25 / 39
決着は御前会議で
しおりを挟む
「明日の御前会議で片をつける」
御前会議の前日、ジルコン宰相の宣言に関係者全員が頷いた。
御前会議は珍しく見に来たいものは参加を許可する、と言う陛下からのお言葉を受け、謁見の間で行う事になり、かなりの官僚が見に来ている。
議題は他国との交渉の進み具合から地方の不作など多岐に渡っている。
「そう言えば、学園で精神干渉魔法が使われた、と言う報告が上がっていました」
議長のパール公爵の発言に、陛下の態度はまるで気にもしていない事のように、そうか、とだけ言って議題にしようともしなかった。
「それだけじゃありません。魅了魔法と服従魔法のアイテムが使われました」
誰が声を上げた。
議会の場がざわつき始め、声の主を探す様に皆、キョロキョロしている。
「痺れを切らして出てきたようだ」
人垣の後ろの方に立っているルシルが楽しげにマリアーナに囁いた。
今回の騒動では、何人かはアイテムの存在を知っているが、公にはなっていない。
むしろ、精神干渉魔法の方が前面に出されており、そちらの対応を急いでいるようにも見えた。
マリアーナ達は共通認識として情報を共有しているが、大多数の貴族達は精神干渉魔法やアイテムが使われた事すら知らない。
そして、マリアーナは知らないが、御前会議の場にはダスト伯爵とタガー子爵も来ており、声の主が何をいうか息を潜めて待っていた。
「ほぅ、違法アイテムがまだこの世界に残っているとでも思っているとは、世間知らずも甚だしいですね。レシピすら抹消され、誰も作れないというのに」
ジルコン宰相が呆れたような顔で、顔を見せない声の主を嘲笑った。
確かに名前と効果は知っているが、市場には改良品が出回り、もう誰も違法アイテムを作る事はできない。
「そんな筈は」
姿を見せない卑怯者はなおも言い募るが、陛下は勿論官僚トップの大臣達を動かすのは不可能だ。
「マリ」
「はい」
ルシルに促され、マリアーナが人混みから一歩前に出た。
「ウィリアム陛下、発言を許可していただけますでしょうか」
官僚らしいかっちりしたドレス姿のマリアーナに広間に集まる貴族達はほぅ、と感嘆のため息を漏らす。
本人は無自覚だが、官僚となってから各部署の手伝いを滞りなく出来るマリアーナの優秀さは宮廷内では有名で、その美しさと合わせて称賛の声は至る所から上がっている。
「ガーネット子爵令嬢か。発言を許す」
ウィリアム陛下自らが許可を出すことに軽いざわめきが起きた。
「先ほどから違法アイテムが話題に上がっておりますが、魔術院に確認したところ、ここ数十年いえ、正確には40年は製造された様子もなく、レシピ本体も30年前に完全に消去されております」
具体的な年数を口にするマリアーナを貴族達は驚きの目で見ているが、魔術院長官も頷いているので誰も否定の声を上げられない。
御前会議の前日、ジルコン宰相の宣言に関係者全員が頷いた。
御前会議は珍しく見に来たいものは参加を許可する、と言う陛下からのお言葉を受け、謁見の間で行う事になり、かなりの官僚が見に来ている。
議題は他国との交渉の進み具合から地方の不作など多岐に渡っている。
「そう言えば、学園で精神干渉魔法が使われた、と言う報告が上がっていました」
議長のパール公爵の発言に、陛下の態度はまるで気にもしていない事のように、そうか、とだけ言って議題にしようともしなかった。
「それだけじゃありません。魅了魔法と服従魔法のアイテムが使われました」
誰が声を上げた。
議会の場がざわつき始め、声の主を探す様に皆、キョロキョロしている。
「痺れを切らして出てきたようだ」
人垣の後ろの方に立っているルシルが楽しげにマリアーナに囁いた。
今回の騒動では、何人かはアイテムの存在を知っているが、公にはなっていない。
むしろ、精神干渉魔法の方が前面に出されており、そちらの対応を急いでいるようにも見えた。
マリアーナ達は共通認識として情報を共有しているが、大多数の貴族達は精神干渉魔法やアイテムが使われた事すら知らない。
そして、マリアーナは知らないが、御前会議の場にはダスト伯爵とタガー子爵も来ており、声の主が何をいうか息を潜めて待っていた。
「ほぅ、違法アイテムがまだこの世界に残っているとでも思っているとは、世間知らずも甚だしいですね。レシピすら抹消され、誰も作れないというのに」
ジルコン宰相が呆れたような顔で、顔を見せない声の主を嘲笑った。
確かに名前と効果は知っているが、市場には改良品が出回り、もう誰も違法アイテムを作る事はできない。
「そんな筈は」
姿を見せない卑怯者はなおも言い募るが、陛下は勿論官僚トップの大臣達を動かすのは不可能だ。
「マリ」
「はい」
ルシルに促され、マリアーナが人混みから一歩前に出た。
「ウィリアム陛下、発言を許可していただけますでしょうか」
官僚らしいかっちりしたドレス姿のマリアーナに広間に集まる貴族達はほぅ、と感嘆のため息を漏らす。
本人は無自覚だが、官僚となってから各部署の手伝いを滞りなく出来るマリアーナの優秀さは宮廷内では有名で、その美しさと合わせて称賛の声は至る所から上がっている。
「ガーネット子爵令嬢か。発言を許す」
ウィリアム陛下自らが許可を出すことに軽いざわめきが起きた。
「先ほどから違法アイテムが話題に上がっておりますが、魔術院に確認したところ、ここ数十年いえ、正確には40年は製造された様子もなく、レシピ本体も30年前に完全に消去されております」
具体的な年数を口にするマリアーナを貴族達は驚きの目で見ているが、魔術院長官も頷いているので誰も否定の声を上げられない。
435
お気に入りに追加
1,311
あなたにおすすめの小説
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
完璧な姉とその親友より劣る私は、出来損ないだと蔑まれた世界に長居し過ぎたようです。運命の人との幸せは、来世に持ち越します
珠宮さくら
恋愛
エウフェシア・メルクーリは誰もが羨む世界で、もっとも人々が羨む国で公爵令嬢として生きていた。そこにいるのは完璧な令嬢と言われる姉とその親友と見知った人たちばかり。
そこでエウフェシアは、ずっと出来損ないと蔑まれながら生きていた。心優しい完璧な姉だけが、唯一の味方だと思っていたが、それも違っていたようだ。
それどころか。その世界が、そもそも現実とは違うことをエウフェシアはすっかり忘れてしまったまま、何度もやり直し続けることになった。
さらに人の歪んだ想いに巻き込まれて、疲れ切ってしまって、運命の人との幸せな人生を満喫するなんて考えられなくなってしまい、先送りにすることを選択する日が来るとは思いもしなかった。
【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?
ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。
卒業3か月前の事です。
卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。
もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。
カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。
でも大丈夫ですか?
婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。
※ゆるゆる設定です
※軽い感じで読み流して下さい
婚約破棄は別にいいですけど、優秀な姉と無能な妹なんて噂、本気で信じてるんですか?
リオール
恋愛
侯爵家の執務を汗水流してこなしていた私──バルバラ。
だがある日突然、婚約者に婚約破棄を告げられ、父に次期当主は姉だと宣言され。出て行けと言われるのだった。
世間では姉が優秀、妹は駄目だと思われてるようですが、だから何?
せいぜい束の間の贅沢を楽しめばいいです。
貴方達が遊んでる間に、私は──侯爵家、乗っ取らせていただきます!
=====
いつもの勢いで書いた小説です。
前作とは逆に妹が主人公。優秀では無いけど努力する人。
妹、頑張ります!
※全41話完結。短編としておきながら読みの甘さが露呈…
【完結】物作りを頑張っている婚約者にベタ惚れしてしまったので、応援していたらなぜか爵位が上がっていきます
よどら文鳥
恋愛
物置小屋で監禁生活をさせられていたソフィーナ。
四歳のころからいつか物置小屋を出たときに困らないように、毎日魔法の鍛錬だけは欠かさずに行っていた。
十四歳になったソフィーナは、縁談の話が入り、ついに物置小屋から出ることになる。
大量の結納金が手に入るため、監禁していた当主はゴミを捨てるようにソフィーナを追い出す。
婚約相手のレオルドは、物を作ることが大好きでいつか自分で作ったものが商品になることを願って日々研究に明け暮れている男爵家の次男。
ソフィーナはレオルドの頑張っている姿に興味がわいていき、身の回りのお世話に明け暮れる。
レオルドの開発している物に対して、ソフィーナの一言がきっかけでついに完成し、王宮の国王の手元にまで届く。
軌道にのってきたレオルドは手伝ってくれたソフィーナに対して感謝と愛情が溢れていく。
ソフィーナもレオルドにベタ惚れで、幸せな毎日を過ごせるようになる。
ついにレオルドは爵位を叙爵され、どんどん成り上がっていく。
一方、ソフィーナを家から追放した者たちは、二人の成り上がりを目の当たりにして後悔と嫉妬が増えていき、ついには今までの悪さも国の管理下に届くようになって……?
〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?
藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。
目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。
前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。
前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない!
そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。
彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。
目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。
【完結】私を虐げた継母と義妹のために、素敵なドレスにして差し上げました
紫崎 藍華
恋愛
キャロラインは継母のバーバラと義妹のドーラから虐げられ使用人のように働かされていた。
王宮で舞踏会が開催されることになってもキャロラインにはドレスもなく参加できるはずもない。
しかも人手不足から舞踏会ではメイドとして働くことになり、ドーラはそれを嘲笑った。
そして舞踏会は始まった。
キャロラインは仕返しのチャンスを逃さない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる