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黒い髪
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着替えを終えて出てくると、ヴァイスが椅子に座って待っていた。
「リーチェ、頼めるかい?」
そう言うと私に一本の組紐を手渡した。肩下まで伸びた彼の長い髪を結ぶのは私の役目。
私はヴァイスの後ろに立ち、そのサラサラな髪を手ぐしで撫でた。絡まること無くスッと手が通るその髪は淡い銀色と金色の二色の髪色が混在している。光が当たるとキラキラと輝き、何度見ても神秘的で凄く綺麗な髪色だ。
一纏めにくくっちゃうのもいいけど、上の部分だけ結ぶのも似合うのよね。
私はその案を採用して彼の上部の髪を手に取り組紐で結んだ。
「これで良し!」
私は彼の前に回り込み、その容姿を確認する。
「はぁ……完璧。カッコイイ。イケメン最高」
感嘆の吐息を漏らす私を、ヴァイスは嬉しそうに見つめてくる。そんな彼の前髪からは、チラリと黒い髪が覗いている。
「ヴァイスの髪ってほんと不思議よね。銀と金の二色なのも珍しいけど。この部分だけ黒髪っていうのも変わっ………あれ?また黒い髪が増えたんじゃない?」
ヴァイスが勇者として旅をしていた時は無かったはず。だけど何最近、彼の前髪に黒い髪が生えてきた。それは日に日に、ほんの少しずつだけど増えていってる気がするけど。気のせいかな?
「どうかな。勇者としての役目を終えたからかな?」
ヴァイスは私から顔を逸らすと、その黒髪を隠すように前髪を整えた。隠さなくてもいいのに。せっかく綺麗なのに、なんだかもったいないわ。
「はぁ、何で皆そんなに髪の色を気にするのかしら?生まれた瞬間に優劣が決まるとか、ほんとくだらないわ」
古くからの言い伝えで、髪の色が薄い人は魔力が高く、逆に濃いくなる程魔力が劣る、なんて言われている。
私の腰まで伸びた長い髪も濃い藍色。
小さい頃、王都に住むおじさんの家に遊びに行った時、すれ違う人達から蔑む様な視線を浴びたのを覚えている。
特に黒髪の人に関しては、災いをもたらす存在、なんて言われて特に酷い扱いを受けていた。
今どき、魔法を自在に扱える人間なんてほとんどいないっていうのに。
あ、ヴァイスを除いてだけど。
「みんながリーチェみたいに思ってくれればいいんだけどね。そう簡単に人は変わってはくれないよ」
ヴァイスは椅子から立ち上がり、私に手を差し伸べた。
「さあ、行こうか」
私はその手をとり、ヴァイスの体にピッタリとくっついた。
この島から出る手段はヴァイスが使う転移魔法しかない。だからこうして体をしっかりと密着させないといけない。
ヴァイスも私の腰に手をまわすと、ギュッと力を入れた。彼の少し早くなった心臓の音が伝わってくる。それになんだろう…お花の様な、品の良い香水のようなこの香りは…くんくん。
「はぁ、いい匂い。役得♡」
「ふふっ」
ヴァイスの笑い声で、また思っていた事が漏れてしまっていた事に気付く。
私は恥ずかしさで赤くなっているであろう自分の顔を隠す様に、彼の胸元に顔を埋めて転移魔法の発動を待った。
「リーチェ、頼めるかい?」
そう言うと私に一本の組紐を手渡した。肩下まで伸びた彼の長い髪を結ぶのは私の役目。
私はヴァイスの後ろに立ち、そのサラサラな髪を手ぐしで撫でた。絡まること無くスッと手が通るその髪は淡い銀色と金色の二色の髪色が混在している。光が当たるとキラキラと輝き、何度見ても神秘的で凄く綺麗な髪色だ。
一纏めにくくっちゃうのもいいけど、上の部分だけ結ぶのも似合うのよね。
私はその案を採用して彼の上部の髪を手に取り組紐で結んだ。
「これで良し!」
私は彼の前に回り込み、その容姿を確認する。
「はぁ……完璧。カッコイイ。イケメン最高」
感嘆の吐息を漏らす私を、ヴァイスは嬉しそうに見つめてくる。そんな彼の前髪からは、チラリと黒い髪が覗いている。
「ヴァイスの髪ってほんと不思議よね。銀と金の二色なのも珍しいけど。この部分だけ黒髪っていうのも変わっ………あれ?また黒い髪が増えたんじゃない?」
ヴァイスが勇者として旅をしていた時は無かったはず。だけど何最近、彼の前髪に黒い髪が生えてきた。それは日に日に、ほんの少しずつだけど増えていってる気がするけど。気のせいかな?
「どうかな。勇者としての役目を終えたからかな?」
ヴァイスは私から顔を逸らすと、その黒髪を隠すように前髪を整えた。隠さなくてもいいのに。せっかく綺麗なのに、なんだかもったいないわ。
「はぁ、何で皆そんなに髪の色を気にするのかしら?生まれた瞬間に優劣が決まるとか、ほんとくだらないわ」
古くからの言い伝えで、髪の色が薄い人は魔力が高く、逆に濃いくなる程魔力が劣る、なんて言われている。
私の腰まで伸びた長い髪も濃い藍色。
小さい頃、王都に住むおじさんの家に遊びに行った時、すれ違う人達から蔑む様な視線を浴びたのを覚えている。
特に黒髪の人に関しては、災いをもたらす存在、なんて言われて特に酷い扱いを受けていた。
今どき、魔法を自在に扱える人間なんてほとんどいないっていうのに。
あ、ヴァイスを除いてだけど。
「みんながリーチェみたいに思ってくれればいいんだけどね。そう簡単に人は変わってはくれないよ」
ヴァイスは椅子から立ち上がり、私に手を差し伸べた。
「さあ、行こうか」
私はその手をとり、ヴァイスの体にピッタリとくっついた。
この島から出る手段はヴァイスが使う転移魔法しかない。だからこうして体をしっかりと密着させないといけない。
ヴァイスも私の腰に手をまわすと、ギュッと力を入れた。彼の少し早くなった心臓の音が伝わってくる。それになんだろう…お花の様な、品の良い香水のようなこの香りは…くんくん。
「はぁ、いい匂い。役得♡」
「ふふっ」
ヴァイスの笑い声で、また思っていた事が漏れてしまっていた事に気付く。
私は恥ずかしさで赤くなっているであろう自分の顔を隠す様に、彼の胸元に顔を埋めて転移魔法の発動を待った。
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