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EP4 闇に溶ける懺悔1 狂乱の夜明け
全てを差し出し、投げ出しても
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「俺が、復讐なんてしようとしたから……シイナを巻き込んじゃったから、あいつは俺を助けるために、勅使河原に言われた薬を飲んだんだ。そうしたら、いきなりおかしくなって、黒い泥に変わっていって、あんな姿に……」
ところどころどもりながら、レイがしどろもどろに言葉を紡ぐ。
目を伏せ、時折震え、青ざめながら。
見ていて正直気分のいいものではない。
確かに、こいつのせいでたくさんの人間が死んだ。直接手を下したわけではないけれど、原因になったのは間違いない。
でも、間違いなくレイにも事情があることはロセとのやり取りから俺にだってわかる。
だから、レイの事を憎んで、シイナと共に死ねばいいなんて言う風には、どうしても俺には思えなかったのだ。
「お前だけが不幸みたいな顔しやがって」
朝陽がそのままレイを床に投げ捨てる。
大した力は入っていなかったようだが、既にレイに抵抗する力など微塵も残っていなかったこともありボロ雑巾のように倒れ込んだ。
「それくらいにしておけ、まだやることもいくらでもあるだろう」
流石にもう見ているのも嫌になったのか、瑞雪が苦言を呈する。
そんな瑞雪に対し、朝陽は気に入らないとばかりに今度は瑞雪に対して噛みついた。
「お前だって散々迷惑かけられたでしょ?死にかけたりさ!」
「半分はお前のせいだが」
「……」
しかし、瑞雪が何言ってるんだこいつとばかりに冷たい視線を送る。
絶対零度の視線と正論に、朝陽は露骨に視線をそらし、黙りこくった。
「っげほ、がほっ……頼む……」
震える手を地面につき、よろよろと起き上がるレイ。
レイは、俺と夏輝の方へとふらふら歩いてくる。
「都合のいいことを言っていることはわかってる。だけど、頼む……俺は殺されてもいい、だから……シイナを、助けてくれ……。お前たちにしか、頼めなくて。俺は、弱いから……」
淀んだ目。涙こそ流れていないものの、必死に堪えているのかもしれない。
「シイナだけで、いいから……っ」
悲痛な訴え。
どう返すべきか、俺と夏輝は互いに顔を見合わせ、考えあぐねていた。
助けてやりたい気持ちはある。しかし、あんな状態になって助けられるのかどうかは、当然わかるわけがない。
あの泥が多くの町の人々を飲み込んでいくだろう。
それを必死に阻止して、助けるために殺すことを躊躇して、結果より多くの人間が死んだら。
「……」
夏輝は眉間に皺を寄せ、難しい顔をしている。
もしかしたら、美咲の事を思い出しているのかもしれない。
朝陽は当然渋い顔だ。一方月夜は兄に従うと、そういうスタンスだ。
声に出して罵倒しなかったのは、先程瑞雪にぐぅの音もでないほどの正論で論破されたからか。
「そんな事は俺には関係ないし、お前たちがロセの肌に傷をつけたことは許しちゃいない」
窓からようやく目を離し、アレウはレイを睨む。
当然、ロセの命を執拗に狙い、殺そうとしていたレイにアレウはいい感情など持ってはいない。
ロセとレイの間に何があろうと、アレウにとってはきっと知ったこっちゃない。
アレウにとって大切なのは、ロセただ一人なのだ。
きっと、ロセの為なら誰であろうと殺すことに躊躇はないのだ。
「……自分が助けてあげるって言える立場じゃないから」
ロセもまた、やや顔色悪く、目を伏せてそう告げた。
本当にかかわらないことだけがレイの為なんだろうか。俺にはわからない。
理由を知らないし、理由を詮索することも俺には出来ない。
少し迷っている様子は見せたが、それ以上彼がなにかを口にすることはなかった。
最早部屋はお通夜ムードだ。
「……まあ、当然だよな。当たり前だ」
レイは唇を噛み締め、部屋に一つしかない扉を睨む。
「これしか、俺には話せない。有益な情報は持っていないから。……だから、出ていく。シイナのところに行かなきゃ……」
そう口にしたのとほぼ同時に、閉じられていた扉が開いた。
秋雨が部屋に入ってきたのだ。
ところどころどもりながら、レイがしどろもどろに言葉を紡ぐ。
目を伏せ、時折震え、青ざめながら。
見ていて正直気分のいいものではない。
確かに、こいつのせいでたくさんの人間が死んだ。直接手を下したわけではないけれど、原因になったのは間違いない。
でも、間違いなくレイにも事情があることはロセとのやり取りから俺にだってわかる。
だから、レイの事を憎んで、シイナと共に死ねばいいなんて言う風には、どうしても俺には思えなかったのだ。
「お前だけが不幸みたいな顔しやがって」
朝陽がそのままレイを床に投げ捨てる。
大した力は入っていなかったようだが、既にレイに抵抗する力など微塵も残っていなかったこともありボロ雑巾のように倒れ込んだ。
「それくらいにしておけ、まだやることもいくらでもあるだろう」
流石にもう見ているのも嫌になったのか、瑞雪が苦言を呈する。
そんな瑞雪に対し、朝陽は気に入らないとばかりに今度は瑞雪に対して噛みついた。
「お前だって散々迷惑かけられたでしょ?死にかけたりさ!」
「半分はお前のせいだが」
「……」
しかし、瑞雪が何言ってるんだこいつとばかりに冷たい視線を送る。
絶対零度の視線と正論に、朝陽は露骨に視線をそらし、黙りこくった。
「っげほ、がほっ……頼む……」
震える手を地面につき、よろよろと起き上がるレイ。
レイは、俺と夏輝の方へとふらふら歩いてくる。
「都合のいいことを言っていることはわかってる。だけど、頼む……俺は殺されてもいい、だから……シイナを、助けてくれ……。お前たちにしか、頼めなくて。俺は、弱いから……」
淀んだ目。涙こそ流れていないものの、必死に堪えているのかもしれない。
「シイナだけで、いいから……っ」
悲痛な訴え。
どう返すべきか、俺と夏輝は互いに顔を見合わせ、考えあぐねていた。
助けてやりたい気持ちはある。しかし、あんな状態になって助けられるのかどうかは、当然わかるわけがない。
あの泥が多くの町の人々を飲み込んでいくだろう。
それを必死に阻止して、助けるために殺すことを躊躇して、結果より多くの人間が死んだら。
「……」
夏輝は眉間に皺を寄せ、難しい顔をしている。
もしかしたら、美咲の事を思い出しているのかもしれない。
朝陽は当然渋い顔だ。一方月夜は兄に従うと、そういうスタンスだ。
声に出して罵倒しなかったのは、先程瑞雪にぐぅの音もでないほどの正論で論破されたからか。
「そんな事は俺には関係ないし、お前たちがロセの肌に傷をつけたことは許しちゃいない」
窓からようやく目を離し、アレウはレイを睨む。
当然、ロセの命を執拗に狙い、殺そうとしていたレイにアレウはいい感情など持ってはいない。
ロセとレイの間に何があろうと、アレウにとってはきっと知ったこっちゃない。
アレウにとって大切なのは、ロセただ一人なのだ。
きっと、ロセの為なら誰であろうと殺すことに躊躇はないのだ。
「……自分が助けてあげるって言える立場じゃないから」
ロセもまた、やや顔色悪く、目を伏せてそう告げた。
本当にかかわらないことだけがレイの為なんだろうか。俺にはわからない。
理由を知らないし、理由を詮索することも俺には出来ない。
少し迷っている様子は見せたが、それ以上彼がなにかを口にすることはなかった。
最早部屋はお通夜ムードだ。
「……まあ、当然だよな。当たり前だ」
レイは唇を噛み締め、部屋に一つしかない扉を睨む。
「これしか、俺には話せない。有益な情報は持っていないから。……だから、出ていく。シイナのところに行かなきゃ……」
そう口にしたのとほぼ同時に、閉じられていた扉が開いた。
秋雨が部屋に入ってきたのだ。
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