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EP3 復讐の黄金比4 秘されたモノ
動き出す傭兵たち
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「エヴァン先輩、どうするんスか?これからはあいつらじゃなくて俺たちのターンってベルナルドさんが言ってましたけど」
朝。
エヴァンの部屋にどたどたとヴェルデがやってくる。
「朝っぱらから元気だな……」
「先輩も神父なら朝早く活動するべきでしょ?」
エヴァンはまだ部屋で微睡んでいる最中であり、ノックもせず入ってきたヴェルデに軽くため息をつく。
そうしている間にもヴェルデは閉じきっているカーテンを開き、窓を全開にする。
「ほら、陽の光を浴びないと不健康っスよ!」
「ベルナルドにやれって」
「既にやってきて追い出されたとこっス……」
しゅん、と悲しそうな顔をするヴェルデに憐みではなくため息が零れる。
この子供はどうにも若さにかまけて暴走しがちである。
(ベルナルドの旦那に押し付けられたしなあ)
そもそもエヴァンはこんな得体のしれないろくでもない男の依頼よりも日本でやりたいことがあるのだ。
しかし、とは言ってもベルナルドはエヴァンのボスだ。
彼が依頼を受けると決めた以上、エヴァンには『よほどのことがない限り』従う義務がある。
エヴァンは傭兵となるときにこの規則を嫌というほどベルナルドに叩き込まれた。
ヴェルデは未だ躾中なのだ。
「で、これからどうするんスか?」
ヴェルデはきらきらと曇りのない目でエヴァンを見つめてくる。
どうにもやりにくい。
「黒間市についてはここに来る前にある程度調べてある。この街の羊飼いたちの集まるカフェ兼バーがあるらしいから、まずはそこに情報収集に行く。お前はおとなしくしてろよわんころ。そこは『中立地帯』だ。この意味は流石にボスから聞いているだろう?」
エヴァンの言葉にヴェルデは入り口に棒立ちしたままうんうんと頷く。
その顔はどこか得意げだった。
「そりゃあ勿論っス。中立地帯でドンパチやるってことは、街の羊飼いと猟犬全てを敵に回すってことっス。この日本の中立地帯がどの程度の効力を持ってるのかは知らないッスけど」
流石に最低限の知識は有していたことにエヴァンは心底ホっとする。
そこから教育しなければならないとはさすがに思いたくなかったのだ。
「それだけわかってりゃ十分だ。というわけでカフェに向かうぞ」
「はあい、先輩!あいつら邪魔してこなきゃいいけど」
「どうだかな。準備していくから外で待っとけ」
エヴァンがしっしっと退室を促す。
ヴェルデが腕を後頭部で組み、部屋から出ていった。
ようやく一心地つき、エヴァンは乗り気になれない仕事の為に準備を始めたのだった。
「……煩いな」
窓の外、羽虫が飛んでいる。
耳障りで、不愉快で。
入り込まれたら困るとエヴァンは窓をさっさと閉めた。
「あのカフェなあ……うーん。あ、バレたか」
一方その頃、冬真はベッドに寝そべりだらしのない格好で空を見ていた。
夜一はその傍らでベッドに腰掛け己の武器の手入れを行っていた。
「何してたの?」
「情報収集。イギリス野郎の部屋の窓が開いてたんで、そっちに聞き耳を立ててたんだよ」
冬真が手のひらに何か小さな物体を乗せ、夜一に見せてくる。
そこにいたのは羽虫……ではなく超小型のドローンだった。
現代の技術では決して不可能ではないが、高額になるだろう。
金がどうたらこうたらと喚いていた彼らのどこにねん出する金があるのだろうか。
しかし、現実に彼らは持っていた。
「どうするの?これから」
「イギリスの連中は頭の悪そうなチンピラ羊飼いどもとは全く違いそうだからなあ。とはいえあのチンピラどもは数の暴力どころかこっちの足を引っ張るレベルだ。それならいないほうがいいよなあ」
手のひらでドローンを握りつぶし、冬真はため息をつく。
「殺していいの?」
「……いやいやいや!そうナチュラルに殺そうとするなよ!馬鹿だろっ!ただ、あのカフェにターゲットがいるって情報を流せばあのチンピラどもが勝手に再起不能にならないかなあって。あのカフェで戦うなって言うのはK県では有名だからなあ」
「……それって直接手を下すのと大差ないよね?」
夜一の言葉に冬真は背中を向ける。
対話拒否だった。
朝。
エヴァンの部屋にどたどたとヴェルデがやってくる。
「朝っぱらから元気だな……」
「先輩も神父なら朝早く活動するべきでしょ?」
エヴァンはまだ部屋で微睡んでいる最中であり、ノックもせず入ってきたヴェルデに軽くため息をつく。
そうしている間にもヴェルデは閉じきっているカーテンを開き、窓を全開にする。
「ほら、陽の光を浴びないと不健康っスよ!」
「ベルナルドにやれって」
「既にやってきて追い出されたとこっス……」
しゅん、と悲しそうな顔をするヴェルデに憐みではなくため息が零れる。
この子供はどうにも若さにかまけて暴走しがちである。
(ベルナルドの旦那に押し付けられたしなあ)
そもそもエヴァンはこんな得体のしれないろくでもない男の依頼よりも日本でやりたいことがあるのだ。
しかし、とは言ってもベルナルドはエヴァンのボスだ。
彼が依頼を受けると決めた以上、エヴァンには『よほどのことがない限り』従う義務がある。
エヴァンは傭兵となるときにこの規則を嫌というほどベルナルドに叩き込まれた。
ヴェルデは未だ躾中なのだ。
「で、これからどうするんスか?」
ヴェルデはきらきらと曇りのない目でエヴァンを見つめてくる。
どうにもやりにくい。
「黒間市についてはここに来る前にある程度調べてある。この街の羊飼いたちの集まるカフェ兼バーがあるらしいから、まずはそこに情報収集に行く。お前はおとなしくしてろよわんころ。そこは『中立地帯』だ。この意味は流石にボスから聞いているだろう?」
エヴァンの言葉にヴェルデは入り口に棒立ちしたままうんうんと頷く。
その顔はどこか得意げだった。
「そりゃあ勿論っス。中立地帯でドンパチやるってことは、街の羊飼いと猟犬全てを敵に回すってことっス。この日本の中立地帯がどの程度の効力を持ってるのかは知らないッスけど」
流石に最低限の知識は有していたことにエヴァンは心底ホっとする。
そこから教育しなければならないとはさすがに思いたくなかったのだ。
「それだけわかってりゃ十分だ。というわけでカフェに向かうぞ」
「はあい、先輩!あいつら邪魔してこなきゃいいけど」
「どうだかな。準備していくから外で待っとけ」
エヴァンがしっしっと退室を促す。
ヴェルデが腕を後頭部で組み、部屋から出ていった。
ようやく一心地つき、エヴァンは乗り気になれない仕事の為に準備を始めたのだった。
「……煩いな」
窓の外、羽虫が飛んでいる。
耳障りで、不愉快で。
入り込まれたら困るとエヴァンは窓をさっさと閉めた。
「あのカフェなあ……うーん。あ、バレたか」
一方その頃、冬真はベッドに寝そべりだらしのない格好で空を見ていた。
夜一はその傍らでベッドに腰掛け己の武器の手入れを行っていた。
「何してたの?」
「情報収集。イギリス野郎の部屋の窓が開いてたんで、そっちに聞き耳を立ててたんだよ」
冬真が手のひらに何か小さな物体を乗せ、夜一に見せてくる。
そこにいたのは羽虫……ではなく超小型のドローンだった。
現代の技術では決して不可能ではないが、高額になるだろう。
金がどうたらこうたらと喚いていた彼らのどこにねん出する金があるのだろうか。
しかし、現実に彼らは持っていた。
「どうするの?これから」
「イギリスの連中は頭の悪そうなチンピラ羊飼いどもとは全く違いそうだからなあ。とはいえあのチンピラどもは数の暴力どころかこっちの足を引っ張るレベルだ。それならいないほうがいいよなあ」
手のひらでドローンを握りつぶし、冬真はため息をつく。
「殺していいの?」
「……いやいやいや!そうナチュラルに殺そうとするなよ!馬鹿だろっ!ただ、あのカフェにターゲットがいるって情報を流せばあのチンピラどもが勝手に再起不能にならないかなあって。あのカフェで戦うなって言うのはK県では有名だからなあ」
「……それって直接手を下すのと大差ないよね?」
夜一の言葉に冬真は背中を向ける。
対話拒否だった。
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