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EP3 復讐の黄金比4 秘されたモノ
愛に生きる男
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「うぉ!?」
俺は傍観者であって当事者ではなかったこともあり、即座に後方に飛びのくことで蔦の攻撃範囲から逃れる。
「レイっ!」
レイを叩き潰そうとする蔦はシイナがすかさず間に入り、手をカマキリの鎌にし全てを切り刻む。
一方のロセは。
「おっと」
ロセは全く慌てない。
エヴァンが何言か呟き、煌めく反射する光の刃が発生。
ロセへとたどり着く前に全てぼとぼとと地面に落下していった。
「……忠犬、ねえ」
「だから言ったでしょう?」
俺の言葉にロセが見向きもせず声を発する。
シイナに助けられたレイは、相変わらずロセの事を憎悪を滾らせた目で睨みつけている。
一方のヴェルデとエヴァンは。
「っ……!」
咄嗟に、反射的にエヴァンはロセを守るために行動したのだろう。
一瞬しまった、という表情を見せる。
「な、なんスか……あいつらは敵っすよ。あそこの淫魔が連れているのが間違いなく標的っス。何で敵を守るような真似をするんスかっ!」
ヴェルデの言っていることは最もだし筋が通っている。
しかし、エヴァンはぎろりとヴェルデを睨みつける。
「……やっちまったのは謝る。だが、仕事内容は要するにあのガキさえ捕まえりゃいいんだろうが。ロセを傷つけることまでは仕事に入ってねえ。絶対に傷つけさせねえ」
よっぽどロセの事がこの男は好きなのかも。
正直ヴェルデを哀れに思う。
ヴェルデはだって、忠実に俺を捕まえるって言う依頼を遂行しようとしただけなのだ。
(エヴァンがロセの事を大大大好きって言うのは分かったけど、でもだからってロセが俺を連れて逃げてる以上絶対傷つけるなは理不尽すぎねえ?)
せめて殺さないにダウングレードするべきだと思う、うん。
なんてことを考える。
「はぁ!?そんなガキみたいな理論許されると思ってるんスか!?ありえないっしょ!?冗談っスよね!?」
「……うるせえよ。これは絶対に譲れねえ」
エヴァンの本気を察したのか、睨みつつもヴェルデは押し黙る。
エヴァンの言い分の方がどう考えてもガキだ。
俺の憐みに満ちた視線に気づいたのか、ヴェルデ顔に悲哀に染まった。
「茶番なんぞ繰り広げやがって……!死ねっ!」
しかし、この場でエヴァンの睨みで引くような奴は残念ながら子分のヴェルデくらいしかいない。
レイは完全に怒り狂い、理性を失っているようだった。
「レイ、ここは一旦引こう?」
「煩いっ!来い、ゴーレムッ!」
手首のブレスレットから珠が数個取れ、宙に浮かぶ。
複雑な文様が輝き、巨大なゴーレムと鳥型、獣型のゴーレムが解き放たれる。
「っ……うう、戦う」
シイナはレイを一旦止めたいようだが、レイが臨戦態勢を解かないことから共に戦うことに決めたようだった。
初遭遇の時に比べて、感情も豊かになったし人らしくなったように思える。
何があったのだろう。
「ロセに手ェ出したら殺すっつったよなぁ!?」
エヴァンが吠え、腰のホルスターから銃を、ベルトから短剣を抜く。
「ローズがいねえがまあいい。ヴェルデ、マナぁ寄越せ」
「……ぅう」
わからされ、逆らえないらしいヴェルデはものすごく渋々、不服そうにエヴァンにマナを渡す。
それを確認し、エヴァンはロセとレイ、ゴーレムたちの間に踊り出る。
ゴーレムのうちの一体はイースターの祭りでの戦いの時に朝陽が戦ったと言っていた個体だ。
夏輝の学校の校舎くらいの大きさであり、当然周囲にあるガードレールや石垣をなぎ倒し、破壊していく。
シイナもそれに合わせ、追撃するように隼の翼を生やし飛び上がり、落下速度を利用しての強烈なダイブ攻撃。
「ラテアくん、今のうちに逃げるよ」
どさくさにまぎれ、ロセが俺に声をかける。
「えっ、でもレイやエヴァンは!?」
俺は思わず聞き返す。
確かに俺を捕まえるのがこいつらの目的かもしれないが、今のこの状況の中心人物は間違いなくロセだ。
「大丈夫だよ。エヴァンはあれくらいじゃやられないから」
「いや、そうじゃなくって……!レイはどうするんだよ」
ロセが俺の元へと走ってきて、手首を掴む。
「どうって、何もしないよ」
前を向いていて、ロセの表情は俺の視点からでは伺うことが出来ない。
声音も普段の飄々としたものではなく、感情の機敏を感じない。
わざと殺しているのか、それとも本当に含まれていないのか、ロセと付き合いの浅い俺にはわからなかった。
「……甥っ子なんだろ?ちゃんと話さないでいいのか?」
「僕のことはいいんだよ。今は君を彼らから遠ざけないとね」
一つウインクをし、ロセは歩き出す。
その言葉を紡がれれば、原因である俺からはぐうの音も出なくなる。
しかし、その顔色は明らかに真っ青だった。
「待て、ロセウスっ!話は終わってない、逃げるなッ!」
レイの叫びがこだまする。
追い縋ろうとするゴーレムの前にエヴァンが躍り出、紡いだレーザー魔法でゴーレムの関節を打ち抜き軌道を逸らす。
「僕にはもう関係ないから」
最後に一言、ロセがレイへ向けて言葉を紡ぐ。
必死にこらえているようだが、ロセは小刻みに身体を震わせていた。
(何か事情でもあるってことか。……どうすんだこれ)
この場でどう動くのか正解がわからない。
しかし、ロセは少なくとも俺にとっては味方で、レイは敵だ。
なら、レイを気にしている余裕は俺にはない。
「許さない、殺してやるッ!裏切り者、裏切り者ぉっ!」
もう、レイの表情を俺からは見ることが出来ない。
振り返る暇はない。
ただ、ただただ遠く逃げるまでの間中ずっと、レイの悲痛な叫びが俺の耳には届いていた。
俺は傍観者であって当事者ではなかったこともあり、即座に後方に飛びのくことで蔦の攻撃範囲から逃れる。
「レイっ!」
レイを叩き潰そうとする蔦はシイナがすかさず間に入り、手をカマキリの鎌にし全てを切り刻む。
一方のロセは。
「おっと」
ロセは全く慌てない。
エヴァンが何言か呟き、煌めく反射する光の刃が発生。
ロセへとたどり着く前に全てぼとぼとと地面に落下していった。
「……忠犬、ねえ」
「だから言ったでしょう?」
俺の言葉にロセが見向きもせず声を発する。
シイナに助けられたレイは、相変わらずロセの事を憎悪を滾らせた目で睨みつけている。
一方のヴェルデとエヴァンは。
「っ……!」
咄嗟に、反射的にエヴァンはロセを守るために行動したのだろう。
一瞬しまった、という表情を見せる。
「な、なんスか……あいつらは敵っすよ。あそこの淫魔が連れているのが間違いなく標的っス。何で敵を守るような真似をするんスかっ!」
ヴェルデの言っていることは最もだし筋が通っている。
しかし、エヴァンはぎろりとヴェルデを睨みつける。
「……やっちまったのは謝る。だが、仕事内容は要するにあのガキさえ捕まえりゃいいんだろうが。ロセを傷つけることまでは仕事に入ってねえ。絶対に傷つけさせねえ」
よっぽどロセの事がこの男は好きなのかも。
正直ヴェルデを哀れに思う。
ヴェルデはだって、忠実に俺を捕まえるって言う依頼を遂行しようとしただけなのだ。
(エヴァンがロセの事を大大大好きって言うのは分かったけど、でもだからってロセが俺を連れて逃げてる以上絶対傷つけるなは理不尽すぎねえ?)
せめて殺さないにダウングレードするべきだと思う、うん。
なんてことを考える。
「はぁ!?そんなガキみたいな理論許されると思ってるんスか!?ありえないっしょ!?冗談っスよね!?」
「……うるせえよ。これは絶対に譲れねえ」
エヴァンの本気を察したのか、睨みつつもヴェルデは押し黙る。
エヴァンの言い分の方がどう考えてもガキだ。
俺の憐みに満ちた視線に気づいたのか、ヴェルデ顔に悲哀に染まった。
「茶番なんぞ繰り広げやがって……!死ねっ!」
しかし、この場でエヴァンの睨みで引くような奴は残念ながら子分のヴェルデくらいしかいない。
レイは完全に怒り狂い、理性を失っているようだった。
「レイ、ここは一旦引こう?」
「煩いっ!来い、ゴーレムッ!」
手首のブレスレットから珠が数個取れ、宙に浮かぶ。
複雑な文様が輝き、巨大なゴーレムと鳥型、獣型のゴーレムが解き放たれる。
「っ……うう、戦う」
シイナはレイを一旦止めたいようだが、レイが臨戦態勢を解かないことから共に戦うことに決めたようだった。
初遭遇の時に比べて、感情も豊かになったし人らしくなったように思える。
何があったのだろう。
「ロセに手ェ出したら殺すっつったよなぁ!?」
エヴァンが吠え、腰のホルスターから銃を、ベルトから短剣を抜く。
「ローズがいねえがまあいい。ヴェルデ、マナぁ寄越せ」
「……ぅう」
わからされ、逆らえないらしいヴェルデはものすごく渋々、不服そうにエヴァンにマナを渡す。
それを確認し、エヴァンはロセとレイ、ゴーレムたちの間に踊り出る。
ゴーレムのうちの一体はイースターの祭りでの戦いの時に朝陽が戦ったと言っていた個体だ。
夏輝の学校の校舎くらいの大きさであり、当然周囲にあるガードレールや石垣をなぎ倒し、破壊していく。
シイナもそれに合わせ、追撃するように隼の翼を生やし飛び上がり、落下速度を利用しての強烈なダイブ攻撃。
「ラテアくん、今のうちに逃げるよ」
どさくさにまぎれ、ロセが俺に声をかける。
「えっ、でもレイやエヴァンは!?」
俺は思わず聞き返す。
確かに俺を捕まえるのがこいつらの目的かもしれないが、今のこの状況の中心人物は間違いなくロセだ。
「大丈夫だよ。エヴァンはあれくらいじゃやられないから」
「いや、そうじゃなくって……!レイはどうするんだよ」
ロセが俺の元へと走ってきて、手首を掴む。
「どうって、何もしないよ」
前を向いていて、ロセの表情は俺の視点からでは伺うことが出来ない。
声音も普段の飄々としたものではなく、感情の機敏を感じない。
わざと殺しているのか、それとも本当に含まれていないのか、ロセと付き合いの浅い俺にはわからなかった。
「……甥っ子なんだろ?ちゃんと話さないでいいのか?」
「僕のことはいいんだよ。今は君を彼らから遠ざけないとね」
一つウインクをし、ロセは歩き出す。
その言葉を紡がれれば、原因である俺からはぐうの音も出なくなる。
しかし、その顔色は明らかに真っ青だった。
「待て、ロセウスっ!話は終わってない、逃げるなッ!」
レイの叫びがこだまする。
追い縋ろうとするゴーレムの前にエヴァンが躍り出、紡いだレーザー魔法でゴーレムの関節を打ち抜き軌道を逸らす。
「僕にはもう関係ないから」
最後に一言、ロセがレイへ向けて言葉を紡ぐ。
必死にこらえているようだが、ロセは小刻みに身体を震わせていた。
(何か事情でもあるってことか。……どうすんだこれ)
この場でどう動くのか正解がわからない。
しかし、ロセは少なくとも俺にとっては味方で、レイは敵だ。
なら、レイを気にしている余裕は俺にはない。
「許さない、殺してやるッ!裏切り者、裏切り者ぉっ!」
もう、レイの表情を俺からは見ることが出来ない。
振り返る暇はない。
ただ、ただただ遠く逃げるまでの間中ずっと、レイの悲痛な叫びが俺の耳には届いていた。
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