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EP1 狐と新緑2 羊飼い
デバガメ
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「お疲れ様です」
あれからも暫くイオの扱い方、魔法の制御方法を訓練し俺たちはカフェへと戻ってきた。
まあ、俺はただマナを渡していただけなんだけど。マナを渡すだけでも疲れた。際限なく練習し続けるんだからな。
その甲斐あって最後の方には一部難ありだったが、風の刃は完璧にマスターしたといえよう。
八潮は人の良い笑顔でカフェへと俺を迎え入れる。気が付けば時刻は夕方になっており、カフェは多くの客でにぎわっていた。
一足先に俺と、あとはスマホ越しにトロンだけが戻ってきていた。八潮にトロンが挨拶しつつ、八潮も自らの自己紹介を行う。
「あ、お疲れ様~」
「よっ。ラテアだっけか」
くたくたで適当にあいた席に座ったところで場違いに明るい声が後ろからかけられる。振り返ると黒ピンクと金赤がいた。
「ぎゃっ!?」
思わず椅子から軽く飛び上がり、そのまま尻を軽く打つ。痛い。
夏輝はと言えば外でまだ瑞雪に話を聞いているから戻って来ていない。
隠れ蓑もないため逃げることもできず、俺はぎぎぎ、と音がするくらい不自然に首を動かし二人に向き直った。
「ちょっと、失礼じゃない?別に取って食おうとしてるわけじゃないんだしさ。ね?アレウ」
黒ピンクーロセがくすくすとそれはそれは愉快そうに笑いながら俺の肩へと手をかける。
アレウも同じように反対側の肩を。逃げ場がなくて気持ちが悪い。
そりゃそうだ、淫魔はともかく上位の種族のやつに掴まれるなんて心臓をむき出しにされて鷲掴みにされているようなもんなんだから。
『ちょ、ちょっとラテア!何でここに淫魔と吸血鬼がいるのよ!』
トロンだって知識はある。すぐさま異変を察知し、ヤバさに小さく小声で画面越しに叫んだ。っていうかあいつは吸血鬼なのか。
吸血鬼はエデンの中でも有数の上位種族だ。魔族の中でも支配階級にあり、夜は彼らの独壇場と言っても過言ではない。らしい。
らしいというのは会ったことがないからだ。初めてだよ本物の吸血鬼を見るなんてな。
「知らないって……なんかここの常連っぽいんだよ!離してくれよ、俺はへとへとだし食べてもおいしくないんだから……血なら純血の乙女とかそっちだろ?淫魔だってそっちのがいいだろ、だからしっしっ」
早く夏輝でも瑞雪でもいいから戻ってきてほしい。そう思っていると間に割って入ってきたのは八潮だった。
「お二人とも、それくらいにしてあげてください」
八潮はグラスが載せられた盆をテーブルの上に置く。
八潮にはさしもの二人も逆らえないのか仕方ないなあと言った顔で少し離れた席に腰掛ける。
「私たちはそこの子と仲良くしたかっただけなんだけどね。ね、アレウ」
八潮は俺の前に緑色のしゅわしゅわした液体の入ったグラスを置いた。液体の上にはぷかぷかと真っ白な塊が浮いている。
あんまり見たことがなかったが、これは多分アイスというやつだろう。エデンにもあるにはあるが、俺の住んでいた地域は熱い場所だったから氷魔法を使えるやつがたまーに売りにくるくらいだった。
でも、この緑色の液体はなんなのだろう?
八潮は続いて二人組のいる席に紅茶の入ったポットとティーカップを置いた。
「全くだ。新人には先輩として挨拶してやるべきだろ?」
わかっててビビらせに来たくせに。絶対そうだ。ぐるぐる唸る俺に対し、二人は楽し気に笑うばかりだ。ムカつく。
『うーん』
「どうしたんだよトロン」
画面の中でうんうんと唸るトロンに俺は首を傾げる。
『どこかで見たことがある気がするのよねえ』
見たことがあるって、誰を?まさかこの二人組で指名手配されているなんてことはないよな?なんて少し不安になる。
前も見たが、一応二人ともに首輪をしている。首輪と言うかチョーカーでもあるけど。
が、なんていうか……無骨な俺の首輪と異なりデザインが凝っていて洒落ている。
「彼らは猟犬ではありません。昔からこの店の常連で、エデン人ではありますが地球人の中に溶け込んでいて害はないです。はい、基本的に」
八潮の言葉に俺は心底安心する。そしてグラスに挿されたストローに口をつけ、ひと口飲む。
しゅわしゅわぱちぱちとした感覚に驚き、俺はぱちぱちと瞬きをする。
「それはメロンクリームソーダって言うんですよ。ココアとは違いますが同じく甘い飲み物です。気に入りましたか?」
「甘い、旨い」
付属のスプーンを手に取りつつく。冷たい、甘い、美味しい。
「まあ猟犬じゃないし御絡流の会所属でもないけど、私たちは八潮さんから依頼を受けたり、情報を集めたりしているよ。気軽に呼んでくれて構わないし、仲良くしてくれると嬉しいな。八潮さん、この子にケーキもつけてあげて」
「俺たちの奢りだ」
一体何を考えているんだと思いつつ、まあ貰えるものは貰っておく。
アレウとロセ、信用は難しいけどまあ……今のところ危害を加えてこないならよしとする。
椅子を持ってきてわざわざ俺のテーブルにたむろする。
長い艶やかな黒髪、白雪のような肌のロセと健康的な褐色肌のアレウ。しかしその瞳は言われてみれば吸血鬼特有のものだった。
本物の吸血鬼を見たことなんて殆どないからわからないのも仕方ない……と思っておく。日差しが苦手とか諸説あるが、日差しが心地よいカフェで元気にしているので全くそんなことはないのかもしれない。
美しく全身についた筋肉は野生の獣を連想させる。淫魔はともかく吸血鬼にかかれば一瞬で俺は殺されてしまうのだろう。
『思い出した!』
そんなところでトロンが急に大声をあげる。何事かと画面を見ればわなわなと震えながらロセのことを指さしていた。
『雑誌とかで見るモデルの人!』
トロンは顔を真っ赤にして大興奮している。モデル、そんなに有名なのか?俺が知る由もないわけで。
俺はロセの方を見おればロセは相変わらず柔和な微笑みを浮かべていた。
「お前最近生まれたんじゃないのかよ」
ちんちくりんの癖してミーハーか?トロンのスマホの画面を指でつつくとトロンは存在しない胸を張って見せた。
『そうだけど、基本的な知識とかはちゃんと持ってるんだから!調べたもん!最近の流行りとか!っていうかラテアこそ知らないのぉ!?』
「知るわけないだろ、俺はずっと閉じ込められてたんだぞ」
なんか服とか装飾品もおしゃれだし、確かにモデルっぽい。
モデルがどういうことをしているのかはあんまりよく知らないし、興味もなかったが。服なんて動きやすくて身体を守ってくれればいいじゃん、とか思う。
でも、エデンでもそうだったけど服装とかおしゃれに気を遣うやつって結構多いんだよなあ……。
俺にはわからない領域だ。そんなものよりこのクリームソーダとかのが好きだ。
『いいなあ。あたしのこの服をみなさいよラテア!あんたも大概だけど、ダサいわ!』
「夏輝は服の趣味とか子供ですからね……」
言われてちらりと画面を見る。トロンの服は真っ黒な着物を着ていた。全く飾り気がない。
確かにロセのものと比べたらとてつもなく地味なことは俺にも分かった。
運ばれてきたケーキはたっぷりの生クリームにつやつやに輝く真っ赤な苺が乗ったショートケーキだ。
苺から食べるべきか、それとも最後にとっておくべきか。悩ましい。
「トロンちゃんだっけ……君はファッションとかに興味あるんだね。かわいい服とか好き?」
『好き!』
「それじゃあ今度君にあいそうな服を私が選んであげようか。電霊だからデータ化しないと着せ替えできないかもしれないけど……」
画面の中でぴょんぴょんウサギみたいにトロンが跳ねる。スマホのホーム画面を縦横無尽に駆け巡っている。
元気だなあ、なんて他人事のように思う。
っていうか、なんとなく思ったがこいつと俺の扱い方似てないか?気のせいか?
「それなら多分なんとかなりますよ」
『やったぁ!ありがとう八潮のおじさま!あとロセさんも!』
そんなロセの様子をアレウはコーヒーを飲みつつ見守っていた。
ロセは淫魔らしいし、アレウに飼われているのだろうか?大分自由にさせてるみたいだけど。魔族は趣味の悪いやつが多いイメージを勝手に俺は持っている。
こんな人間の住む場所で見るとは思ってなかったが。
「そういえば……八潮は夏輝とどういう関係なんだ?親じゃないんだろ?」
ふと、疑問に思ったことを口にする。
「ええ。夏輝の両親はもう亡くなっているので……遠縁の親戚といったところでしょうか。夏輝自身施設を気に入っていたのもありますし、施設の他の子どものことをとても可愛がっていて中学卒業までは施設にいたのですが、これ以上施設に迷惑をかけたくないとのことで独り暮らしを始めたんです。施設の院長もなかなか過保護というか心配症で最初は反対されたのですが……私が保護者になることで許可をもらいましてね」
目を細める八潮はまさに孫を見る好々爺そのものだった。まあ、そこまで歳を食ってるようには思えなかったけど。
「施設自体は割と近場にあるんだよね。私とアレウも行ったことあるし」
ロセがからからと笑う。そんな風に世間話を交えつつ、アレウたち二人は俺に様々な今のこの地球のことを教えてくれた。
ここがK県の夜間市という町であること、この町のおすすめの店とか、色々。
情報が大事なことは俺にだってわかる。虎視眈々とエデンに帰る手だてを探さなければならない。
二人にどうやってエデンから地球へやってきたのかを聞きたいところだが、脱走の意思ありと判断され、夏輝はともかく瑞雪の耳に入れられたらたまったものではない。
全てがご破算だ。聞きたいのをぐっと我慢したまま、俺は二人の話に耳を傾け続けていた。
あれからも暫くイオの扱い方、魔法の制御方法を訓練し俺たちはカフェへと戻ってきた。
まあ、俺はただマナを渡していただけなんだけど。マナを渡すだけでも疲れた。際限なく練習し続けるんだからな。
その甲斐あって最後の方には一部難ありだったが、風の刃は完璧にマスターしたといえよう。
八潮は人の良い笑顔でカフェへと俺を迎え入れる。気が付けば時刻は夕方になっており、カフェは多くの客でにぎわっていた。
一足先に俺と、あとはスマホ越しにトロンだけが戻ってきていた。八潮にトロンが挨拶しつつ、八潮も自らの自己紹介を行う。
「あ、お疲れ様~」
「よっ。ラテアだっけか」
くたくたで適当にあいた席に座ったところで場違いに明るい声が後ろからかけられる。振り返ると黒ピンクと金赤がいた。
「ぎゃっ!?」
思わず椅子から軽く飛び上がり、そのまま尻を軽く打つ。痛い。
夏輝はと言えば外でまだ瑞雪に話を聞いているから戻って来ていない。
隠れ蓑もないため逃げることもできず、俺はぎぎぎ、と音がするくらい不自然に首を動かし二人に向き直った。
「ちょっと、失礼じゃない?別に取って食おうとしてるわけじゃないんだしさ。ね?アレウ」
黒ピンクーロセがくすくすとそれはそれは愉快そうに笑いながら俺の肩へと手をかける。
アレウも同じように反対側の肩を。逃げ場がなくて気持ちが悪い。
そりゃそうだ、淫魔はともかく上位の種族のやつに掴まれるなんて心臓をむき出しにされて鷲掴みにされているようなもんなんだから。
『ちょ、ちょっとラテア!何でここに淫魔と吸血鬼がいるのよ!』
トロンだって知識はある。すぐさま異変を察知し、ヤバさに小さく小声で画面越しに叫んだ。っていうかあいつは吸血鬼なのか。
吸血鬼はエデンの中でも有数の上位種族だ。魔族の中でも支配階級にあり、夜は彼らの独壇場と言っても過言ではない。らしい。
らしいというのは会ったことがないからだ。初めてだよ本物の吸血鬼を見るなんてな。
「知らないって……なんかここの常連っぽいんだよ!離してくれよ、俺はへとへとだし食べてもおいしくないんだから……血なら純血の乙女とかそっちだろ?淫魔だってそっちのがいいだろ、だからしっしっ」
早く夏輝でも瑞雪でもいいから戻ってきてほしい。そう思っていると間に割って入ってきたのは八潮だった。
「お二人とも、それくらいにしてあげてください」
八潮はグラスが載せられた盆をテーブルの上に置く。
八潮にはさしもの二人も逆らえないのか仕方ないなあと言った顔で少し離れた席に腰掛ける。
「私たちはそこの子と仲良くしたかっただけなんだけどね。ね、アレウ」
八潮は俺の前に緑色のしゅわしゅわした液体の入ったグラスを置いた。液体の上にはぷかぷかと真っ白な塊が浮いている。
あんまり見たことがなかったが、これは多分アイスというやつだろう。エデンにもあるにはあるが、俺の住んでいた地域は熱い場所だったから氷魔法を使えるやつがたまーに売りにくるくらいだった。
でも、この緑色の液体はなんなのだろう?
八潮は続いて二人組のいる席に紅茶の入ったポットとティーカップを置いた。
「全くだ。新人には先輩として挨拶してやるべきだろ?」
わかっててビビらせに来たくせに。絶対そうだ。ぐるぐる唸る俺に対し、二人は楽し気に笑うばかりだ。ムカつく。
『うーん』
「どうしたんだよトロン」
画面の中でうんうんと唸るトロンに俺は首を傾げる。
『どこかで見たことがある気がするのよねえ』
見たことがあるって、誰を?まさかこの二人組で指名手配されているなんてことはないよな?なんて少し不安になる。
前も見たが、一応二人ともに首輪をしている。首輪と言うかチョーカーでもあるけど。
が、なんていうか……無骨な俺の首輪と異なりデザインが凝っていて洒落ている。
「彼らは猟犬ではありません。昔からこの店の常連で、エデン人ではありますが地球人の中に溶け込んでいて害はないです。はい、基本的に」
八潮の言葉に俺は心底安心する。そしてグラスに挿されたストローに口をつけ、ひと口飲む。
しゅわしゅわぱちぱちとした感覚に驚き、俺はぱちぱちと瞬きをする。
「それはメロンクリームソーダって言うんですよ。ココアとは違いますが同じく甘い飲み物です。気に入りましたか?」
「甘い、旨い」
付属のスプーンを手に取りつつく。冷たい、甘い、美味しい。
「まあ猟犬じゃないし御絡流の会所属でもないけど、私たちは八潮さんから依頼を受けたり、情報を集めたりしているよ。気軽に呼んでくれて構わないし、仲良くしてくれると嬉しいな。八潮さん、この子にケーキもつけてあげて」
「俺たちの奢りだ」
一体何を考えているんだと思いつつ、まあ貰えるものは貰っておく。
アレウとロセ、信用は難しいけどまあ……今のところ危害を加えてこないならよしとする。
椅子を持ってきてわざわざ俺のテーブルにたむろする。
長い艶やかな黒髪、白雪のような肌のロセと健康的な褐色肌のアレウ。しかしその瞳は言われてみれば吸血鬼特有のものだった。
本物の吸血鬼を見たことなんて殆どないからわからないのも仕方ない……と思っておく。日差しが苦手とか諸説あるが、日差しが心地よいカフェで元気にしているので全くそんなことはないのかもしれない。
美しく全身についた筋肉は野生の獣を連想させる。淫魔はともかく吸血鬼にかかれば一瞬で俺は殺されてしまうのだろう。
『思い出した!』
そんなところでトロンが急に大声をあげる。何事かと画面を見ればわなわなと震えながらロセのことを指さしていた。
『雑誌とかで見るモデルの人!』
トロンは顔を真っ赤にして大興奮している。モデル、そんなに有名なのか?俺が知る由もないわけで。
俺はロセの方を見おればロセは相変わらず柔和な微笑みを浮かべていた。
「お前最近生まれたんじゃないのかよ」
ちんちくりんの癖してミーハーか?トロンのスマホの画面を指でつつくとトロンは存在しない胸を張って見せた。
『そうだけど、基本的な知識とかはちゃんと持ってるんだから!調べたもん!最近の流行りとか!っていうかラテアこそ知らないのぉ!?』
「知るわけないだろ、俺はずっと閉じ込められてたんだぞ」
なんか服とか装飾品もおしゃれだし、確かにモデルっぽい。
モデルがどういうことをしているのかはあんまりよく知らないし、興味もなかったが。服なんて動きやすくて身体を守ってくれればいいじゃん、とか思う。
でも、エデンでもそうだったけど服装とかおしゃれに気を遣うやつって結構多いんだよなあ……。
俺にはわからない領域だ。そんなものよりこのクリームソーダとかのが好きだ。
『いいなあ。あたしのこの服をみなさいよラテア!あんたも大概だけど、ダサいわ!』
「夏輝は服の趣味とか子供ですからね……」
言われてちらりと画面を見る。トロンの服は真っ黒な着物を着ていた。全く飾り気がない。
確かにロセのものと比べたらとてつもなく地味なことは俺にも分かった。
運ばれてきたケーキはたっぷりの生クリームにつやつやに輝く真っ赤な苺が乗ったショートケーキだ。
苺から食べるべきか、それとも最後にとっておくべきか。悩ましい。
「トロンちゃんだっけ……君はファッションとかに興味あるんだね。かわいい服とか好き?」
『好き!』
「それじゃあ今度君にあいそうな服を私が選んであげようか。電霊だからデータ化しないと着せ替えできないかもしれないけど……」
画面の中でぴょんぴょんウサギみたいにトロンが跳ねる。スマホのホーム画面を縦横無尽に駆け巡っている。
元気だなあ、なんて他人事のように思う。
っていうか、なんとなく思ったがこいつと俺の扱い方似てないか?気のせいか?
「それなら多分なんとかなりますよ」
『やったぁ!ありがとう八潮のおじさま!あとロセさんも!』
そんなロセの様子をアレウはコーヒーを飲みつつ見守っていた。
ロセは淫魔らしいし、アレウに飼われているのだろうか?大分自由にさせてるみたいだけど。魔族は趣味の悪いやつが多いイメージを勝手に俺は持っている。
こんな人間の住む場所で見るとは思ってなかったが。
「そういえば……八潮は夏輝とどういう関係なんだ?親じゃないんだろ?」
ふと、疑問に思ったことを口にする。
「ええ。夏輝の両親はもう亡くなっているので……遠縁の親戚といったところでしょうか。夏輝自身施設を気に入っていたのもありますし、施設の他の子どものことをとても可愛がっていて中学卒業までは施設にいたのですが、これ以上施設に迷惑をかけたくないとのことで独り暮らしを始めたんです。施設の院長もなかなか過保護というか心配症で最初は反対されたのですが……私が保護者になることで許可をもらいましてね」
目を細める八潮はまさに孫を見る好々爺そのものだった。まあ、そこまで歳を食ってるようには思えなかったけど。
「施設自体は割と近場にあるんだよね。私とアレウも行ったことあるし」
ロセがからからと笑う。そんな風に世間話を交えつつ、アレウたち二人は俺に様々な今のこの地球のことを教えてくれた。
ここがK県の夜間市という町であること、この町のおすすめの店とか、色々。
情報が大事なことは俺にだってわかる。虎視眈々とエデンに帰る手だてを探さなければならない。
二人にどうやってエデンから地球へやってきたのかを聞きたいところだが、脱走の意思ありと判断され、夏輝はともかく瑞雪の耳に入れられたらたまったものではない。
全てがご破算だ。聞きたいのをぐっと我慢したまま、俺は二人の話に耳を傾け続けていた。
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