青い月にサヨナラは言わない

Cerezo

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EP2 卵に潜む悪意6 しつこいやつら

6-4(性描写あり)

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「やめろっ!ふざけるな!俺はいらないって言ってるだろうが!」

 全力で藻掻く。うつぶせにさせられ、さらに動きづらくなり力が籠められなくなる。
 水揚げされた魚レベルの抵抗しか出来ないまま、トツカは瑞雪の尻へと手を伸ばす。

「服が邪魔だな。瑞雪、お前は聞くにいつも否定ばかりだ。それともセックスを前にしたことがあるのか?」

 確かにトツカに対しては何かにつけてダメ出しばかりしている。それは認める。
 血を取りすぎるわ、勝手に暴走するわで瑞雪としては褒めるところなど一つもなかったのだ。
 しかし、トツカはなんだかんだ感情もあるし、赤ん坊なのだ。ほめて伸ばすという手段も必要だった。瑞雪は他人と行動したりコミュニケーションをとること経験が皆無であったためそれに気づかなかった。
 勿論、瑞雪からしてみればひたすら理不尽な目に遭っているし、トツカの暴走癖が悪いのは間違いない。しかし、世の中とは往々にして理不尽なものなのだ。こと瑞雪にとっては。

「それ、は」

 トツカの問いに瑞雪は言葉を詰まらせる。瑞雪にとって、その問いは聞かれたくない質問のうちの一つであった。
 愛のある性行為のことを示すなら答えはNOだ。一度たりとも瑞雪はしたことがない。
 しかし、そうでないもの-無理やりな行為、口にするのも悍ましい思い出したくないもの。そういったものであればしたことが、ある。
 したというか、されたというか。

「したことがないのならやってみるべきだ。食わず嫌い、やらず嫌いはよくないと思う。お前の疲れを癒すことができるかもしれない」

 ここで素直に過去に嫌なことがあったからやめてほしい、と口にできていればやめてくれたのかもしれない。しかし、瑞雪にはどうしてもそのことを口にすることが出来なかった。
 彼にとって何よりも、人に知られたくない秘密だったからだ。

「……逆に疲れるだけだ」

 うまく言葉が出てこない。もとより饒舌では全くなかったが、今は余計にだ。

「やってみなければわからない」

 何故そこまで頑固なのか。単に盛っているだけ?うつぶせにされ、押さえつけられているせいで瑞雪にはトツカの表情がわからない。
 声音はどこか意固地で、意見を変える気はないということだけは瑞雪にだって理解できた。
 
「っぅ”……」

 トツカがほんの少し力を籠めるだけでベルトが弾け、ズボンが破れ下半身がみっともなく露出させられる。あまりにも情けない有様だ。
 下着ごと残骸をはぎ取られ、フローリングへと投げ捨てられる。
 片手が離れたことでトツカの力が緩み、瑞雪はソファからフローリングへと転がり落ちた。肘を強かに打ち付け一瞬顔を歪める。

「逃げるな」
「っが、ぁ」

 足を掴まれる。トツカのため息が頭上から聞こえた。
 上半身を捩りトツカの顔を見やる。見下ろすトツカの顔は雄の顔。口では瑞雪を癒すと言いながら、股間を勃起させている。
 それでも見知った支配欲と加虐欲の中に労るだとか、心配だとか、そういう光がほんの少し見えた。どちらも感じているのは本当なのだろう。
 それが見えたから、余計にどうしていいかわからなくなる。
 いっそ悪意に塗れてくれたならまだやりやすいんだ。

「瑞雪……」

 かちゃかちゃと音がして、トツカの前が寛げられぼろんとちんこが飛び出す。これで見るのは二度目だが、相変わらず化け物みたいなでかさだった。
 そのまま覆いかぶさられ、床に身体が押し付けられる。ソファよりも床の方が当然硬い。身体がみしみしと軋み、痛む。

「っひぅ」

 尻たぶに亀頭が触れる。先端からはすでに先走りが垂れており、ぷちゅりと銀の糸を引く。
 ぞわぞわと鳥肌が立ち、手を前に出しトツカの下からはい出そうとする。
 トツカは最早無言で瑞雪に体重をさらにかけ、身動きを取れなくする。そのまま何度も何度も尻の合間をちんこでなぞる。

「アレウが言っていたのはここか」
「~~~っ……!」

 瑞雪のものよりも一回り大きな手が尻たぶを無遠慮にむんずと掴む。尻肉を割り開かれ、慎ましやかな桃色のアナルが露わになる。
 無骨な人差し指がアナルの縁に触れ、びくりと瑞雪の背中が震える。
 がりがりとフローリングに爪を立てても何の抵抗にもならない。

「無理っ……入れる場所じゃねえよ!やめろ、くそがっ!裂けるだろうが!っぁ、ぅ”」

 瑞雪の項をトツカが食む。

「っひぅ、なに、してっ……っづ!?」
「れろ……ん、美味そうだった。ここが」

 がり。歯が突き立てられ皮膚が割かれる。ちりちりとした痛みと共に僅かな熱。

「食べたい」

 一旦顔を離し、トツカの手が瑞雪の上衣へとかけられる。びりびりと音がして、布切れへと変り果てるのは一瞬だった。
 かろうじて布が引っかかっているだけ。戻ってきて空調もつけていないため肌寒く、二重の意味で肌が粟立つ。

「この傷……」
「見るな」

 露わになった瑞雪の背中には背中いっぱいに大きな十字の傷が刻まれていた。トツカが思わずぽつりと口に出すと、瑞雪は振り返って睨みつけた。

「……もう一度言う、見るな」

 逃げられる可能性はどうせゼロだ。瑞雪には、見られたくないもの、知られたくないことがたくさんある。己を恥じている。どうしたら胸を張って生きられるのかなぞわからない。
 何かを堪えるような声音にトツカは頷き、瑞雪の身体を仰向けへとひっくり返した。そのことに詰めていた息をほんの少しだけ吐く。
 ああ、これが『あいつ』だったら絶対に聞いてはくれなかっただろう。こんなことで目の前の相手があいつでないのだと安堵する羽目になるなんて。

(大丈夫、我慢すればいい……我慢すれば。こんなこと何でもない、別に初めてでもない、自分の身体がどうなろうがどうでもいい……)

 こんなことで少しだって傷ついてたまるか。こんなくだらないことで。
 仰向けにされたことで自由になった腕を顔の前に掲げ、顔を隠す。
 トツカはそんな瑞雪の太ももを掴み、片足を肩につくくらいに上げる。身体が柔らかくもない瑞雪はキツい体勢であり、呻く羽目になる。
 
「っぁ”……ぐ」

 ぬるぬると熱い肉の塊がアナルの縁に再び触れる。 
 しかし、今度は擦りつけるだけでなく挿入するつもりなのだろう。ぐ、と腰に力が入り亀頭のさきっぽが狭いアナルの縁にめり込む。

「ぐ、ぁ”……」

 痛い。当たり前だ、ここは受け入れるところではない。そもそも女の膣だって解しもせず性急に規格外のちんこを突っ込もうとすれば痛いに決まっている。
 さっきから悪態をつこうにも口からは意味をなさない呻き声ばかりがあふれ出る。
 視覚を自らシャットアウトしているため、聴覚が鋭くなる。ふぅふぅとトツカの荒い息がよく聞こえた。結局風呂も入っていないし夕飯も食べていない。

「瑞雪……瑞雪」
「っぃ、ぐ……ぅ、ぁ”」

 うわ言のようにトツカは繰り返す。太ももを掴む手に力がさらに籠められる。骨が折れそうだし、間違いなく明日は真っ赤な手の跡がつくに違いない。
 めりめりと嫌な音を立てながら少しずつ、少しずつ肉が無理やり割り開かれていく。刺されたり打ち付けたりという痛みとは全く異なる内臓の痛み。
 久々に感じた感覚に脂汗が止まらない。歯を食いしばり必死に耐える。耐えるしかできない。快楽でなく苦痛を与えられるのは本当に久しぶりで、耐え方を忘れかけてしまっていた。
 それくらいこの数年間は楽に過ごせていた。こんな形でぶり返すなんて。

「っぎ、ぃ”……!」

 とうとう亀頭部分がアナルに埋まる。でっぷりと太った化け物みたいな亀頭。一番キツい部分が入り、トツカがそっと息をつく。
 当然慣らしていない穴はぶちりと音と共に痛みが走る。続いて感じるどろりとした感触。切れて血が出たのだろう。最悪だ。

「熱い……」

 呟くトツカ。寡黙なトツカは最低限しか喋らない。暑かったのか、服を脱ぎ捨て額の汗を太ももを押さえつける手とは反対の手で乱暴に拭う。

「瑞雪、苦しくはないか?」

 レイプしておいてこの言い草。いや、こいつにレイプしているなんていう思考はない。そもそもレイプの意味すら知らないだろう。

「っは、はぅ……ぐ、さっさと、終わらせろ……」

 完全にやせ我慢だった。顔は真っ青で食いしばった歯はがちがちと気を抜くとすぐに震え出しそうになる。
 別に全く悲しくはないが、痛みから来る生理的な涙や鼻水が止まらない。顔を隠しているせいでトツカにバレていないことだけが救いだ。

 
 






 



 
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