上 下
3 / 38

エメリア視点 出来る人は転生しても出来るの?

しおりを挟む
「初めまして」

入学式の後、同じクラスになったヒロイン?ラティナ・ロレンスに声を掛ければ

「初めまして。私、ラティナ・ロレンスです。よろしくお願いします」

と、物凄く普通に返事をしてきた。

「ラティナ様、わたくしは……」
「エメリア・バロー公爵令嬢様ですよね。挨拶が遅れまして、申し訳ありません」

サッと頭を下げる仕草もキャリアウーマンっぽい。
聞いてもいいよね。大丈夫だよね。

「つかぬ事をお聞きしてもいいかしら?」

出来るだけ穏便に、と思いながら訪ねると、ピンクの瞳で真っ直ぐこっちを見て頷いた。

「乙女ゲームってご存知?」

ピンクの綺麗な目が見開かれ、周りを見てから頷いた。

「バロー公爵令嬢様も前世の記憶がありますか?」
「あります。わたくし、このゲームの悪役令嬢ですもの」

ラティナの目がゆっくり閉じられ、暫く考え込んでいたが

「その、私、乙女ゲームはよく知らないので、概要を教えてください」

と、少し動揺しながらもきちっと対応してきた。
きっと彼女、前世では出来る人だったに違いない。



「やっぱりそうか」

授業が終わった後、カフェの端っこで乙女ゲームの内容を話せば、ラティナが眉間に手を当てながら、かっこよく呟いた。
なんでしょう、ドキドキします。
大嫌いだったキャラなのに、ときめきが止まりません。

「で、バロー公爵令嬢様はどうしたいのですか?」

先にわたくしの事を考えてくれるなんて、イケメンです。
女性なのに、なんですこのイケメンっぷり。
いけません、舞い上がっていてはラティナ様にご迷惑を掛けてしまいます。
まずは、落ち着いて。

「断罪はされたく無いし、第三王子との婚約も穏便に白紙に戻したいです」

わたくしのささやかな希望を口にするとラティナ様が頷く。

「では、まず対策としてゲームキャラ全員を教えて下さい。あと、出来ればイベントとか言うものも」

イケメン?の発言に思い出せる限りキャラやイベントの事を話すと、サラサラと何かを書き出した。

「第三王子バーナード、騎士団長令息マテウス、侯爵令息タイロン、教師ゼノビスとの接点を限り無くゼロにして行きましょう」

全員学年は違うし、ゼノビスの授業は取っていないからどうにかなる、とラティナ様が頷いている。

「ですがバーナード殿下とは婚約しているので」
「いつからですか?」
「2年前からですわ」
「良好な関係ですか?」
「いえ、わたくしが至らないせいで全く」

何せバーナード殿下は婚約する前から事あるごとに怒鳴り、暴言だけでなく暴力さえ振るってくる。

なんでゲームのエメリアはコイツに執着しているのかが全く分からないのよ。
これなら幼馴染でもあるユーシス殿下と婚約した方が良かったのに。

王命ですから此方からお断りもできませんから仕方がないですけど。

「確か第二王子のユーシス殿下は、バーナード殿下と同じ歳ですよね。接点は有りますか?」

なんでユーシス様の事を聞くのかしら?
幼馴染として接点は有りますが、ゲームには関係無いのでちょっと疑問です。

「ユーシス殿下は側妃様のお子様で、バーナード殿下は妾妃様のお子様。公爵閣下が王家との繋がりを持ちたい為の婚約ならばユーシス様とのご縁でも」

た、確かにそうですが、ユーシス様のご意志も伺わないと。

「わたくしなんかとユーシス殿下が……」
「ユーシス殿下に確認したい事がありますので、紹介をして頂けますか?」

何を知ってるのでしょうか?
ゲーム設定と関係無い事にわたくしが目をぱちくりしていると、カフェにバーナード殿下が現れました。

また怒鳴るのかしら?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

不要なモノを全て切り捨てた節約令嬢は、冷徹宰相に溺愛される~NTRもモラハラいりません~

美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
 皆様のお陰で、ホットランク一位を獲得しましたーーーーー。御礼申し上げます。  我が家はいつでも妹が中心に回っていた。ふわふわブロンドの髪に、青い瞳。まるでお人形さんのような妹シーラを溺愛する両親。  ブラウンの髪に緑の瞳で、特に平凡で地味な私。両親はいつでも妹優先であり、そして妹はなぜか私のものばかりを欲しがった。  大好きだった人形。誕生日に買ってもらったアクセサリー。そして今度は私の婚約者。  幼い頃より家との繋がりで婚約していたアレン様を妹が寝取り、私との結婚を次の秋に控えていたのにも関わらず、アレン様の子を身ごもった。  勝ち誇ったようなシーラは、いつものように婚約者を譲るように迫る。  事態が事態だけに、アレン様の両親も婚約者の差し替えにすぐ同意。  ただ妹たちは知らない。アレン様がご自身の領地運営管理を全て私に任せていたことを。  そしてその領地が私が運営し、ギリギリもっていただけで破綻寸前だったことも。  そう。彼の持つ資産も、その性格も全てにおいて不良債権でしかなかった。  今更いらないと言われても、モラハラ不良債権なんてお断りいたします♡  さぁ、自由自適な生活を領地でこっそり行うぞーと思っていたのに、なぜか冷徹と呼ばれる幼馴染の宰相に婚約を申し込まれて? あれ、私の計画はどうなるの…… ※この物語はフィクションであり、ご都合主義な部分もあるかもしれません。

私は王妃になりません! ~王子に婚約解消された公爵令嬢、街外れの魔道具店に就職する~

瑠美るみ子
恋愛
 サリクスは王妃になるため幼少期から虐待紛いな教育をされ、過剰な躾に心を殺された少女だった。  だが彼女が十八歳になったとき、婚約者である第一王子から婚約解消を言い渡されてしまう。サリクスの代わりに妹のヘレナが結婚すると告げられた上、両親から「これからは自由に生きて欲しい」と勝手なことを言われる始末。  今までの人生はなんだったのかとサリクスは思わず自殺してしまうが、精霊達が精霊王に頼んだせいで生き返ってしまう。  好きに死ぬこともできないなんてと嘆くサリクスに、流石の精霊王も酷なことをしたと反省し、「弟子であるユーカリの様子を見にいってほしい」と彼女に仕事を与えた。  王国で有数の魔法使いであるユーカリの下で働いているうちに、サリクスは殺してきた己の心を取り戻していく。  一方で、サリクスが突然いなくなった公爵家では、両親が悲しみに暮れ、何としてでも見つけ出すとサリクスを探し始め…… *小説家になろう様にても掲載しています。*タイトル少し変えました

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

騙される方が悪いのよ!

狂乱の傀儡師
恋愛
カラディス王国の王子、エレニアと婚約したセリーナ。 しかし幸せな日々は長くは続かず、王子は戦に行ってしまう。彼の家族からのいびりに耐えながら、何年も彼を待ち続けた彼女に待っていたのは、まさかの婚約破棄だった。

時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。

屋月 トム伽
恋愛
ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。(リディアとオズワルド以外はなかった事になっているのでifとしてます。) 私は、リディア・ウォード侯爵令嬢19歳だ。 婚約者のレオンハルト・グラディオ様はこの国の第2王子だ。 レオン様の誕生日パーティーで、私はエスコートなしで行くと、婚約者のレオン様はアリシア男爵令嬢と仲睦まじい姿を見せつけられた。 一人壁の花になっていると、レオン様の兄のアレク様のご友人オズワルド様と知り合う。 話が弾み、つい地がでそうになるが…。 そして、パーティーの控室で私は襲われ、倒れてしまった。 朦朧とする意識の中、最後に見えたのはオズワルド様が私の名前を叫びながら控室に飛び込んでくる姿だった…。 そして、目が覚めると、オズワルド様と半年前に時間が戻っていた。 レオン様との婚約を避ける為に、オズワルド様と婚約することになり、二人の日常が始まる。 ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。 第14回恋愛小説大賞にて奨励賞受賞

最低な第一王子が浮気相手を選んで婚約破棄してくれたので、第二王子とは絶対に幸せになってみせます!

田太 優
恋愛
尊敬できる部分が何一つない第一王子殿下との婚約は不本意なものだった。 その第一王子がよりにもよって第二王子殿下の婚約者と浮気したことが判明する。 これはもう王家の一大事であり、理性の欠片もない第一王子が責任を取らされるのも当然だった。 そして第二王子と婚約することになり、今度こそ幸せになるために最善を尽くすことになる。

義母たちの策略で悪役令嬢にされたばかりか、家ごと乗っ取られて奴隷にされた私、神様に拾われました。

しろいるか
恋愛
子爵家の経済支援も含めて婚約した私。でも、気付けばあれこれ難癖をつけられ、悪役令嬢のレッテルを貼られてしまい、婚約破棄。あげく、実家をすべて乗っ取られてしまう。家族は処刑され、私は義母や義妹の奴隷にまで貶められた。そんなある日、伯爵家との婚約が決まったのを機に、不要となった私は神様の生け贄に捧げられてしまう。 でもそこで出会った神様は、とても優しくて──。 どん底まで落とされた少女がただ幸せになって、義母たちが自滅していく物語。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

処理中です...