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屋上イベントの顛末

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「無茶のし過ぎだ」

空中で抱き抱えられ、呆れた様な顔をする恋人にアリアはヘラッと笑った。

危険な屋上イベントには万全の体制で挑んでいたつもりだが、イレギュラーは起こるものだ。

「彼女があんなに重いとは思ってなかったので」

手摺から落ちたのは少々失礼な言い方だが、セレナがアリアの予想より重かった為、予想より重心が手摺りの外側になっていた所為だ。

「でも、絶対レニが来てくれる、て思ってたから怖くなかったよ」

アリアは、吹き上げる風の威力を利用し、落ちるスピードを弱め、レオニアスはアリアが作った水のクッションを足掛かりにしてアリアを抱き止めたのだ。

「当然だ」
「でも、あれはやり過ぎじゃない?」

アリアがジトっとレオニアスを見たが、涼しい顔で何のことだ?と笑う。

「アリー、無事ね」

カサンドラ達が地上に降りた2人の元に走り寄ってきた。

「心配掛けて、ごめんなさい。でも……」

アリアの言いたい事がわかった筈なのに、カサンドラは気がつかないふりで、アリアの視線の先を見ようともしない。

誰も気にしないが、あれはやり過ぎだ、とアリアがジトっと皆を見るとパチン、とシオンナリスが指を鳴らし、回復魔法を掛けた。

「血は止めました」
「傷も治しましょうよ」
「嫌です」

プイッと横を向いてしまったシオンナリスとアリアを抱き締めているレオニアス以外の者達に目を向けても、誰も回復魔法を使うつもりはない様だ。

アリアは自分の魔力が切れているのが分かっているから、魔法は使えない。

「……分かりました。でも、顔の怪我は治してあげてください。流石に女性の顔に傷が残るのは……」

見なかったら分からなかったかも知れないが、バッチリ見てしまった。
アリアを助ける為に水のクッションから飛び上がったレニが、セレナに切り掛かったところを。

「おや?アリーを助けるのに邪魔でしたから剣で垣根に飛ばしましたが、何処も切ってませんよ」

レオニアスが驚いた顔でアリアを見る。

「えっ?顔に大きな傷が……」
「いくら憎い存在でも、攻撃をしてこない相手を切るなんてしません」

レオニアスの騎士道精神は、ちゃんと機能しているらしい。
見間違えか?と首を傾げるアリアと、漸くセレナに目を向けた全員が首を傾げる。

「降ろしてみた方が早そうだ」

デニスロードが垣根に引っかかっているセレナを降ろしてくれ、とジークハルトに言えば、嫌そうな顔をしながらジークハルトは魔法で地面に降ろした。

シオンナリスの回復魔法のお陰で細かい傷はあるが、血は止まっていた。
だが、皆の目が集まるのはやはりセレナの顔の傷だった。

剣で切られた様な傷だと思っていたが、傷の様子から見て細い火かき棒の様なものを押し付けられた様な火傷が、額の左側から右の耳たぶの下に向けて顔の中心に走っている。

「誰も火の魔法は使っていない筈だ」

気を失っているセレナの顔を見るデニスロード達が目を丸くして、お互いの顔を見た。
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