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EP3 復讐の黄金比1 黄金週間の憂鬱
すれ違い
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「ふえええええええ」
カフェから帰宅し、夕飯を食べて風呂に入った後。
テレビをつけつつ俺はフローリングに力なく突っ伏していた。
夏輝をちら、とみると誰かに電話をかけているようだった。
「夜遅くにごめんね!もう寝てた?あ、そっかよかった」
そりゃそうだ。
夏輝はほぼ毎日学校に行っている。
しかも性格もよし。友達も多いだろう。
(勉強を教えてくれる友達を探してんのか……俺じゃ教えられないしな。仕方ないよな)
身体を丸め、夏輝に背中を向ける。
唇を尖らせ、ぐるぐると喉の奥で小さく唸る。
そんなことをしてみても、一緒に過ごせないGWは変わらない。
「GW中暇な日ってある?ちょっと頼みたいことがあって……」
「本当!?実は勉強がちょっとマズくて、暇だったら教えて欲しいなって」
「ありがとう!うん、もしよかったらうちに来て。お昼ご飯とか出すし」
楽し気に話す夏輝。
ラテアはちぃとも楽しくない。
フローリングに軽く爪を立ててみる。
空しい。
(この家に呼ぶのかよ……!でも、仕方ないか)
俺の居場所が。
かといって他に場所もないのだし、夏輝は頼む側なのだ。
(ここに呼ぶのは当然かあ……まあ、どちらにせよ夏輝の居ない家に一人でいてもつまらないしな)
我儘なんて言えない、でも楽しくない。
ぐるぐる回る思考。
笑顔で頑張れよ、って言ってやれればいいのに口がうまく動いてくれない。
「それじゃあ明日。本当にありがとね!」
電話を切り、夏輝が俺の方へと寄ってくる。
俺の尻尾に手が触れる。
いつもなら自分から尻尾を手に絡めるところだが、今日はぱしんと尻尾で夏輝の手をつい叩いてしまった。
「ラテア、明日からノアが家に勉強を教えに来てくれることになったよ。ラテアは気にせずアパートにいていいからね」
「いや、いい。昼間はカフェにいるよ。勉強の邪魔になりたくないしさ」
正直に言おう。この時俺は少し拗ねていた。GWの事を聞かされてから俺はずっと楽しみにしていたから。
でも、仕方のないこともわかっている。
夏輝が羊飼いとして活動しなきゃいけないせいで勉強をする時間が普通の学生よりも少ないことはわかってた。
瑞雪の将来の選択肢を狭めないためにも勉強しろって言葉も全く持って正しい。俺は夏輝に勉強しなかったせいで不自由な思いをさせたいとは思わない。でも。
(やっぱり、寂しい……)
寂しい。本当は一緒に居たい。
俺は夏輝の方を見ない。今この顔を見られたくなかった。
どうして。きっと夏輝以外の事であれば、俺は素直に受け入れられたと思うんだ。
(どうしても夏輝の事だけは胸がざわざわする……)
感情のコントロールが途端にできなくなるんだ。
「ごめんね、不自由させて」
「……別にお前のせいじゃないだろ。謝るなよ」
お前が謝ることじゃない。
本心で思っていても、俺の口調はいつもよりも棘があった。
「それでも、俺もラテアと一緒に居たかったから。せめて勉強頑張るね!ちゃんと日々勉強ができていれば、こんな集中週間にせずに済むんだから」
夏輝の声にも寂しさが含まれている。
それでも努めて明るく夏輝は俺に声をかけてくれる。
「……わかってるんだ。本当に。勉強頑張れよ。俺の事は気にしなくていいよ」
「……うん。夕飯は一緒に食べようね、ラテア」
「考えとく」
普段よりもずっとぎこちないやり取り。
布団へと移動し、目を閉じる。初夏というほどではないけれど、もう厚着はいらないくらいにはポカポカと温かな気候。
(あったかい布団と飯、それに自由。優しい同居人兼友達もいる。それなのに、なんでこんなに苦しいんだ……?
どうせなら、夏輝といられる時間が短いのならもっと愛想よく仲良く過ごすべきなのに。
ああ、我ながら子供っぽい。普段瑞雪に子供じゃないって言っておきながら、こういう時だけはどこまでもガキだった。
「俺ももう寝るね。お休みラテア」
温かな手の感触。夏輝が俺の頭を撫でたのだ。
俺の大好きな手。温かくて、優しい。本当は今すぐ振り返って、顔を摺り寄せたかった。
「あ……」
夏輝の小さな声。俺の尻尾は夏輝の手に寄せられていた。無意識だった。
俺の精一杯の寂しい、という意思表示だった。
カフェから帰宅し、夕飯を食べて風呂に入った後。
テレビをつけつつ俺はフローリングに力なく突っ伏していた。
夏輝をちら、とみると誰かに電話をかけているようだった。
「夜遅くにごめんね!もう寝てた?あ、そっかよかった」
そりゃそうだ。
夏輝はほぼ毎日学校に行っている。
しかも性格もよし。友達も多いだろう。
(勉強を教えてくれる友達を探してんのか……俺じゃ教えられないしな。仕方ないよな)
身体を丸め、夏輝に背中を向ける。
唇を尖らせ、ぐるぐると喉の奥で小さく唸る。
そんなことをしてみても、一緒に過ごせないGWは変わらない。
「GW中暇な日ってある?ちょっと頼みたいことがあって……」
「本当!?実は勉強がちょっとマズくて、暇だったら教えて欲しいなって」
「ありがとう!うん、もしよかったらうちに来て。お昼ご飯とか出すし」
楽し気に話す夏輝。
ラテアはちぃとも楽しくない。
フローリングに軽く爪を立ててみる。
空しい。
(この家に呼ぶのかよ……!でも、仕方ないか)
俺の居場所が。
かといって他に場所もないのだし、夏輝は頼む側なのだ。
(ここに呼ぶのは当然かあ……まあ、どちらにせよ夏輝の居ない家に一人でいてもつまらないしな)
我儘なんて言えない、でも楽しくない。
ぐるぐる回る思考。
笑顔で頑張れよ、って言ってやれればいいのに口がうまく動いてくれない。
「それじゃあ明日。本当にありがとね!」
電話を切り、夏輝が俺の方へと寄ってくる。
俺の尻尾に手が触れる。
いつもなら自分から尻尾を手に絡めるところだが、今日はぱしんと尻尾で夏輝の手をつい叩いてしまった。
「ラテア、明日からノアが家に勉強を教えに来てくれることになったよ。ラテアは気にせずアパートにいていいからね」
「いや、いい。昼間はカフェにいるよ。勉強の邪魔になりたくないしさ」
正直に言おう。この時俺は少し拗ねていた。GWの事を聞かされてから俺はずっと楽しみにしていたから。
でも、仕方のないこともわかっている。
夏輝が羊飼いとして活動しなきゃいけないせいで勉強をする時間が普通の学生よりも少ないことはわかってた。
瑞雪の将来の選択肢を狭めないためにも勉強しろって言葉も全く持って正しい。俺は夏輝に勉強しなかったせいで不自由な思いをさせたいとは思わない。でも。
(やっぱり、寂しい……)
寂しい。本当は一緒に居たい。
俺は夏輝の方を見ない。今この顔を見られたくなかった。
どうして。きっと夏輝以外の事であれば、俺は素直に受け入れられたと思うんだ。
(どうしても夏輝の事だけは胸がざわざわする……)
感情のコントロールが途端にできなくなるんだ。
「ごめんね、不自由させて」
「……別にお前のせいじゃないだろ。謝るなよ」
お前が謝ることじゃない。
本心で思っていても、俺の口調はいつもよりも棘があった。
「それでも、俺もラテアと一緒に居たかったから。せめて勉強頑張るね!ちゃんと日々勉強ができていれば、こんな集中週間にせずに済むんだから」
夏輝の声にも寂しさが含まれている。
それでも努めて明るく夏輝は俺に声をかけてくれる。
「……わかってるんだ。本当に。勉強頑張れよ。俺の事は気にしなくていいよ」
「……うん。夕飯は一緒に食べようね、ラテア」
「考えとく」
普段よりもずっとぎこちないやり取り。
布団へと移動し、目を閉じる。初夏というほどではないけれど、もう厚着はいらないくらいにはポカポカと温かな気候。
(あったかい布団と飯、それに自由。優しい同居人兼友達もいる。それなのに、なんでこんなに苦しいんだ……?
どうせなら、夏輝といられる時間が短いのならもっと愛想よく仲良く過ごすべきなのに。
ああ、我ながら子供っぽい。普段瑞雪に子供じゃないって言っておきながら、こういう時だけはどこまでもガキだった。
「俺ももう寝るね。お休みラテア」
温かな手の感触。夏輝が俺の頭を撫でたのだ。
俺の大好きな手。温かくて、優しい。本当は今すぐ振り返って、顔を摺り寄せたかった。
「あ……」
夏輝の小さな声。俺の尻尾は夏輝の手に寄せられていた。無意識だった。
俺の精一杯の寂しい、という意思表示だった。
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