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EP3 復讐の黄金比2 ラテア包囲網
ノア
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朝八時過ぎ。もっと早くに起きていたけれど、夏輝と話す気にもなれずごろごろしていた。
開けられた窓からは優しい日差しが入ってくる。起きろって俺に言っているみたいだ。
(起きる気しねえ……)
尻尾が不機嫌にぱたぱたと強くベッドの上を叩く。
不機嫌というか、落としどころをどうするかが見いだせていない。
一晩寝たところでそれは変わらなかった。
(でも、いい加減機嫌直してせめて朝くらいはちゃんと話したほうがいい、よな)
重たい思考を振り払い、いい加減起きようと身体に力を入れたところで。
「ラテア、朝ごはん出来た……あ」
ぴんぽん、という玄関のチャイムの音が無慈悲にも鳴った。
「思ったより早いな。九時過ぎって話だったんだけど……ここに置いておくからね。待たせちゃうのも悪いからちょっと行ってくるよ」
「……おう」
それしか言えなかった。
聞こえていないようで、振り返ることはない。
夏輝がたたたっと大した距離もないのにかけていく。俺はさっさと起き上がり、買い換えた以前より一回り大きなこたつテーブルの上に置かれた朝食を見る。
流石に……待たないのはちくちく良心が痛む。出かける準備をしなければ。俺は人が入ってくる前にさっさとパジャマからいつものパーカーとジーンズに着替える。
「あ、ラテア起きたんだね。おはよう」
「……おはよ」
夏輝が戻ってきたところで俺に声をかける。
ぼそぼそと普段よりもずっと小さな声量で俺もおはようを返す。
玄関の方を見ると、少しホっとした顔をした夏輝とその隣に俺よりいくらか背の低い金髪の少年がいた。
丸っこい顔に大きな瞳。
一見すると美少女に見えなくもないが、どうやら男らしい。
「ラテア、この子はノア。俺の幼馴染で親友。ノア、こっちはラテア。俺の」
「大切な友達、でしょ?耳にタコができるくらいラテア君の事はいっぱい聞いてるよ。あ、はじめまして!ご紹介にあずかりましたノアって言います。仲良くしてくれると嬉しいな」
「……どうも」
恥ずかしいやら何やら。でも、ノアの事を夏輝は親友って紹介してきた。
(……そりゃ、知り合った期間とか色々あるし?それに夏輝と同じでイイヤツっぽいし)
俺よりも小さくて、小動物を髣髴とさせる。
手を差し出してくるノアと握手を交わしつつ、俺は心の中で言葉にならないもやもやを感じていた。
最近は感情に振り回されてばかりだ。
「えっと、ラテア……です」
ぼそぼそと、警戒するようにじぃっとノアを見ながら俺は自分の名前を口にする。
「うん、よろしくね!よかったら一緒に勉強しない?」
ノアは夏輝と同じようなきらきらとした優しい笑顔で俺に声をかけてきた。
眩しい。
夏輝の笑顔を見たときに感じたのとまったく同じ感想を抱く。
「いや、俺はちょっと……行くところあるから。その、二人でゆっくりして」
くるるるる、喉の奥から威嚇の声が漏れそうになるのを止めつつ、俺は力なく笑った。
「もう来たし、俺は行くよ夏輝」
「せめて朝ごはんを一緒に……!」
「大丈夫。カフェでお願いすれば食べられるし。邪魔したくないからさ」
普段よりもずっと冷たい声が出て、自分でも驚いた。
俺はそのまま夏輝とノアの間をすり抜け扉から外へと飛び出す。
俺の素晴らしい耳は、部屋を出てなお薄い壁などないように夏輝とノアの会話を認識してしまう。
「夏輝、ラテア君に何かしたの?」
「……し、してない。でも……」
夏輝の戸惑った声が聞こえる。
階段を降りようとすると、大家さんが人好きのする笑みを浮かべ挨拶をしてくる。
俺も軽く頭を下げ、挨拶をしてからそのまま駆け下りていく。
ちゃんと笑顔を作れていただろうか?わからない。
「それ、心当たりがあるんでしょ!ちゃんと何かあるなら謝らないと。二人共一緒に住んでるんだから、仲良くしなきゃ。ラテア君の事好きなんでしょ?」
「うん」
昔から仲が良かったというのがよくわかるやりとり、距離感。
自分でもわかってる。俺はノアに嫉妬しているのだ。
「別に、怒ってはいないから。んじゃな!」
俺は夏輝とノアの間をすり抜けるように走りだす。
どちらかと言えば、俺は夏輝に怒ってはいない。俺自身の狭量さに辟易していた。
なんにせよ、少し考えたりするためにも昼間はここにいないほうがいい。いたらもっとノアの事を意識してしまって、自滅するのが目に見えていた。
(夏輝は、ノアの事が好きなんだろうか。……本当にただの親友?)
邪推が止まらない。こんなに人を好きになることなんて今までなかったから。
ぎゅ、と胸を抑える。
空を見上げれば忌々しい位の晴れ空。
爽やかな風が通り抜け、GWの始まりを祝福しているかのよう。
(この晴れを楽しめるくらいには……冷静さを取り戻さないと)
振り返ることなく、俺はただカフェへの道をひた走った。
開けられた窓からは優しい日差しが入ってくる。起きろって俺に言っているみたいだ。
(起きる気しねえ……)
尻尾が不機嫌にぱたぱたと強くベッドの上を叩く。
不機嫌というか、落としどころをどうするかが見いだせていない。
一晩寝たところでそれは変わらなかった。
(でも、いい加減機嫌直してせめて朝くらいはちゃんと話したほうがいい、よな)
重たい思考を振り払い、いい加減起きようと身体に力を入れたところで。
「ラテア、朝ごはん出来た……あ」
ぴんぽん、という玄関のチャイムの音が無慈悲にも鳴った。
「思ったより早いな。九時過ぎって話だったんだけど……ここに置いておくからね。待たせちゃうのも悪いからちょっと行ってくるよ」
「……おう」
それしか言えなかった。
聞こえていないようで、振り返ることはない。
夏輝がたたたっと大した距離もないのにかけていく。俺はさっさと起き上がり、買い換えた以前より一回り大きなこたつテーブルの上に置かれた朝食を見る。
流石に……待たないのはちくちく良心が痛む。出かける準備をしなければ。俺は人が入ってくる前にさっさとパジャマからいつものパーカーとジーンズに着替える。
「あ、ラテア起きたんだね。おはよう」
「……おはよ」
夏輝が戻ってきたところで俺に声をかける。
ぼそぼそと普段よりもずっと小さな声量で俺もおはようを返す。
玄関の方を見ると、少しホっとした顔をした夏輝とその隣に俺よりいくらか背の低い金髪の少年がいた。
丸っこい顔に大きな瞳。
一見すると美少女に見えなくもないが、どうやら男らしい。
「ラテア、この子はノア。俺の幼馴染で親友。ノア、こっちはラテア。俺の」
「大切な友達、でしょ?耳にタコができるくらいラテア君の事はいっぱい聞いてるよ。あ、はじめまして!ご紹介にあずかりましたノアって言います。仲良くしてくれると嬉しいな」
「……どうも」
恥ずかしいやら何やら。でも、ノアの事を夏輝は親友って紹介してきた。
(……そりゃ、知り合った期間とか色々あるし?それに夏輝と同じでイイヤツっぽいし)
俺よりも小さくて、小動物を髣髴とさせる。
手を差し出してくるノアと握手を交わしつつ、俺は心の中で言葉にならないもやもやを感じていた。
最近は感情に振り回されてばかりだ。
「えっと、ラテア……です」
ぼそぼそと、警戒するようにじぃっとノアを見ながら俺は自分の名前を口にする。
「うん、よろしくね!よかったら一緒に勉強しない?」
ノアは夏輝と同じようなきらきらとした優しい笑顔で俺に声をかけてきた。
眩しい。
夏輝の笑顔を見たときに感じたのとまったく同じ感想を抱く。
「いや、俺はちょっと……行くところあるから。その、二人でゆっくりして」
くるるるる、喉の奥から威嚇の声が漏れそうになるのを止めつつ、俺は力なく笑った。
「もう来たし、俺は行くよ夏輝」
「せめて朝ごはんを一緒に……!」
「大丈夫。カフェでお願いすれば食べられるし。邪魔したくないからさ」
普段よりもずっと冷たい声が出て、自分でも驚いた。
俺はそのまま夏輝とノアの間をすり抜け扉から外へと飛び出す。
俺の素晴らしい耳は、部屋を出てなお薄い壁などないように夏輝とノアの会話を認識してしまう。
「夏輝、ラテア君に何かしたの?」
「……し、してない。でも……」
夏輝の戸惑った声が聞こえる。
階段を降りようとすると、大家さんが人好きのする笑みを浮かべ挨拶をしてくる。
俺も軽く頭を下げ、挨拶をしてからそのまま駆け下りていく。
ちゃんと笑顔を作れていただろうか?わからない。
「それ、心当たりがあるんでしょ!ちゃんと何かあるなら謝らないと。二人共一緒に住んでるんだから、仲良くしなきゃ。ラテア君の事好きなんでしょ?」
「うん」
昔から仲が良かったというのがよくわかるやりとり、距離感。
自分でもわかってる。俺はノアに嫉妬しているのだ。
「別に、怒ってはいないから。んじゃな!」
俺は夏輝とノアの間をすり抜けるように走りだす。
どちらかと言えば、俺は夏輝に怒ってはいない。俺自身の狭量さに辟易していた。
なんにせよ、少し考えたりするためにも昼間はここにいないほうがいい。いたらもっとノアの事を意識してしまって、自滅するのが目に見えていた。
(夏輝は、ノアの事が好きなんだろうか。……本当にただの親友?)
邪推が止まらない。こんなに人を好きになることなんて今までなかったから。
ぎゅ、と胸を抑える。
空を見上げれば忌々しい位の晴れ空。
爽やかな風が通り抜け、GWの始まりを祝福しているかのよう。
(この晴れを楽しめるくらいには……冷静さを取り戻さないと)
振り返ることなく、俺はただカフェへの道をひた走った。
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