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やはり断罪は無理の様です

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卒業パーティーの会場には既に多くの方々が来ており、ドレスに着替えたマリアーナはユリアスの手を借り、馬車から降りた所で既に会場に来ていたルシルから声を掛けられた。

「マリ、これを中に入ったら発動してくれ」

ルシルから渡された魔法陣を受け取り、マリアーナが首を傾げた。

「これで何が分かるんですか?」
「見ててごらん。きっと女狐の化けの皮が剥がれるから」
「ルシル、えげつないぞ」
「良いんだよ。マリに迷惑を掛けた奴に遠慮なんてする必要ないだろ」
「マリアーナが絡むと容赦ないな」

楽しげに笑うルシルを、ユリアスが呆れた顔でたしなめた。

「多分、これは魔術返しの魔法陣ですから、術者は悶絶しますが」

渡された魔法陣を見ながらマリアーナがルシルに確認する様に聞いた。

「気にするな。掛けたほうが悪い」
「では、この簪で発動した方がいいですか?」

マリアーナが簪、と言っているのは、見た目は複雑な彫刻がされた硝子ペンの様な虹色に光る棒で、房飾りなどは付いていない。

「そこまで念入りにしなくても、あの女狐にはマリの力を跳ね返す防御力は無いね」

髪に刺した水晶の簪に触れながら、マリアーナも呆れた、と言いたげにルシルを見て、頼まれた通り会場に入って魔法陣を発動させると、会場の中央部分から魔獣のような悲鳴が上がった。

「まともに食らったみたいだな」
「その様ですね。弾かれる感覚がまるでありませんでした」

ユリアスとマリアーナは呆れながら悲鳴の上がった方に目を向けた。

魔術返しを喰らって悶絶してるのは、案の定、ゲーム内のヒロインであるフローラ・デブリ男爵令嬢。
ピンクのドレスを着た、18禁のゲームヒロインらしく、スタイルがとても良いですね。

容姿もあざと可愛い感じで、トーマス様を筆頭に攻略対象の3人は下僕感満載だった。つい先日までは、ね。

この一年、ヒロインを避けまくっていたロイド先生は別にして、攻略対象はトーマス様に騎士団員の息子のハモンド・タガー子爵令息と商人の息子の二クラス。
彼らは気持ち悪いほどデブリ男爵令嬢に集っていた。

ですが、トーマス様以外の彼らは1週間前からヒロインのデブリ男爵令嬢とは距離を取ろうとしていた。

何があったのでしょう?
あれほどデブリ男爵令嬢にべたべた貼り付いていたのに。

トーマス・ダスト伯爵令息は……。
放置しておきます。元々良い関係じゃ無かったから、ね。

それに、今も悶絶しているデブリ男爵令嬢の脇でオロオロしてるだけで何も出来てませんから。

ああなっては私を断罪、出来ませんね。
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