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食わず嫌いは一生の損?

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「アーロン殿下。今日こそは釣り書きをご覧になってください」
「またその話か。話に聞けば、軍事卿の娘は熊の様な女だ。そんな女が私の妃?馬鹿も休み休み言え」

リンデラ王国の第一王子であるアーロンは、執事から渡された釣り書きを見もしないで床に投げ捨てた。

「ですが、王家も騎士団を纏める軍事卿との縁は持っておきたいと陛下も仰っております」

執事は国王の言葉を何度も口にした。

「それならイーサンにすれば良いだろう」
「冗談。熊みたいな女、ごめんだね」

双子の王子達は床の釣り書きを部屋の隅に蹴り飛ばし、苛々しながら執事を睨んだ。

2人とも金髪に水色の瞳を持つ、美形の双子だが王族特有の色は持っていない。だが、持っていなくても側妃から生まれた2人はれっきとしたこの国の王子。

立太子はしていないが、王位継承権では上位にいる。
国の為の政略結婚も必要な立場だと言うのに、自分達の立場をまるっきり理解していなかった。

執事は何も言わずに、無表情で蹴り飛ばされていた釣り書きを拾い、王子達の部屋を出た。

「熊の様な女なんて冗談じゃない」

婚約者候補の1人が軍事卿の娘、だと知っていても彼らは彼女の名前も顔も知らないし、知ろうともしなかった。

ただ、悪意ある噂だけで彼女を毛嫌いしていた。

「くしゅん」
「まぁ、アレキサンドラ。風邪?」

アドリアーナ様が心配そうに顔を覗き込んできた。

「誰かが噂したのかも」
「噂?やれやれ、俺の想い人に惚れるなんて、命が惜しくない様だ」

銀髪で褐色の肌を持つ、異国の匂いたっぷりの美丈夫は、隣国ユフラティス帝国の皇太子イズミル様。

ゲームキャラじゃ無いのが不思議だけど、現実だからね、此処は。

「冗談はそのくらいにして。次の授業は経済学です。イズミル様、宿題は終わってますの?」

アドリアーナ様がじろっとイズミル様を睨めば、肩をすくめ降参のポーズをした。
学年トップのアドリアーナ様に口で勝てるものなんて居ない。

イズミル様も優秀な方だけど、体を動かす方が好きみたいで、経済学と歴史学は苦手の様だ。

「経済学は私は取っていないので、図書館で自習してきますね」

本当は士官学校に遊びに行きたいけど、1人で行くといつも2人に怒られる。

「では、お昼はいつもの場所でちゃんと待っていてね」
「1人で士官学校に遊びに行くなよ」

オカンが2人居るみたいだ。
私が歴史学の教科書を持って立つと、2人は手を振って経済学の教室に移動した。

図書館は前世の時から好きな場所で、柔らかな光が入るお気に入りの場所で教科書を開いた。
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