31 / 38
断罪って案外あっさり終わるんですね
しおりを挟む
「エメリア、おめでとう。君を縛る枷が無くなった」
婚約が破棄になっておめでとうもないだろうが、ユーシスの声も喜んでいるように聞こえる。
「こんな時だが、エメリア、君に婚約を申し込みたい。俺と結婚してくれ」
回りくどい言い方では無く、直球勝負でユーシスはエメリアの前に跪き、右手を差し出した。
「喜んで、ユーシス様」
青筋を立てているバーナードの前で、ユーシスはエメリアに求婚し、エメリアは笑顔で了承した。
「エメリア」
バーナードが腕にへばり付いている似非ヒロイン、アズサの事を忘れエメリアに掴みかかろうとしたが、当然ユーシスが黙って見ている筈がない。
エメリアの手を取り、立ち上がると鋭い目で睨み付けた。
「いい加減にしろ。お前は自分の立場を理解しているのか?」
ユーシスの厳しい叱責にバーナードがビクッと震える。
王家には3人の王子が居る。
1人は王太子として国を統治するものとなる。
もう1人は王太子の補佐としてその傍に立ち、王太子が即位すれば世継ぎの子供が生まれるまでは王太子として立つ。
では、残りの1人の役割はなんだ?
血のスペアとしての存在価値はあるが、求められるのは、大貴族として王家を支えるものになる事だろう。
バーナードはたった今、その役割を放棄した。
王家を支えるつもりのない者など、王族としての価値も無い。むしろ居るだけで争いの火種になる。
「王家にとって、お前は争いの火種になりかねない」
ユーシスの冷たい声にバーナードはへたり込んでしまった。
「バーナード、お前は王家から追放し、其処の嘘吐きと一緒に国外追放とする」
「嘘吐き?アタシはヒロインで……」
「発言を許した覚えは無い」
「ひっ」
ユーシスは声を荒げた訳でもないのに、アズサは身を隠すようにバーナードにしがみ付いた。
駆け付けた護衛官達がすぐにアズサの事を床に押さえ付け、拘束した。
「不敬罪で追放はやりすぎなのではないですか?」
「不敬罪だけでは無いからね。あの小娘は」
「だいたいの事は推測出来ますが、本気でなれると思ってたんでしょうか?」
ラティナがうんざりした顔でラウルを見た。
「ひっ、ヒロイン」
突然アズサが叫んだ。
ラティナが声の方に顔を向けると、丁度人垣が割れて、真っ青になったアズサが床に押し付けられた格好で顔だけ此方に向けていた。
すっかり忘れてたけど、私、ゲームのヒロインだったっけ。
馬鹿丸出しの、事故物件のヤバイ女の役なんてしないけど。
あっ、嫌な事気がついちゃった。
「何のことです?」
「あ、アンタ、居たのになんで……」
なんでヒロインしないのか?って言いたいんでしょうけど、冗談。
「ラウル伯爵。これはなんの罪を犯したのですか?」
「詐欺に偽証罪、それと、国家転覆の疑いもある」
ラウル伯爵がニヤッと悪い顔で笑う。
ラティナは、ラウル伯爵にエスコートされ、静かな足取りでアズサの側に寄ると、意識はしていないがかなり冷ややかな目をしながら、床に押し付けられているアズサを見下ろした。
「お前の今までの言動から推測すると、バーナード元王子を唆して王太子妃になろうとしていたようね。愚かな事」
コイツのヤバ過ぎる台詞はしっかり集めてある。
「ゲームじゃヒロインは王太子妃になってたのよ!」
「何を言ってるのか分かりませんが、バーナード元王子が王太子になる事はあり得ません」
レナード王太子殿下に顔を向ければ、頷く。
「妾妃の子が王太子になるには私達が死ななければその役目は回って来ない。衛兵、王族暗殺未遂と国家転覆の罪でそいつらを牢に放り込め」
王族暗殺未遂と国家転覆の罪。
重罪の極みの様な罪状では、国外追放は軽い処分に聞こえる。
「自分から罪を重くするとは、呆れて物が言えませんわ」
「拷問無しで自白したのだから、証言として使えるな」
ラティナとラウルが呆れた顔で呆気なく引き摺られて行く2人を見ていた。
きっと、アズサは大それた事なんか考えず、ただゲームの様なエンディングを楽しみたかっただけだろう。
でも、それは現実的ではない上、レナード王太子殿下やユーシス殿下の命を犠牲にする物だ。
笑って許せる事じゃない。
「考え無しの愚か者に成り下がった、と言う事ですね」
「ラティナはだから……」
エメリア様の何か言いたげな目に、私は頷いた。
多分、私ならゲームの様な状況にできた筈。やらないけどね。
「さて、厄介払いも出来ましたし、折角エメリア様が本当にお慕いしている方と婚約出来たのですから、今日はパーティーを……」
「楽しめると思いますか?余計な仕事が増えただけですよ」
折角明るい声を出したのに、ラウル伯爵が眉間に皺を寄せながらこっちを睨んでいた。
「後日やり直しをするとなると少々時間がかかる。パーティーは続行だ」
レナード王太子殿下が晴れやかな笑みで会場の者達を見る。
騒ついていたが徐々に落ち着きを取り戻し、会場の者達はユーシスとエメリアに婚約の祝辞を述べ、無事に終了した。
婚約が破棄になっておめでとうもないだろうが、ユーシスの声も喜んでいるように聞こえる。
「こんな時だが、エメリア、君に婚約を申し込みたい。俺と結婚してくれ」
回りくどい言い方では無く、直球勝負でユーシスはエメリアの前に跪き、右手を差し出した。
「喜んで、ユーシス様」
青筋を立てているバーナードの前で、ユーシスはエメリアに求婚し、エメリアは笑顔で了承した。
「エメリア」
バーナードが腕にへばり付いている似非ヒロイン、アズサの事を忘れエメリアに掴みかかろうとしたが、当然ユーシスが黙って見ている筈がない。
エメリアの手を取り、立ち上がると鋭い目で睨み付けた。
「いい加減にしろ。お前は自分の立場を理解しているのか?」
ユーシスの厳しい叱責にバーナードがビクッと震える。
王家には3人の王子が居る。
1人は王太子として国を統治するものとなる。
もう1人は王太子の補佐としてその傍に立ち、王太子が即位すれば世継ぎの子供が生まれるまでは王太子として立つ。
では、残りの1人の役割はなんだ?
血のスペアとしての存在価値はあるが、求められるのは、大貴族として王家を支えるものになる事だろう。
バーナードはたった今、その役割を放棄した。
王家を支えるつもりのない者など、王族としての価値も無い。むしろ居るだけで争いの火種になる。
「王家にとって、お前は争いの火種になりかねない」
ユーシスの冷たい声にバーナードはへたり込んでしまった。
「バーナード、お前は王家から追放し、其処の嘘吐きと一緒に国外追放とする」
「嘘吐き?アタシはヒロインで……」
「発言を許した覚えは無い」
「ひっ」
ユーシスは声を荒げた訳でもないのに、アズサは身を隠すようにバーナードにしがみ付いた。
駆け付けた護衛官達がすぐにアズサの事を床に押さえ付け、拘束した。
「不敬罪で追放はやりすぎなのではないですか?」
「不敬罪だけでは無いからね。あの小娘は」
「だいたいの事は推測出来ますが、本気でなれると思ってたんでしょうか?」
ラティナがうんざりした顔でラウルを見た。
「ひっ、ヒロイン」
突然アズサが叫んだ。
ラティナが声の方に顔を向けると、丁度人垣が割れて、真っ青になったアズサが床に押し付けられた格好で顔だけ此方に向けていた。
すっかり忘れてたけど、私、ゲームのヒロインだったっけ。
馬鹿丸出しの、事故物件のヤバイ女の役なんてしないけど。
あっ、嫌な事気がついちゃった。
「何のことです?」
「あ、アンタ、居たのになんで……」
なんでヒロインしないのか?って言いたいんでしょうけど、冗談。
「ラウル伯爵。これはなんの罪を犯したのですか?」
「詐欺に偽証罪、それと、国家転覆の疑いもある」
ラウル伯爵がニヤッと悪い顔で笑う。
ラティナは、ラウル伯爵にエスコートされ、静かな足取りでアズサの側に寄ると、意識はしていないがかなり冷ややかな目をしながら、床に押し付けられているアズサを見下ろした。
「お前の今までの言動から推測すると、バーナード元王子を唆して王太子妃になろうとしていたようね。愚かな事」
コイツのヤバ過ぎる台詞はしっかり集めてある。
「ゲームじゃヒロインは王太子妃になってたのよ!」
「何を言ってるのか分かりませんが、バーナード元王子が王太子になる事はあり得ません」
レナード王太子殿下に顔を向ければ、頷く。
「妾妃の子が王太子になるには私達が死ななければその役目は回って来ない。衛兵、王族暗殺未遂と国家転覆の罪でそいつらを牢に放り込め」
王族暗殺未遂と国家転覆の罪。
重罪の極みの様な罪状では、国外追放は軽い処分に聞こえる。
「自分から罪を重くするとは、呆れて物が言えませんわ」
「拷問無しで自白したのだから、証言として使えるな」
ラティナとラウルが呆れた顔で呆気なく引き摺られて行く2人を見ていた。
きっと、アズサは大それた事なんか考えず、ただゲームの様なエンディングを楽しみたかっただけだろう。
でも、それは現実的ではない上、レナード王太子殿下やユーシス殿下の命を犠牲にする物だ。
笑って許せる事じゃない。
「考え無しの愚か者に成り下がった、と言う事ですね」
「ラティナはだから……」
エメリア様の何か言いたげな目に、私は頷いた。
多分、私ならゲームの様な状況にできた筈。やらないけどね。
「さて、厄介払いも出来ましたし、折角エメリア様が本当にお慕いしている方と婚約出来たのですから、今日はパーティーを……」
「楽しめると思いますか?余計な仕事が増えただけですよ」
折角明るい声を出したのに、ラウル伯爵が眉間に皺を寄せながらこっちを睨んでいた。
「後日やり直しをするとなると少々時間がかかる。パーティーは続行だ」
レナード王太子殿下が晴れやかな笑みで会場の者達を見る。
騒ついていたが徐々に落ち着きを取り戻し、会場の者達はユーシスとエメリアに婚約の祝辞を述べ、無事に終了した。
159
お気に入りに追加
217
あなたにおすすめの小説
不要なモノを全て切り捨てた節約令嬢は、冷徹宰相に溺愛される~NTRもモラハラいりません~
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
皆様のお陰で、ホットランク一位を獲得しましたーーーーー。御礼申し上げます。
我が家はいつでも妹が中心に回っていた。ふわふわブロンドの髪に、青い瞳。まるでお人形さんのような妹シーラを溺愛する両親。
ブラウンの髪に緑の瞳で、特に平凡で地味な私。両親はいつでも妹優先であり、そして妹はなぜか私のものばかりを欲しがった。
大好きだった人形。誕生日に買ってもらったアクセサリー。そして今度は私の婚約者。
幼い頃より家との繋がりで婚約していたアレン様を妹が寝取り、私との結婚を次の秋に控えていたのにも関わらず、アレン様の子を身ごもった。
勝ち誇ったようなシーラは、いつものように婚約者を譲るように迫る。
事態が事態だけに、アレン様の両親も婚約者の差し替えにすぐ同意。
ただ妹たちは知らない。アレン様がご自身の領地運営管理を全て私に任せていたことを。
そしてその領地が私が運営し、ギリギリもっていただけで破綻寸前だったことも。
そう。彼の持つ資産も、その性格も全てにおいて不良債権でしかなかった。
今更いらないと言われても、モラハラ不良債権なんてお断りいたします♡
さぁ、自由自適な生活を領地でこっそり行うぞーと思っていたのに、なぜか冷徹と呼ばれる幼馴染の宰相に婚約を申し込まれて? あれ、私の計画はどうなるの……
※この物語はフィクションであり、ご都合主義な部分もあるかもしれません。
[完結]私はドラゴンの番らしい
シマ
恋愛
私、オリビア15歳。子供頃から魔力が強かったけど、調べたらドラゴンの番だった。
だけど、肝心のドラゴンに会えないので、ドラゴン(未来の旦那様)を探しに行こう!て思ってたのに
貴方達誰ですか?彼女を虐めた?知りませんよ。学園に通ってませんから。
私は王妃になりません! ~王子に婚約解消された公爵令嬢、街外れの魔道具店に就職する~
瑠美るみ子
恋愛
サリクスは王妃になるため幼少期から虐待紛いな教育をされ、過剰な躾に心を殺された少女だった。
だが彼女が十八歳になったとき、婚約者である第一王子から婚約解消を言い渡されてしまう。サリクスの代わりに妹のヘレナが結婚すると告げられた上、両親から「これからは自由に生きて欲しい」と勝手なことを言われる始末。
今までの人生はなんだったのかとサリクスは思わず自殺してしまうが、精霊達が精霊王に頼んだせいで生き返ってしまう。
好きに死ぬこともできないなんてと嘆くサリクスに、流石の精霊王も酷なことをしたと反省し、「弟子であるユーカリの様子を見にいってほしい」と彼女に仕事を与えた。
王国で有数の魔法使いであるユーカリの下で働いているうちに、サリクスは殺してきた己の心を取り戻していく。
一方で、サリクスが突然いなくなった公爵家では、両親が悲しみに暮れ、何としてでも見つけ出すとサリクスを探し始め……
*小説家になろう様にても掲載しています。*タイトル少し変えました
強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します
天宮有
恋愛
私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。
その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。
シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。
その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。
それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。
私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。
騙される方が悪いのよ!
狂乱の傀儡師
恋愛
カラディス王国の王子、エレニアと婚約したセリーナ。
しかし幸せな日々は長くは続かず、王子は戦に行ってしまう。彼の家族からのいびりに耐えながら、何年も彼を待ち続けた彼女に待っていたのは、まさかの婚約破棄だった。
最低な第一王子が浮気相手を選んで婚約破棄してくれたので、第二王子とは絶対に幸せになってみせます!
田太 優
恋愛
尊敬できる部分が何一つない第一王子殿下との婚約は不本意なものだった。
その第一王子がよりにもよって第二王子殿下の婚約者と浮気したことが判明する。
これはもう王家の一大事であり、理性の欠片もない第一王子が責任を取らされるのも当然だった。
そして第二王子と婚約することになり、今度こそ幸せになるために最善を尽くすことになる。
義母たちの策略で悪役令嬢にされたばかりか、家ごと乗っ取られて奴隷にされた私、神様に拾われました。
しろいるか
恋愛
子爵家の経済支援も含めて婚約した私。でも、気付けばあれこれ難癖をつけられ、悪役令嬢のレッテルを貼られてしまい、婚約破棄。あげく、実家をすべて乗っ取られてしまう。家族は処刑され、私は義母や義妹の奴隷にまで貶められた。そんなある日、伯爵家との婚約が決まったのを機に、不要となった私は神様の生け贄に捧げられてしまう。
でもそこで出会った神様は、とても優しくて──。
どん底まで落とされた少女がただ幸せになって、義母たちが自滅していく物語。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる