるとはなぁ。尻尾を巻いて一生日本には戻ってこないものとばかり思っていたが。当てが外れたようだな」
ロセが出ていったあと、遠呂は糸のように細い目を開きアレウを見やる。
その目はまさに蛇のような目で、それに睨まれるだけでアレウはカエルのように動けなくなった。
上位種族たる吸血鬼が、である。
「んなこと言って、知ってただろうが。ロセと接触して、俺のマナを感じ取れないほどお前の感知能力が腐ってるとは思えないが」
「相変わらず可愛げのないガキだこと」
鼻で嗤い、吐き捨てる遠呂にアレウは深いため息をつく。
アレウと遠呂はロセと知り合うよりも前からの知り合いだ。
かつて、アレウは一時期日本に居た。今よりもずっと昔だ。
なんにせよ、昔から遠呂とアレウはとことん馬が合わなかった。
「で、わざわざ呼び止めて何の用だよ」
「腑抜けが何を考えてあいつらに手を貸してたのかが気になってなあ。んで、あれを見てまた逃げ出すのかと思って」
遠呂が指示したのは、窓の外に見えるシイナだった化け物だ。
また。そう遠呂が口にするのは、かつて二人が同じ類のものを見たことがあるから。
遠呂の言葉に、アレウは苦虫を嚙み潰したような顔をする。
「……逃げないためにまた来たんだよ」
「なんとでも言えるさ。尻尾を巻いて逃げた雑魚が。今はまだあの程度だが、これからどんどん悪くなる可能性だってあるんだ。さっさと逃げた方が身のためかもしれないぞ?」
言い返してみたものの、遠呂はアレウの言い分を一切聞く気はないようだった。
信頼というものは、築くのは難しく失う時は一瞬だ。
「逃げないって、言ってるだろ。それに悪くならない可能性だってあるだろうさ」
「あれを見たんだろ?あれを見てもか?」
「それを言うなら、何故お前はさっさと始末しないんだ?」
「……あれもまた、俺の庇護下に入るべきものだからだ」
「結局、変わらないじゃねえかよ、爬虫類野郎」
「お前にだけは言われたくない、蝙蝠男」
互いにいがみ合い、噛みつきあう。
それしか、彼等はコミュニケーション手段を持ってはいなかったからだ。
あるいは、忘れてしまったから。
「どうも~。最近全然依頼してくれなかったから寂しかったんだよ?」
医務室から出た瞬間、ロセは遠呂に呼び止められる。
彼は以前から、時折情報屋としてのロセに依頼を出していた。
通常よりもいつも多めに料金を支払ってくれるし、時折戯れに抱かれてやるくらいには上客だった。
「こんな時だけど、何か御用?仕事なら今回の件が片付いた後なら受けられるけど」
疲労を滲ませないように細心の注意を払いながら、普段通りの妖艶な笑みを浮かべ遠呂を見上げる。
アレウはこういう時、基本的にロセの後ろで見ていることが多い。
厄介な客でなければ、アレウは口出しはしてこないのだ。
だから、この時ロセは特に気にせず遠呂に対して応対を続けていた。
「いんや、今日はロセやなくて、そっちの吸血鬼と話があってん。悪いんやけど、少し借りるで?」
「え?アレウ、遠呂さんと知り合いなの?」
振り返り、アレウをロセが見上げる。
アレウはと言えば、酷く気まずそうな……面倒くさそうな顔をしていた。
沈黙を肯定と取るロセ。
(僕とアレウが付き合い始めて百年以上経過してるんだけど…ってことはこの人はただの地球人ではないんだろうね)
自分に関する事でなければ、特に気にすることもないだろうけど。
レイの事について頭を悩ませるよりかははるかに気が楽だった。
アレウはロセよりもずっと長く生きている吸血鬼だ。自分の知らない知り合いの、一人や二人はいることだろう。
「ごゆっくり。戻ってくるまで待ってるから」
「……おう」
アレウからは行かないでほしいというオーラが如実に出ていたが、ロセはにこりと愛らしい笑みを浮かべた後、小さく手を振りさっさと部屋から出ていく。
少し何か腹にでもいれておくべきかもしれない。だって、長い夜は結局未だ明けてはいないのだから。
「まさかお前が戻ってくるとはなぁ。尻尾を巻いて一生日本には戻ってこないものとばかり思っていたが。当てが外れたようだな」
ロセが出ていったあと、遠呂は糸のように細い目を開きアレウを見やる。
その目はまさに蛇のような目で、それに睨まれるだけでアレウはカエルのように動けなくなった。
上位種族たる吸血鬼が、である。
「んなこと言って、知ってただろうが。ロセと接触して、俺のマナを感じ取れないほどお前の感知能力が腐ってるとは思えないが」
「相変わらず可愛げのないガキだこと」
鼻で嗤い、吐き捨てる遠呂にアレウは深いため息をつく。
アレウと遠呂はロセと知り合うよりも前からの知り合いだ。
かつて、アレウは一時期日本に居た。今よりもずっと昔だ。
なんにせよ、昔から遠呂とアレウはとことん馬が合わなかった。
「で、わざわざ呼び止めて何の用だよ」
「腑抜けが何を考えてあいつらに手を貸してたのかが気になってなあ。んで、あれを見てまた逃げ出すのかと思って」
遠呂が指示したのは、窓の外に見えるシイナだった化け物だ。
また。そう遠呂が口にするのは、かつて二人が同じ類のものを見たことがあるから。
遠呂の言葉に、アレウは苦虫を嚙み潰したような顔をする。
「……逃げないためにまた来たんだよ」
「なんとでも言えるさ。尻尾を巻いて逃げた雑魚が。今はまだあの程度だが、これからどんどん悪くなる可能性だってあるんだ。さっさと逃げた方が身のためかもしれないぞ?」
言い返してみたものの、遠呂はアレウの言い分を一切聞く気はないようだった。
信頼というものは、築くのは難しく失う時は一瞬だ。
「逃げないって、言ってるだろ。それに悪くならない可能性だってあるだろうさ」
「あれを見たんだろ?あれを見てもか?」
「それを言うなら、何故お前はさっさと始末しないんだ?」
「……あれもまた、俺の庇護下に入るべきものだからだ」
「結局、変わらないじゃねえかよ、爬虫類野郎」
「お前にだけは言われたくない、蝙蝠男」
互いにいがみ合い、噛みつきあう。
それしか、彼等はコミュニケーション手段を持ってはいなかったからだ。
あるいは、忘れてしまったから。
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